5分で納得!経営者も従業員も知っておきたい確定拠出年金について

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確定拠出年金画像

確定拠出年金は2017年1月の制度改正を受け、加入資格が大幅に拡大されたこともあり、今大変注目を浴びている制度です。しかし、年金制度はとても理解が難しいものです。

この制度には多くのメリットがあることは分かっていても、導入には正確に理解した上で臨みたいものです。ここでは、確定拠出年金の制度概要や、使用者からみたメリットデメリット、従業員からみたメリットデメリット、また制度導入に際しての注意点などについてご説明します。

1. 確定拠出年金とは(企業型・個人型)

給料画像

確定拠出年金は、一言でいうと「老後資産を確保するための制度」です。私的年金の1つとされ、現役時代に拠出した掛け金を運用し、それによって生じた損益を反映したリターンを老後資金として受け取るものです。

確定拠出年金には、個人が加入する個人型と企業が取り入れている企業型の2つがあります。概要はどちらも同じで老後の資金を確保するためのものですが、仕組みやきまりなど細かい部分に違いがあります。

1−1.一体どんな制度?

では、個人型と企業型について、それぞれどのような制度になのかご説明します。

【個人型確定拠出年金】

加入者個人が自分で掛金の金額を決めることができ、掛金も自分で負担します。会社とは関係のない別枠で運用される制度で、掛金が全額所得控除の対象となるため、年末調整や確定申告で税金が還付されることになります。

 【企業型確定拠出年金】

企業が定められたルールに基づいて、掛金を拠出します。個人型との大きな違いは、企業が掛け金を負担するということと、将来給付される退職金制度の枠内にあるということです。

個人型と企業型の違いを、分かりやすくまとめてみました。

個人型確定拠出年金 企業型確定拠出年金
加入資格 自分の意志で加入する 会社が制度を導入している場合に加入できる

(ただし、加入対象者が限られていたり、加入するかどうか選べる場合もあり)

掛け金負担者 自分 会社

(会社分+従業員が上乗せ拠出できる場合もあり)

納付方法 自分の口座から 会社が納付
金融機関 自分で選べる 会社が選ぶ
運用商品 金融機関で提示されたものから選ぶ 会社が提示したものから選ぶ
口座管理料負担者 自分 多くは会社

(従業員が負担するケースもあり)

このような違いがありますが、大きな共通点もあります。それは、掛け金の運用は、個人型も企業型も「自分で行う」ということです。

1−2. 退職金制度にも

最近は、確定拠出年金を退職金制度として取り入れる企業も増えています。これまでの退職金は、会社が責任を持って資金を運用し従業員の退職時に支払うというものでした。

資金の運用から管理までを会社が行っていたため、この方法は会社にとってとても大きな負担がかかり、経営が悪化した場合などその責任は重大すぎるものでした。

そこで、確定拠出年金を退職金制度として取り入れると、運用は個人が責任をもって行い退職時に備えることになるため、会社にとってもリスク回避が可能となるので、取り入れる価値のある制度であるといえます。

退職時に老後資金としてもらうものであれば、「これまでの退職金=確定拠出年金」と思われがちですが、必ずしもイコールではありません。その違いについて、ご説明します。

【これまでの退職金と確定拠出年金の違い】

  •  積立額の管理は、退職金は会社が行っているが、確定拠出年金は個人が行う。
  •  確定拠出年金は別口座で個人ごとに保管されているため、会社の倒産などによる退職金の不払いや減額ということがなくなる。
  •  退職金は会社を退職する際に受け取るが、確定拠出年金は原則として60歳~70歳と受け取る年齢が決められている。
  •  退職金の受け取りは通常一時金受取だが、確定拠出年金は「一時金受取・年金受取・一時金と年金の併用」の3つから選択することができる。

