社労士以外に助成金の申請代行をした場合の3つのリスクとは

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助成金はまとまったお金が手に入り、しかも返済不要なので経営者にとってはぜひ有効に活用したいものです。最近はコンサルティング会社なども助成金受給ビジネスに進出してきており、実際に「助成金を受給してみませんか?」という話を持ちかけられたという経営者の方もいらっしゃるでしょう。

この助成金の申請手続きは一般的に社労士に申請代行を依頼する方が多いですが、社労士以外に依頼した場合にはどのようなリスクがあるのでしょうか?

助成金受給をより確実なものにするために、あらかじめリスクについて確認しておくのは大切なことです。

1. 助成金代行は社労士の独占業務?

助成金や補助金の申請代行ができる専門家には、社労士の他にも行政書士、中小企業診断士などの士業があります。しかし、全ての士業が助成金の申請代行業務を受任できるわけではなく、厚生労働省の助成金は社労士しか受任できない場合が多いです。

では、社労士にはどのような独占業務があるのか、また厚生労働省以外の助成金や補助金はどの士業に依頼することができるのかについて確認していきましょう。

1−1. 社労士の独占業務とは

社労士の業務については、「社会保険労務士法2条」で「社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする」と明確に定められています。ここでいう「各号」というのが社会保険労務士の「1号・2号業務」といわれるもので、社会保険労務士の独占業務となります。

では、1号・2号業務とはどのようなものかというと、大まかに分けると①書類等の作成業務②提出手続きの代行業務③事務代理業務の3つがあります。

  • 書類等の作成業務
    年金事務所、労働基準監督署などへ提出する書類や、事業所で必要な書類などを事業主からの依頼を受け作成する。
  • 提出手続き代行業務
    上記で作成した書類を提出する手続きを代行する。
  • 事務代理業務
    法令に基づく申請や届け出、報告などの手続きや行政官庁などの調査・処分に対して事業主の代理となり主張・陳述する。

これらが社会保険労務士の独占業務であり、社会保険労務士以外の者がこれらの業務を報酬を得て業として行うことはできません。

1−2.厚生労働省以外の補助金、助成金は

厚生労働省の助成金は、雇用保険法や社会保険労務士法に基づいた書類作成をする必要があるため、社会労務士の独占業務となります。分かりやすくいうと「キャリアアップ助成金」「トライアル雇用奨励金」「65歳超雇用促進助成金」など「人に関わる助成金」などが該当します。

これらの人に関わる助成金を申請代行を依頼する場合は、社会保険労務士に依頼する必要があります。しかしその他の助成金や、補助金については、行政書士や中小企業診断士などでも申請代行が可能です。

例えば、経済産業省の補助金である「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」など事業に関わる補助金などは、他の士業の方に申請代行を依頼できます。

2. 社労士以外に助成金申請代行をするリスクとは

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助成金の申請代行は社労士に依頼するケースが多いですが、社労士以外に依頼した場合にはどのようなリスクが考えられるのでしょうか?

考えられる3つのリスクについてご説明していきます。

2−1.自分で助成金を申請する際のリスク

助成金は社労士に申請代行を依頼しなくても、自分で申請することができます。しかし、次の3つのリスクが考えられますので注意が必要です。

<多大な時間と労力が必要>

助成金の申請について知識や経験がある場合でも、実際に申請する際には多くの時間と労力が必要になります。知識や経験が全くない方の場合、さらに多くの時間を要する可能性があります。経営者はただでさえ日常業務で忙しく手一杯の状態です。

その上で助成金申請のために時間や労力を費やすのは非常に難しいでしょう。仕事の生産性を低下させないためにも、助成金の申請は社労士に代行依頼する方が効率的です。

<自社に合った助成金を見つけるのが難しい>

助成金は毎年たくさんの種類のものがあり、その中から自社に最適な助成金を見つけるのは難しい作業です。また、助成金は申請できる期間が限られているものもあり、自社に合った助成金を見つけても申請時期に間に合わなければ助成金を受給し損ねてしまいます。

そこで、助成金の申請代行について豊富な知識と経験を持ち合わせている社労士に依頼すれば、助成金についてのアドバイスや最新の情報などについて教えてもらえます。自社にとって最適な助成金を逃さないためにも、助成金のプロである社労士に依頼すると安心です。

