辞めた社員から400万円の未払金請求の内容証明が!経営者がすべき対処方法

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労使間トラブルは年々増加の一途をたどっていますが、トラブルの中でも多いものの1つに「残業代の未払金請求」があります。

「以前辞めた社員からいきなり400万円の未払金請求の内容証明届いた!」このようなケースも他人事ではありません。

ここでは、辞めた社員から未払金を請求された場合に、経営者としてどのような対応をすればいいのか、また今後未払金を請求されることがないように、どのような対策をとればいいのかについて、詳しく説明します。

1.辞めた社員から未払金請求をされた場合、支払う必要はある?

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すでに会社を辞めた社員から未払金を請求された場合、経営者としては正直なところ、辞めた社員にお金を払うよりも、今がんばってくれている社員に払ったり、運転資金に回したいと考えるでしょう。

しかし、未払金請求の内容証明が届いた際は、できるだけ誠意ある対応をとることが大切です。もしそのまま放置してしまうと、労働基準監督署に駆け込まれたり、いきなり労働審判や裁判になってしまう可能性も否定できません。

まずは、辞めた社員から請求された金額が正当なものであるか精査し、間違いがなければ支払う必要があります。また、支払う必要がない場合でもその後またこじれることがないように、両者で十分話し合い、説明することが重要です。

【未払金請求解決までの流れ】

未払金請求を解決するまでの流れは、次のとおりです。

①相手への連絡

未払金請求について対応することを伝え、できれば回答日時についても知らせておきます。

②請求内容を確認

未払残業代を請求される場合は、意図的に残業代を支払わなかった場合と、労使間で解釈の仕方に違いがあった場合があります。その点に注意しながら、提示された残業時間や残業代を確認し、再計算します。

③回答書を作成

再計算した金額が請求金額と違っている場合、根拠となる法律や会社の規定、計算方法、明細書などを添付して回答書を作成します。

④話し合い・合意書の取り交わし

本人との和解に向けて話し合いをします。電話やメールなどではなく、対面での話し合いがベストです。回答書を渡した上で説明し、本人からの理解が得られたら、支払日時や方法を決めて合意書を取り交わします。

2.未払金の付加金は請求される?

未払金の「付加金」とは、割増賃金などの労働基準法で定められた一定の金銭の支払いを行わなかった企業に科せられるペナルティで、重ねて金銭の支払いをしなければならないものをいいます。

付加金の支払いが認められてしまうと、請求された残業代の2倍の金額を支払うことになってしまいますが、実際には付加金を支払う必要があるケースは例外的といえます。

というのも、付加金は裁判所に支払いを命じられてはじめて支払い義務が生じるものなので、訴訟になって判決が下されない限り支払う必要がないからです。

しかし、労働者側が労働審判において付加金も請求してくる場合があります。これは、付加金請求には、違反したときから2年以内に請求しなければならないという時効があり、期限を過ぎると付加金請求ができなくなってしまうためです。

労働審判の審判に不服な場合、「異議申立」をして訴訟へ移行することになりますが、付加金請求の期限を過ぎてしまわないように、労働審判の際に付加金の請求をしておくというわけです。

このように、付加金の請求期限の問題上、労働審判でも付加金を請求してくる場合がありますが、裁判に発展しなければ付加金は支払う必要はありません。よって、もし未払残業代を支払う必要があるならば、裁判に発展してしまう前に適正な残業代を支払って、和解することが望ましいでしょう。

3.未払い金請求をされないために経営者がすべき対処方法

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辞めた従業員から突然未払金請求をされないために、経営者として対処しておくべき3つの方法について説明します。

3−1.従業員の労働時間について適正に把握する

訴訟になった際に、従業員側が残業時間を証明することができなかったとしても、会社側が有利になるということはありません。なぜならば、会社側は労働者の労働時間について正しく把握しておかなければならないと定められているからです。

もし、労働者の労働時間をきちんと把握していなかった場合、裁判所は「必要最低限の労務管理ができていない会社の言い分よりも、労働者の言い分の方が正しいのではないか?」というイメージを持ってしまう可能性があります。

そのため、労働者の提示した労働時間や金額が認められてしまうことになります。そのようなケースに陥らないためにも、労働時間についての管理を徹底し、労働者の勤務状況について適正に把握することが重要です。

