起業家にとって頭を悩ませるものの1つに「資金調達」があります。起業する際の資金調達方法としてまず思いつくのは「融資」ですが、実は「補助金」や「助成金」も起業家にとってとても魅力的なものです。
融資とは異なり基本的に返済不要なので、上手に活用して起業時の資金に役立てたいものです。
ここでは、知らないと損しかねない起業時に使える補助金や助成金の概要や申請方法について、またそれらを活用する際の注意点についても併せて解説していきます。
目次
1. 知らなきゃ損する!起業時に使える助成金一覧と申請方法
個人事業主の方の中には、補助金や助成金は受給できないと思っている方が少なくありませんが、個人事業主でも利用できるものがあります。開業時は特に資金が必要になる時ですので補助金や助成金を上手に活用していきましょう。
まずは、補助金と助成金とは何が違うのか気になる方もいらっしゃると思いますので、簡単にまとめてみました。
【補助金】
中小企業庁、経済産業省、総務省などが管轄の事業の経費に対して補助金が支給されており、研究開発や専門的な分野を対象にしているケースが多くみられます。事業計画書の作成に時間や労力を要しますが、助成金よりも多額の資金を補助してもらうことができます。
【助成金】
一般的に厚生労働省管轄の事業者に対して支給されます。補助金に比べて必要書類が多くなく、条件を満たせば受給できるので利用しやすい制度です。
個人事業主が開業時に利用できる補助金や助成金は主に次の4つが挙げられます。
- 創業補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- ものづくり補助金
- キャリアアップ助成金
ではそれぞれの補助金・助成金について詳しく解説していきます。
1−1. 創業補助金
日本経済を活性化させることを目的として、新たに創業する方に対して創業等にかかる経費の一部を助成してくれるものです。補助金の申請をする場合は、産業競争力強化法における認定市区町村または認定連携創業支援事業者による特定創業支援事業を受ける必要があります。
【対象となる方】
創業補助金の対象となる方は、次の2つの条件を満たす必要があります。
- 公募開始日以降に創業する者で、補助事業期間完了日までに創業しその代表となる者
- 事業実施完了日までに新たに従業員を1名以上雇い入れる者
【補助率】
補助対象と認められる経費の1/2以内
【補助金額の範囲】
- 外部資金調達がない場合:50万円以上100万円以内
- 外部資金調達がある場合:50万円以上200万円以内
【申請方法】
電子申請または郵送申請
1−2. 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、例えばホームページ制作やパンフレットの作成、折り込みチラシなど販売促進宣伝活動や店舗改装時にも利用できる補助金です。申請にあたり、地域の商工会議所へ「事業支援計画書」や「事業承継診断票(代表者が60歳以上の場合)」の作成・交付を依頼する必要があります。
交付までには数日かかるため早めに依頼するようにしましょう。
【対象となる方】
日本国内に所在する小規模事業者であり
- 製造業その他の業種の事業を営む商工業者で常時使用する従業員が20人以下
- 卸売業・小売業・サービス業(宿泊業・娯楽業は除く)を営む者は従業員が5人以下
ただし、風俗業、医師・歯科医師、非営利法人は対象外となります。
【補助率】
補助対象と認められる経費の2/3以内
【補助金額】
50万円
【申し込み方法】
日本商工会議所(補助金事務局)へ郵送
1−3. ものづくり補助金
中小企業や小規模事業者が取り組む生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善のための設備投資等の一部を補助してもらえます。
【一般型】
中小企業が行う革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資等が補助の対象となります。
- 補助率:1/2(条件によって2/3)
- 補助上限額:1,000万円
【小規模型】
中小企業が行う革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善が補助の対象となるため、設備投資を伴わなくても対象となります。
- 補助率:小規模事業者2/3、小規模事業者以外1/2
- 補助上限額:500万円
【企業間データ活用型】
