飛んだ従業員の給料は払わないといけない?退職後の対応まとめ

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「社員と急に連絡が取れなくなり、いきなり退職された」といったケースでお困りの経営者もいらっしゃることでしょう。いきなり退職されると、その後の続きは何をどのように進めればいいのか、また給与は支払わなければならないのか、あまりに急なことで慌ててしまいます。

ここでは、そういった場合でもスムーズに手続きを進められるように、社会保険や雇用保険などの手続きの仕方や、飛んだ従業員にも給料を支払わなければならないのかなどについてご説明していきます。

1.いきなり退職した従業員の給料は払わないといけない?

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経営者としては、いきなり退職した従業員に給料は支払いたくないというのが本音だと思いますが、賃金というものは「労働の対価」であるため、それまで働いていた分については支払わなければなりません

仮に、突然退職したことによって会社が何らかの被害を受けたのであれば、その被害について損害賠償請求をすることもできますが、会社が本人に無断で給料と相殺することは認められません。

このように、飛んだ従業員にも給料は支払わなければなりませんが、会社としてはいきなり退職した従業員にすんなりと給料を振り込むのは納得しづらいところです。そこで、いきなり出勤しなくなった従業員に対しては例えば「給料を現金で手渡す」という対応をとってみるのはいかでしょうか。

通常の給与は銀行口座への振込によって支払っている場合でも、就業規則に「突然出社しなくなった従業員には現金で支払う」旨を明示しておけばこのような対応が可能になります。

いずれにしても、いきなり退職した従業員から会社の備品などを回収したり荷物を整理してもらう必要がありますので、一度出社してもらう方がいいでしょう。

2. 辞めた従業員の対応まとめ

従業員が退職した際、会社としてとるべき手続きについてご説明していきます。いざ退職したとなると、何をどのようにすればいいのか慌ててしまうこともありますので、ここでしっかりと理解しておきましょう。

まず、退職した従業員から回収するものと会社から渡すものがあります。

【従業員から回収するもの】

  • 健康保険被保険者証(扶養親族の分も含めて)
  • 社員証
  • 制服・パソコンなどの貸与物

【従業員に渡すもの】

  • 雇用保険資格喪失証
  • 離職票(希望した場合)
  • 源泉徴収票

従業員から回収するもの・会社から渡すものにもれが無いようにきちんと確認しましょう。そして、従業員が退職したときに大事な手続きに「各保険の手続き」がありますので、次で詳しく見ていきましょう。

2−1.保険等の手続き

従業員が退職した際は、それまで加入していた雇用保険・社会保険・労災保険の手続きや住民税の手続きが必要になります。いずれも期限が決められていますので、速やかに手続きをとるようにしましょう。

2−1−1.社会保険

健康保険と厚生年金保険の資格喪失手続きをします。

提出書類:「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」
添付書類:健康保険被保険者証(本人、被扶養者分)
提出期限:退職日から5日以内
提出先 :管轄の年金事務所

健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届に記載する「資格喪失日」は退職日の翌日になりますので注意しましょう。また、健康保険被保険者証を紛失などで回収できない場合は「健康保険被保険者証回収不能・紛失届」を併せて提出します。

さらに、いきなり退職した従業員にはあまり必要でないかもしれませんが、退職後も継続して社会保険を利用できる「任意継続」を希望する場合は、従業員自身が手続きをすることになりますので、念のため説明しておくといいでしょう。

2−1−2.雇用保険

雇用保険の資格喪失手続きを行います。

提出書類:
「雇用保険被保険者資格喪失届」
「雇用保険被保険者離職証明書(離職票)」

添付書類:(離職票を希望する場合)

  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 出勤簿など
  • 退職届

提出期限:退職日の翌々日から起算して10日以内

提出先 :管轄のハローワーク

定年退職や59歳以上の従業員が退職する場合、離職票は本人の希望に関わらず発行する必要があります。また、離職票に従業員の記名押印をする箇所がありますが、空欄の場合は無効になりますので注意が必要です。