3−2.「管理職」の取り扱いに注意

一般的に、管理職には残業代の支払いをする必要はないとされています。しかし「管理職」として取り扱っていれば絶対に残業代の支払いをしなくていいわけではありません。

管理職としての権限を持たず、ふさわしい処遇を受けていないような、いわゆる「名ばかり管理職」には残業代を支払う必要があります。

残業代を支払う必要がない管理職とは、①経営者と一体的な立場であること②労働時間について管理されていないこと③管理者としてふさわしい収入や処遇を受けていることなどの要件を満たしていることが必須です。

残業代を支払わなくて済むように名前だけ「管理職」にしても、残業代は支払わなければなりません。

3−3.賃金体系を見直す

【年俸制を導入している場合】

「年俸制度を導入していれば残業代を支払わなくてもいい」と考えている方もいますが、それは誤解で残業代は支払う必要があります。

【「変形労働時間制」や「フレックスタイム制」を導入する】

労働基準法では、変形労働時間制やフレックスタイム制を採用することが認められています。これらの制度を導入することで、残業代を削減する効果が期待できます。

【「事業場外労働のみなし制度」を導入する】

外回り営業や出張が多い場合、「事業場外労働のみなし制度」を採用することによって、残業代を削減する効果があります。

【「専門業務型裁量労働制」を導入する】

研究開発や、情報処理システムの分析・設計、デザイナー、プロデューサーなどの業務を行う場合、「専門業務型裁量労働制」を導入し残業代を削減する方法があります。

【「企画業務型裁量労働制」を導入する】

経営企画担当部署に属し社内組織の在り方を調査分析・編集する業務や、財務・経理担当部署に属し残務状態について調査分析し計画を策定する業務についている場合には、「企画業務型裁量労働制」を導入して残業代を削減する方法があります。

これらの労働制度を導入すると残業代を削減することができますが、労働者の健康管理に配慮したり勤怠状況をより把握する必要があるなど、注意が必要となります。

4.未払金を請求された!払わなくても良い場合は!?

労働者から未払金を請求された場合でも、支払う必要がない場合があります。

【労働者が提示した労働時間に誤りがある場合】

労働者が提示してきた労働時間が、正しいかどうかきちんと精査する必要があります。労働者によっては、実際の労働時間以上の残業代を過大に請求してくるケースがあります。

また、タイムカードで勤務時間が明らかにされていても、その間業務に関係のないことをしていたり休憩をとっていたりした場合などは、残業代は認められないとされています。

【そもそも残業を禁止していた場合】

会社として労働者に対し残業を禁止していて、なおかつ終業後に残ってしまった業務の処理についても指示していたというようなケースにおいては、残業は会社の指示で行ったものではないため、残業代は発生しないとされています。

しかし、残業を禁止しながらも事実上残業を黙認していたという場合は、残業代は発生すると判断されてしまいます。

【管理監督者である場合】

労働基準法では、「監督もしくは管理の地位にある者」は割増賃金の対象とならないことが定められています。よって、管理監督者には残業代を支払う必要はないということになります。(ただし、深夜割増賃金は支払う必要があります。)

しかし、「管理監督者」であるという点については、先にも述べましたが実態として「名ばかり管理職」である場合には、残業代は支払う必要がありますので注意が必要です。

【「固定残業手当」を支給している場合】

固定残業手当(「定額残業代」「みなし残業手当」などの名称もあり)として固定残業手当を毎月支給している場合は、すでに残業代を支払い済みとなります。

ただし、固定残業手当制度を採用する場合は、就業規則や労働契約書で明確に定め、かつ制度の運用方法や手当の金額などについて、慎重に検討することが重要です。

【残業代請求の時効が成立している場合】

残業代の請求権は、給与支払日の翌日を起算日として「2年」で消滅します。よって、請求された残業代のうち、消滅時効が成立している部分については支払う必要がありません。

5.まとめ

未払金請求は、場合によっては1千万円近くの金額になることもあります。また、複数人から同時に請求を受けてしまうと、会社の経営にも非常に大きな影響を与えてしまいます。

辞めた社員からの未払金請求の内容証明を受け取った際は、会社として誠意ある態度をとることが大切です。提示された労働時間や金額を適性に精査し、支払う必要があるものについてはきちんと支払い、納得のいくまで話し合いをして合意書を作成しておきます。

また、今後このようなケースに陥ってしまわないように、労働者の勤務状況の管理を徹底したり、賃金体系を見直すなどの対策を講じることも必要です。

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