昔の言葉に、「泣く子と地頭には勝てない」という言葉が有ります。この場合の泣く子は文字通り泣いている幼い子供のことですが、地頭とは、今でいう税務署のことです。昔から、税金を取り立てる側は強かったということになります。優秀な会計事務所で監査を通った決算でも、税務署の「見解の相違」の一言で修正を余儀なくさせられることも有ります。
税務調査を恐れる経営者が多いですが、予めどんなものかを知っておけば、怖がる必要は有りません。逃れられないのなら、勉強して対策を講じておきましょう。
目次
1. 税務調査の時期や対策
1−1.どんな会社が対象
税務調査に入られやすいのはどんな会社でしょうか。
- 現金売上が多い会社
- 売上や利益が急成長している会社
- 同業他社と比較して、申告所得が極端に少ない会社
- 不自然な決算書になっている会社
以上の様に、税務申告に不備が有りそうだと見込まれる会社が、税務調査の対象になりやすい会社です。(税務署員も税務調査に出かけて、手ぶらでは帰って来れないのです。)商店規模の会社でしたら、社屋や、社長の住宅を新築した時なども、税務調査が入りやすくなります。
1−2.税務調査の時期はいつ
税務署は普通のお役所と違って、6月末に人事異動が行われます。確定申告などの税務申告のピークが終り、税務行政が一段落するのがこの時期なので税務署の事務年度は、7月1日から翌年の6月末になっています。
1年のうちで比較的仕事に余裕のあるこの時期が、税務調査に当たる時期になります。7月から11月位を目途に考えて良いかと思います。会社の規模にもよりますが、3年から5年の周期で税務調査は入ります。
顧問税理士に決算業務などを依頼している会社では、まずその顧問税理士に税務調査の日時の連絡が行きます。映画にあるような抜き打ち検査は、余程悪質な脱税を行っていない限り、有りません。
1−3.もし税務調査が入ったら対策しておくこと
税務調査と言っても、恐れるには足りません。金銭の出入りを把握し、帳簿を毎日記帳して、売上や買掛の集計をきちんと行うことは、会社の経営上でも必要なことですので、どこの会社でも行っていることでしょう。当たり前のことを当たり前に処理していれば、何も問題は無いのです。
証拠となる請求書や領収書などの書類が整っていれば、税務署員の質問にも明確に答えることができます。税金に関する解釈の相違点は、(ここだけの話ですが)多少残しておいて、税務署の指導を受けて修正するくらいの気持ちで臨みましょう。その方が税務調査が早く済むくらいの気持ちでいると、気持ちも楽になります。
2.税務調査に関する知っておきたい注意点
2−1.帳簿を整えておきましょう。
当たり前のことですが、帳簿の整理が遅れているような場合は、税務調査に間に合うように帳簿を整えておきましょう。
過去5年分の決算書、税務申告書、総勘定元帳、売上帳、請求書、領収書を税務署はチェックします。書類がきちんと整っているだけで、税務署員のその企業を見る目も違ってきます。現金商売でなければ、現在進行中の営業年度を見ることはほとんど有りません。
総勘定元帳で、大きな支出が有ったりすると、質問が飛んできます。明確に説明できるように、自分でも見直しておきましょう。
2−2.現金も税務調査の対象です。
特に飲食店や小売店などの現金商売の場合は、その日その日の売上をどの様に計上しているかが問われてきます。
小口現金を入れている金庫の中をチェックされることも有ります。預り金や仮払金などもしっかり伝票を発行して、金銭出納帳と手持ちの現金に違いが無いようにしておきます。入金漏れの現金が有ったばかりに、税務調査が長引いた例はよく耳にします。
2−3.所得税もチェックの対象です。
従業員を雇っている企業では、当然給与の源泉徴収が正しく行われているかもチェックされます。
更には税金をごまかすために、人件費を不当に計上していないかも、税務署はチェックします。タイムカードや従業員名簿、年末調整関係の書類といった、人事関係の書類の整備も大切になってきます。
2−4.事前調査・反面調査が有ります。
取引先との関係で、通常とは違う大きな取引が行われたようなとき、税務署は事前に取引先に照会を行っている時や、事後にこちらの説明と同じ説明を取引先がするかの調査をすることが有ります。取引先と説明内容に違いが無いようにしておかなければいけません。しかし、普通の取引をしていれば、何も心配することでは有りません。
2−5.顧問税理士にも個性が有ります。
顧問税理士を雇っている場合、雇い主である企業の方を向いている税理士さんと、税務署の顔色を窺って企業の味方になってくれない税理士さんがいます。税務署出身の税理士さんは、いわゆる「税務調査に強い」場合が多いようです。(手の内を知っていますから。)
「税務調査に強い」だけが税理士さんの資質ではありませんが、顧問税理士選びも企業の発展に欠かせないことの一つになっているのは間違いないようです。
3.まとめ
税務調査に入られると、気分が悪い社長も多いとは思いますが、日々の事務処理を適正に行って帳簿類を整備していれば、何も心配することは有りません。
「10万円払うから、税務調査はまけてくれないか」と、税務署員に交渉しようとした社長もいるとかいないとか・・・。日々の業務が滞ることを心配しての言葉ですが、税務署員には通用しませんでした。しかし、実はその社長はこっそり税金のことを猛勉強していたので、大きく突っ込まれるような項目は出てこなかったのですが。
備えあれば患いなしですので、忙しい社長さんも税金のことを知って、税務調査に対抗しましょう。