いくつかの中小企業が連携してデータや情報を共有することにより、新たな付加価値を生み出したり生産性の向上が図れる事業が補助の対象となります。連携する企業1社につき200万円を追加で補助してもらえますが、上限10社までと制限があります。
例えば4社で連携する場合、各社1,000万円にプラスして全体で200万円×4社=800万円が補助されることになります。
- 補助率2/3
- 補助額:1,000万円/社
【申請方法】
- 補助事業実施場所が所在する都道府県地域事務所への郵送
- 支援ポータルサイト「ミラサポ」による電子申請
1−4. キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規社員の正社員への変換、人材育成、賃金規定の改定など、非正規労働者の地位・処遇の向上を行った場合に支給される助成金です。キャリアアップ助成金の申請する際は、取り組みの対象者や目標などを盛り込んだ「キャリアアップ計画」を作成する必要があります。
【対象となる方】
キャリアアップ助成金の対象となるのは次の条件を満たしている事業主です。
- 雇用保険に加入している事業主である
- 「キャリアアップ管理者」を置いている
- 実施日までにキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けている
- 期間内にキャリアアップの取り組みを行った
- 法定帳簿(労働者名簿、賃金台帳など)を整備・保管している
【8つのコース】
キャリアアップ助成金には、8つのコースが設けられています。
それぞれのコース名と助成金額は次のとおりです。
- 正社員化コース:1人あたり最大72万円
- 人材育成コース:最大50万円
- 賃金規定等改定コース:最大36万円
- 健康診断制度コース:1事業所につき最大48万円
- 賃金規定等共通化コース:1事業所につき最大72万円
- 諸手当制度共通化コース:1事業所につき最大48万円
- 選択的適用拡大導入時処遇改善コース:1人あたり最大12万円(最大30人)
- 短時間労働者労働時間延長コース:1人あたり最大24万円(最大15人)
なお、詳しい助成金額は公式サイトでご確認ください。
厚生労働省<キャリアアップ助成金>
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
【申請方法】
管轄の都道府県労働局またはハローワークに提出
2.個人事業主も受給できる?助成金受給における注意点まとめ
個人事業主にとって、補助金や助成金は起業する場合に大変有効なものですが、実際に活用する際には注意すべき点があります。
【募集要項をしっかりと読む】
募集要項には記入例や必要事項が記載されているため、しっかり読めば申請書類の記入漏れなどのミスを防ぐことができます。また、補助金では「加点」される項目が記載されていますので、内容をきちんと把握しその項目をクリアすれば、採択率を上げることができます。
【補助金・助成金は後払い】
補助金や助成金は起業時の資金調達に大変有効ですが、実際に受給できるのは取り組みが終わってからになります。よって、一度は自社で支出しなければならないため、資金繰りを計画的に行う必要があります。
【不正受給は厳禁】
補助金や助成金を何とかして受給したいと思うあまり、申請書類に事実とは異なることを記入してしまう方もいるかもしれません。しかし、虚偽申請が発覚すると助成金を受給することができず、すでに受給している場合は全額返還することになります。
さらに、省庁などのホームページで会社名が公表されたり、刑事告訴されることもあります。
【専門家に相談する】
近年、助成金や補助金を申請する会社が増えており競争率が高くなっています。申請書類を要綱で定められたとおりに記入するのはあたりまえで、会社のアピールも必要になってきています。
よって、審査に通るためにも商工会議所はもちろんのこと、銀行や税理士など国が認めた経営革新等支援機関に相談すると安心です。
3.まとめ
個人事業主は補助金や助成金を受給できないと思われがちですが、実際は利用できるものが多くあります。特に、起業時にまとまった資金が必要なときに効果的な補助金や助成金がありますので、有効活用してビジネスチャンスに役立てたいものです。
補助金や助成金は返済不要なので大変ありがたいものですが、申請の際には注意すべきことがありますので、要綱をしっかり読み込んだり専門家に相談したりしてスムーズに手続きを進めていきましょう。