 1−3. 掛け金や加入者

確定拠出年金の加入者条件や掛け金はどのように定められているのか、確認していきましょう。

 【加入者条件】

企業型と個人型に分けてご説明します。

<企業型確定拠出年金>

企業型確定拠出年金制度を導入している会社に勤めている従業員が対象になります。

 <個人型確定拠出年金>

これまで、個人型確定拠出年金に加入することができたのは、自営業者と勤務先に企業年金制度が無い会社員のみとされてきました。 しかし2017年1月より、新たに下記に該当する人も加入することができるようになりました。

  • 勤務先に厚生年金基金または確定給付企業年金がある会社員
  • 企業型確定拠出年金がある会社員
  • 公務員
  • 専業主婦(主夫)

この法改正によって、日本に住むほぼ全ての現役世代が対象となることになりました。ただし、60歳以上の人や現在国民年金を滞納したり免除を受けている人は利用することができません。

また、勤務先に企業型確定拠出年金制度がある場合、個人型も利用できるかどうかは、会社の規約によります。

 【掛け金】

個人型確定拠出年金は、毎月拠出できる金額に上限が設けられています。上限金額は、個人の属性によって異なりますので、表にまとめてみました。

国民年金保険による種別 具体例 掛金拠出額の上限
現行加入者 第1号被保険者 自営業等 月額68,000円

年額816,000円

 

第2号保険者

企業型確定拠出年金のない会社の会社員 月額23,000円

年額276,000円

 

法改正後の新たな加入者

企業型確定拠出年金に加入している会社員 月額20,000円

年額240,000円

公務員 月額12,000円

年額144,000円

第3号被保険者 専業主婦(夫) 月額23,000円

年額276,000円

 2. 確定拠出年金のメリットデメリット

確定拠出年金は金融商品と密接な関係があるため、メリットだけでなくデメリットもあります。制度導入にあたっては、メリットデメリットについてしっかりと確認しておくことが大事です。

ここでは、メリットデメリットを、経営者からみた場合と従業員からみた場合に分けてご説明します。

 2−1.経営者からみたメリットデメリット

まずは、経営者からみたメリットについて見ていきましょう。

 ①社会保険料の削減効果

確定拠出年金の掛け金は、社員の給与から控除されることになるため、給与額が減額します。その分、社会保険料も軽減されることになるため、事業主負担分の社会保険料も減額されることになります。

②新たな福利厚生の提供

社員に新しい企業年金という福利厚生を提供することができます。社員やその家族が感じている年金についての不安を解消することによって、社員のモチベーションを上げ、定着率を上げることにもつながります。

③全ての社員を加入させる必要がない

確定拠出年金制度では、全ての従業員を加入させることは求められていません。さらに、制度への加入時期や掛け金についても自由に決めることができます。

 ④企業会計上、年金債務が影響されなくなる

確定拠出年金は、企業会計上、退職給付債務に計上されないので、確定拠出年金に全面的に移行した際は、退職給付債務自体をなくすことも可能となります。

 ⑤企業アピールにつながる

確定拠出年金制度を導入している会社は、増えてきているとはいえまだ限られているのが現状です。この制度を導入していることは、従業員を採用する際に企業アピールとして効果的です。

 ⑥経営者や役員も加入できる

確定拠出年金は、従業員だけでなく、経営者や役員も加入することができます。

続いて、デメリットを見ていきましょう。

①選択制導入の場合は、給与体系の変更が必要になる

確定拠出年金を導入する際に、加入・不加入を選べる「選択制」を導入した場合、加入・不加入の意思確認を行ったり、給与体系に掛け金などの項目を追加するなどのシステムの改定が必要になります。

②導入や運営にコストがかかる

制度の導入に関しては導入コンサル費用・口座開設費用などが、運営に関しては事業主手数料・加入者手数料などのコストがかかります。

③従業員に対して投資・情報教育をする必要がある

制度を導入した際には、会社が従業員に対して投資教育と情報教育を提供することが義務付けられているため、それらを実施するための費用がかかります。

2−2.従業員からみたメリットデメリット

では、次に従業員からみた確定拠出年金制度導入についてのメリットとデメリットを見ていきましょう。

①税金が優遇される

この制度を利用した場合の最大のメリットは、優遇税制が受けられるということです。

  • 掛け金への給与課税:非課税
    掛け金を会社が拠出しても本人が拠出しても、どちらの場合も非課税となります。
  • 利息への課税:非課税
    通常、運用によって得られた利息や収益分配金、売却益には20%の税金が課されますが、確定拠出年金では非課税となります。
  • 年金受取を選択した場合の受取時課税:優遇
    受取方法を年金払いにすると、公的年金に準じた税制が適用されるので、課税額が優遇されます。