<申請書の記入が複雑>

助成金の申請書類は記入方法が複雑なため、書き慣れていないと時間がかかってしまいます。さらに、「記入事項に不備があったために助成金が受給できなかった」などということになれば、苦労して作成した申請書がムダになってしまいます。

他にも、助成金の申請時には就業規則などの提出を求められることが多く、もし労働基準法に違反している項目などがあった場合は、申請が通らない可能性が高くなります。そのようなことも全て確認してもらえるように、労働基準法などに詳しい社労士に相談の上申請を行うことが望ましいといえます。

2−2.悪質なコンサルティング会社にだまされるリスク

最近は、助成金金申請を勧誘するコンサルティング会社が増加しており、適正に業務を行っている会社もありますが、中には不正受給を勧めてくる会社もあります。不正受給が後を絶たないことを受け、労働局の審査は徐々に厳しくなってきています。

悪質なコンサルティング会社は、助成金申請を単なる「お金儲け」と捉えています。本来助成金は、もらったお金で従業員の待遇改善やスキルアップのための研修などを行うためのものです。

自社の経営や将来について耳を傾けて親身に相談にのるのではなく、「まとまったお金が手に入る」ということばかりを話してくる会社は要注意といえます。他にも、着手金を受け取ったらその後はほったらかしにしてしまうようなコンサルティング会社もあります。

助成金申請に着手してもらえない、あるいは途中でストップしてしまったようなケースもありますので、信頼できる会社かどうか見極めることが大切です。

2−3.不正受給で罰則を受けてしまうリスク

悪質なコンサルティング会社に助成金申請を依頼した際、着手金を受け取ったら放置されてしまうのも大きな問題ですが、それ以上に悪質なケースも見られます。

例えば、事実通りに申請してしまうと助成金を受給できそうにないため、事実と異なったことを記入し申請したり、つじつま合わせのために架空の書類を作成したりすることをそそのかすコンサルティング会社も存在します。

言うまでもなく、これは立派な詐欺罪に該当します。このように外部の人のアドバイスに従って不正受給を行った場合、罰せられるのはコンサルティング会社ではなく「経営者本人」です。悪気が無くアドバイス通りにしただけといっても残念ながらその言い分は通用しません。

助成金の不正受給が明るみに出た場合は、助成金が不支給になり、すでに受給している場合は返還する義務があり、さらに雇用関係助成金の3年間の支給停止などの措置が取られます。

そして場合によっては刑事告訴の対象になる可能性もあります。助成金の申請は「経営者の責任」においてなされるものですので、罰則も経営者に科されることになります。

3.助成金に強い社会保険労務士を選ぶコツ

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助成金受給をより確かなものにするためには、社労士選びにも慎重になる必要があります。実は「助成金申請代行は割に合わない・・・」と考えている社労士は少なくないと言われています。

助成金の申請代行は、助成金の概要を事業主に説明することがから始まり、計画書の作成・提出・説明→就業規則の修正・届出→法定帳簿等の作成の指導・代行→助成金請求書の作成・提出・説明などの業務があります。

よって、助成金申請代行にあまり乗り気でない社労士もいるので、社労士選びの際には社労士の助成金に対する熱量にも注意しましょう。

では、助成金の申請代行を安心して任せられる社労士を選ぶコツを挙げてみます。

  • 助成金に積極的に取り組んでいる実績がある
  • 助成金のメリットだけでなくリスクについても理解がありきちんと説明してくれる
  • 助成金が受給できるまで、何度も相談にのってくれる
  • 労働時間の集計など、自社で対応が難しいことは納得できるまで説明してくれるか代行してくれる

そして最も大事なことですが「この先生にお願いしたい!」と思えるような信頼できる社労士であるかどうかです。自社の将来に目を向け共に考えてくれる社労士を選ぶことが助成金受給をより確実なものにするためのポイントとなります。

4.まとめ

助成金の申請代行を社労士以外に依頼する場合は、自分で申請する方法と、コンサルティング会社に依頼する方法があります。自分で申請する場合は、多大な時間と量力が必要となるため業務に支障をきたす恐れがあり、提出書類に不備があった場合は受給できなくなってしまうリスクがあります。

また、コンサルティング会社は適正に業務を行っている会社もある一方で悪質な会社も存在し、不正受給をして罰せられるのは経営者本人です。より確実に助成金を受給するためには、経験と知識の豊富な社労士に依頼することが一番安心できる方法だといえます。

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