法人で社会保険未加入だと起こり得るリスクとは?

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起業して半年。何とか事業も軌道に乗ってきた。そんな矢先、社会保険の加入の義務を知ったあなたは、どうしますか?

社会保険料の負担はそれなりに大きいものです。

ここで知らんふりをして社会保険料の負担を免れましょうか?

手続きもややこしそうだし。ほかの社長に聞いてみても、加入した方が良いという社長もいるし、放っておけばいいという社長もいる。

うちの会社はどうするのが良いのだろう・・。そんな悩める社長さんに、社会保険について、未加入のデメリットについて解説します。

1.社会保険の適用条件とは

厚生年金保険と健康保険は、事業所単位で適用されます。適用条件に強制適用と、任意適用の2種類があります。

①強制適用事業所

株式会社などの法人事業所が対象です。社員が居ない1人社長の会社も法人であれば対象になります。また個人の事業所であっても、従業員が常時5人以上いれば、農林漁業、サービス業などの場合を除いて厚生年金・健康保険の適用事業所になります。

②任意適用事業所

上記の①の適用事業所に該当しない事業所でも、従業員の半数以上が厚生年金・健康保険の適用事業所となることに同意し、事業主が申請、厚生労働大臣の許可を受けると、適用事業所になることが出来ます。

社会保険には労働保険も有ります。労働保険は労災保険と雇用保険に分かれます。

③労災保険

会社は従業員を1人でも雇うと、強制加入が義務付けられています。この場合の従業員とは正社員だけでなく、パート、アルバイトも含まれます。

個人経営で従業員が5人未満の農林水産業のうち一定の事業は例外的に任意適用となります。

労災保険は事業主や役員は対象外ですが、特別加入制度を利用して任意加入することもできます。

④雇用保険

雇用保険も従業員が1人でもいると強制加入の対象になりますが、従業員の労働条件によっては雇用保険上の被保険者とならないために、雇用保険に加入しないことが有ります。

雇用保険の被保険者とならないケースは、65歳以上で新たに雇用される人、週の労働時間が20時間未満の人です。社長は雇用保険の対象となりませんが、役員は勤務実態などで雇用保険の被保険者となることも有ります。

1−1.法人の場合は絶対加入

社会保険の適用条件を見ていくと、法人の場合は厚生年金・健康保険は一人社長であっても強制加入。

労働保険は従業員を雇った場合に強制加入となります。

強制加入ですので、法人を設立した時に加入の手続きを取るのは、経営者としての責任といえます。

特に従業員を雇った場合、その責任はより大きくなります。

1−2.適用除外の業種は有る?

厚生年金・健康保険に関しては、5人以上の事業所であっても、サービス業の一部(クリーニング業、飲食店、ビル清掃業など)や、農業、漁業などは適用除外となっています。

雇用保険に関しては、一人社長の場合や、家族だけの経営形態では加入する必要は有りません。

また、委託や請負で業務を遂行してもらう働き方の人員は、雇用関係にあるとは言えませんので、そういう人員のみで構成する企業も加入の対象とはなりません。

2.未加入の法人に起こり得るリスク

さてここからが本題。未加入事業者に起こり得るリスクについて紹介します。

2−1.未加入だった場合どうなる?

強制加入の社会保険に加入しなかった場合は、罰則として社会保険料の追徴と罰金が有ります。

①追徴金-厚生年金・健康保険

厚生年金・健康保険の未加入が発覚した場合には、該当者全員の社会保険料を2年間遡って追徴されます。

標準報酬月額が200,000円(給与額195,000円から210,000円)の30歳の人の場合を見てみます。(2016年9月の保険料で概算)

厚生年金保険料が36,364円、健康保険料(東京)が19,920円(介護該当なし)ですので、月額の社会保険料が56,284円になります。

これを2年(24カ月)になりますので、1,350,816円がこの人の分の追徴金額となります。

保険料は会社と本人との折半になりますので、675,408円が会社の経費となります。もしこの社員が退職していたら、個人負担分も会社が負担することになります。

この追徴金は会社だけでなく、個人の負担も有りますので、2年分というと従業員にとっても、やはり大変な負担金額になります。

②追徴金-労働保険

労働保険にも同様に追徴金が有ります。「故意」または「重大な過失」について、遡る期間は最大2年間ですが、この間に労災などが発生すると、労災で発生した費用の全部または一部の費用を徴収されます。