②社会保険料の削減効果

社会保険料は給与の金額に対する料率で決まります。社員の給与から確定拠出年金の掛け金を控除すると、給与額が下がるため、その分社会保険料も減額されることになります。場合によっては、手取額が増えるケースもあります。

③自分の意志で加入・不加入を決められる

若い世代ではまだ年金のことを遠い将来のことのように感じている人もいるでしょうし、投資は分からないので怖いと思っている人もいるでしょう。

確定拠出年金は加入・不加入を自分で選択することができるので、現時点での個人ごとの判断を優先して、ライフプランに合わせて考え直し、必要性を感じた時に加入することができる制度です。

④年金資産状況がいつでも確認できる

資産管理会社の個人口座は、自由に閲覧可能となっています。ネットバンクのような手軽さで利用でき、パソコンやスマートフォンにも対応しています。現在の年金資産状況がいつでも自由に確認できるのは、将来の安心にもつながります。

⑤ポータビリティで持ち運びができる

仮に会社を中途退職したとしても、転職先の会社の確定拠出年金にそのまま移動することができるので、継続して積み立てていくことができます。もし、転職先の会社が確定拠出年金を導入していない場合は、個人型に移行することもできます。

では次に、デメリットを見ていきましょう。

①老齢厚生年金の受取額が減額になる

メリットの2つ目でご説明した「社会保険料の削減効果がある」のデメリットとして、支払社会保険料が少なくなれば、それだけ老齢厚生年金の受給額が減額されることになります。

②運用次第では元本割れをしてしまうこともある

実際の資産運用は自分で行うことになります。ハイリスクの商品を多く選択すると、場合によっては元本割れをしてしまうこともあります。投資にあたっては、知識を蓄え情報を入手し、バランスよく投資することが大切です。

③60歳まで現金化できない

確定拠出年金は、年金の資金積み立てを目的としているため、原則として60歳になるまで資産を現金化することができません。

3. 確定拠出年金制度導入の注意点

確定拠出年金制度を導入するにあたって、どのようなメリットやデメリットがあるのかが分かりました。それらを踏まえて、実際に制度を導入する際に気を付けるべき注意点についてご説明します。

【一度制度を導入すると、他の制度へは戻せない】

確定拠出年金は、新設だけではなく他の制度(退職一時金、確定給付企業年金、厚生年金基金)から移行して設立することも可能です。しかし、ひとたび確定拠出年金に移行されると、他の制度への移行はできなくなります。

【社員に納得してもらえる知識が必要】

確定拠出年金について理解不足の従業員は少なくないと思われます。それゆえ、制度のメリットやデメリットを従業員に正確に説明できるだけの知識が必要とされます。必要に応じて専門家と連携を取り、従業員にも納得してもらうことが大切です。

【やむを得ない解雇時に退職金が出せない】

企業型の確定拠出年金は退職金としての意味合いが強いので、制度を導入した際は通常退職金制度は無くなります。特に中小企業では、業績の悪化によって従業員をやむを得ず解雇せざるを得ない場合も考えられ、その際の退職金を用意できないことになります。

4.まとめ

確定拠出年金制度を導入すると、社会保険料を削減できたり退職金資金の運用管理のリスクから解放されるなど、企業にとって大変メリットがあるということが分かりました。

しかし、注意すべきデメリットもあることから、導入にあたっては慎重に検討する必要があります。確定拠出年金制度は内容が複雑なので、使用者も従業員もなかなか理解しづらいというのが実情です。

それゆえ、双方がメリットやデメリットを十分に理解し納得した上で導入する必要があります。

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