本人に連絡が取れず記名押印をしてもらえない場合は、事業主印で代印することも可能なので忘れずに押印しましょう。

2−1−3.労災保険

労災保険は、従業員の退職後すぐに手続きをするものはありません。しかし、退職した従業員の分まで労働保険料を納めることがないように、年度更新を必ず行うようにしましょう。

提出書類:労働保険年度更新申告書
提出期日:6月1日~7月10日

2−1−4.住民税の手続き

給料から住民税を天引きしていた場合に行う手続きです。

提出書類:「給与支払報告に係る給与所得異動届」
提出期限:退職日を含む付きの翌月10日
提出先 :退職する従業員が居住する市区町村

住民税の手続きは、退職する日によって必要となる手続きが異なりますので注意が必要です。

退職日 手続き内容
1月1日~4月30日 最終給与もしくは退職金から前年分の住民税残額を一括徴収
5月1日~5月31日 通常通りの徴収
6月1日~12月31日 次の3つから選択してもらう

①    普通徴収

②    一括徴収

③    転職先でも特別徴収を希望する(この場合は、「給与支払報告に係る給与所得異動届」を交付する)

2−2. 人員の確保等

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飛んだ従業員のために、会社が人材不足に陥ってしまうことが考えられます。人材不足の状態が早期に解決できればいいですが、長引くと他の従業員への負担が倍増し、ひいては会社の業績の悪化につながる可能性もあります。

人材不足は従業員・会社双方にとってマイナスが大きいため、人材不足を早期解消することが求められます。

【従業員への対策】

現在会社に勤務している従業員のモチベーションを上げるために、給与体系の見直しを行ったり、労働環境をより良いものに整備したりします。会社側と従業員側の認識にずれが生じないよう、日頃から従業員とのコミュニケーションを密にするといいでしょう。

また、経営者自らが数カ月に一度従業員と話し合う場を設けたり、アンケートを実施するのも効果的で、経営者側からは見えない会社の問題点や改善すべき点が見えてきます。

【新規採用への対策】

人材の採用については、いくら早期に人材を確保する必要があるとはいえ、経営者の考えや社風に合わない人を採用するのは控えたほうが無難です。一度採用してしまえば、会社からは簡単に退職を切り出すことができませんので、慎重に行う必要があります。

早く人材を補充したい気持ちも充分に理解できますが、人材選びには妥協することなく、時間がかかっても自社にとって優れた人材を待つことも必要ではないでしょうか。また、求職者を待つだけでなく、会社から積極的に人材確保に動くとより有能な人材を得る可能性が高くなります。

3. いきなり辞めた従業員から給与の請求があったら?

いきなり辞めた従業員から、「ある日突然給与の未払い請求の内容証明が届く」というケースもあります。これは法的効力のあるものなので、内容に不備等が無い場合は速やかに支払いの手続きをする必要があります。

もしこれを放置してしまうと、退職者が労働基準監督署に申告することも考えられ、最悪の場合裁判になってしまう可能性があります。裁判になると、「損害遅延金」や「付加金」といった本来なら支払わなくてもいいものまで請求されることになるので、速やかに対応することが大切です。

しかし、未払い給与に関しては「2年間」という請求期間が設けられていますので、退職者からの未払い給与請求が請求できるときから2年以上経過しているかいないかを必ず確認しましょう。

4.まとめ

飛んだ従業員であっても、労働した事実がある場合は給与を支払わなければなりません。その場合は、就業規則に規定しておけば、口座への振込ではなく直接手渡しという支払方法をとることができます。

健康保険被保険者証を回収したり会社から貸与していたものを返却してもらう必要もあるため、本人に一度出社してもらうことが望ましいです。

突然退職されると、どのような手続きをどのように進めればいいのか分からなくなってしまいますが、社会保険・雇用保険や住民税など必要な手続きを期限内に行う必要がありますので、あらかじめ対応を確認しておくことが大切です。

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