③罰則

社会保険未加入の罰則は、健康保険法で「6カ月以下の懲役、または50万円以下の罰金」となっています。このほかに年金を受け取る年齢に至った人から、加入期間の相違による不利益に対する訴訟が起きるなども考えられますので、社会保険の未加入は結果的にワリに合わないことになります。

2−2.知らなかったじゃ済まされない?

平成28年から導入されたマイナンバー制度は、税や社会保障の公平・公正を目指しています。

厚生労働省は法人番号(企業版マイナンバー)を活用し、2017年度末までにすべての未加入事業所を特定する作業に入っているようです。

起業して社会保険未加入の状態が続いていると、まず書面によって加入勧奨が行われます。この書面が届いた後は、「知らなかった」では済みません。

この時点で自主加入すれば、遡っての追徴は有りませんので、少なくともこの時点で加入することをお勧めします。

起業して1年以上加入が無い場合は「故意」または「重大な過失」とみなされて、先に述べたような追徴金が課される可能性が高くなります。

2−3.今後のビジネスに影響は?

社会保険料の会社負担額は、社員に支払う給与の15%程度です。社会保険に加入すると、社員の給与は上がらなくても、人件費が一気に15%アップしてしまいます。

今未加入の企業の最大の理由は、この社会保険料の負担の重さが大きいのではないでしょうか。

社会保険に加入する際には、社会保険に加入しなくていい短時間労働者の活用や、役員の報酬の分散化など社会保険料を見据えた工夫と資金繰りが必要になってきます。

社会保険への加入は社員にとっても手取りが減るので、お互いになあなあになっている部分も否めません。

しかし、社会保険の未加入は、自社の社員を将来無年金や低年金にする可能性が非常に高く、経営者としての人道的責任も小さく有りません。

3.社会保険の加入手順

ではここからは社会保険加入方法をみていきましょう。

3−1.厚生年金・健康保険の加入手続き

加入の要件を満たした日から5日以内に「新規適用届」を事業主が日本年金機構へ提出します。

提出方法には電子申請、郵送、窓口持参が有ります。その後の手続きも出向く手間が省けるので、電子申請が便利です。

「新規適用届」に添付する書類は、以下のようになっています。

1)法人事業所の場合

・法人(商業)登記簿謄本の原本

2)事業主が国、地方公共団体または法人である場合

・法人番号指定通知書のコピー

3)強制適用となる個人事業所の場合

・事業主の世帯全員の住民票の原本

3−2.労働保険の加入方法

労働保険の場合は届け出る機関が複数あります。順番に説明します。

1)保険関係成立届・・・適用事業所となった日から10日以内に、所轄の労働基準監督署へ

2)概算保険料申告書・・・保険関係が成立してから50日以内に、所轄の労働基準監督署か都道府県の労働局または銀行へ(納付も伴います)

3)雇用保険適用事業所設置届・・・設置の日から10日以内に、所轄の公共職業安定所(ハローワーク)へ

4)雇用保険被保険者資格取得届・・・資格取得の事実があった日から翌月の10日までに、ハローワークへ

(農林漁業、建設業等は1)と2)のみになります。)

4.まとめ

例えばあなたが失業中で、どこかに就職しようと職を探しているとしましょう。

労働保険に未加入の会社はハローワークで求人ができません。労働保険に未加入の会社はあなたの選択肢に入ってくることさえありません。

求人誌や求人サイトで求人を探すとき、「社保完備」の文字がない企業に積極的に応募しますか?家族を抱えているならなおさらですよね。

このように、社会保険に加入しているということは、あなたの仕事が安定しています、社会的責任を果たしていますと、アピールできる強みなのです。知らなかったのでしたら、早急に加入の手続きをしましょう。

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