助成金の不正受給が発覚!事業主が被る4つのペナルティとは

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事業をしていく上で、様々な助成金を検討されたかと思います。その中でも有名なのが雇用改善を目的とされた厚生労働省の「キャリアアップ助成金」という助成金です。

毎年改正されていますので、内容の理解がその都度必須ですが従業員の雇用条件について計画をしているのであれば是非とも検討してほしいところです。

ところがこの助成金制度を不正に受給しているケースがあるのです。不正受給をしてしまった場合のペナルティについても説明していきます。

1. 助成金の種類について

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厚生労働省が管轄するキャリアアップ助成金は、平成29年4月1日から従来の3コースから8コースに増えました。

厚生労働省HP:キャリアアップ助成金より
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

非正規雇用者の雇用等、キャリアアップに関する職場改善を実践した事業主にはコースによっては従来の500万円から1,000万円までの助成金が、1年度に限り支給されます。今年度、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者等に対してキャリアアップ等を促進した事業主に対して、キャリアアップ助成金のコースは以下の通りとなっています。

  1. 正社員化コース
    正規雇用労働者等への転換等を助成
  2. 人材育成コース
    職業訓練を助成
  3. 賃金規定等改定コース
    賃金規定等を改定した場合に助成
  4. 健康診断制度コース
    法令に則った健康診断以外の一定の健康診断に対し助成
  5. 賃金規定等共通化コース
    正規雇用労働者等と同等な待遇を「賃金規定」等を設けた場合に助成
  6. 諸手当制度共通化コース
    正規雇用労働者等と同等な諸手当を設けた場合に助成
  7. 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
    社会保険適用者を拡大して対象者の基本給を増額した場合に助成
  8. 短時間労働者労働時間延長コース
    短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長して、社会保険適用者を拡大した場合に助成

上記のように細かくコースを分けて、事業所のニーズにそった計画をしやすくしています。

有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者等が事業所において正社員と同等の待遇に近づけるような職場環境をする事業所に助成金というサポートをしてくれているのです。

なお、助成金申請においては、就業規則のコピーを添付する場合や、労使協定、賃金規定等の改定した証拠等を添付するという場合もあります。

常時10人以上の事業所の場合には、就業規則やそれに付随する規定類を完備していることかと思いますが、常時10人未満の事業所の場合には就業規則作成が努力義務となっておりますので自分の事業所は申請が不可なのだろうと思ってしまうかもしれません。

キャリアアップ助成金制度の中小企業事業主の定義は小売業やサービス業では50人以下、サービス業では100人以下となっていますので就業規則を完備していない事業所でも計画書を提出することができます。もし職場改善を計画しようとしているのであれば、一度真面目に調べてみてはいかがでしょうか。

2. 利用しやすいキャリアアップ助成金とは

上記8コースある助成金コースの中で、よく申請されているコースが「人材育成コース」となっています。事業の活動と区別して行われるOFF-JT訓練、指導者のもとで事業活動の中で行われるOJT訓練とそれぞれの訓練を実施した場合に、1時間当たり760円あるいは960円が支給されます。

このような有期契約労働者等に対する職業訓練を実施すると1年間に最大1,000万円が支給されます。

次に「正社員化コース」も申請が多いようです。有期契約労働者等を半年以上継続して勤務した場合に正社員に転換するような職場改善を実施した場合には1人につき最大72万円が支給されます。年間15人までとなっていますので最大1,080万円が受給できるのです。

賃金規定等改定コースも少なからず申請はあります。就業規則に付随してある「賃金規定」を有期契約労働者等にも働きやすい環境にする為に改定した場合に支給されます。賃金規定等で2%以上の基本給増額を決定した場合に人数に応じて助成金が支給されます。

条件によって助成額が違いますが対象労働者が以下の人数ですと

  • 1人~3人 95,000円
  • 4人~6人 190,000円
  • 7人~10人 285,000円
  • 11人~100人 1人あたり28,500円

のように、1事業年度に限り支給されます。

例外として、利用しにくいコースというのもあります。社会保険制度を適用する「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」と「短時間労働者労働時間延長コース」です。

事業主としても全員に厚生年金や健康保険等の社会保険を完備した福利厚生のしっかりした事業所にしたいと考えているかと思いますが、社会保険料は労働者の保険料の半分を事業主が負担していますのでかなりの経費増額となってしまいます。そのような理由からなかなか先に一歩進めない事業主さんもいらっしゃるようです。

3. 助成金の不正受給のペナルティ

キャリアアップ助成金を利用する事業所もかなりいるために、不正受給事業所というのも少なからず発生します。年間最大1,000万円という助成金に目がくらんで、不正をしてまでも受給してしまう事業主も過去にはあるようです。このような不正受給が発覚した場合には、以下のようなペナルティが発生します。

  1. 不正に受給した助成金の返還を国から求められます。
  2. 事業所名が、厚生労働省のホームページに公表されることになります。
  3. 最低でも3年間は雇用に関する助成金の申請ができません。
  4. 最悪のパターンとして、国から悪質な事業所として詐欺罪で告訴される場合もあります。

このようなペナルティで最も痛手なのが、世間に事業所名を公表されることです。取引先や地元の顧客、金融機関にも知られることになって、経営基盤がぜい弱化して非常に大きな影響を残してしまいます。

3年間の助成金申請ができないというのも辛いですが、インターネットに事業所名が公表されますので一生涯、不正受給した会社であるという汚名が残ってしまいます。

4.不正受給はなぜバレるのか

真摯に助成金申請を提出して計画通りにキャリアアップ助成金を受給される事業所もあれば、運転資金の為にと不正な計画書や実施書類を添付して詐欺行為をする事業所もあるようです。もちろん大多数が真面目な事業所ですが、頭の片隅にもしかしたら上手くごまかせるかもしれないと思わないでください。

この不正受給は必ずバレてしまうからです。

「人材育成コース」で、職業訓練を有期契約労働者等に対して実施した場合に受講者は「訓練日誌」という書類を作成して受講状況や日数・時間等を記入していきます。この状況は違法に事業主が作成することを防ぐ為に、訓練受講者が“手書き”で具体的に書いていくものなのです。

訓練日誌の業務内容にもチェックが入ります。OFF-JT、OJT訓練の内容が架空のものではないかを細かくチェックされます。

  • 趣味の為の講座ではないのか。
  • 営業研修といいながら実際には指導講師も不在で本当の営業をしていたのではないか
  • 助成金対象にはならない、学会や講演会に参加していたのではないか
  • 指導講師が不在で、ほとんどをビデオ視聴だけの講習ではないのか
  • 職務に必要な訓練のはずなのに、自動車普通免許の取得の為に利用した場合
  • 講習を受講しなくても取得できる資格試験の為に利用した費用
  • 労働安全衛生法に基づいて実施される職長教育や特別教育等は、建設業の訓練助成金等、別の助成金制度を利用できるので重複申請ができません。

申請書の内容を細かく見られて、「訓練日誌」と事業所で使用されている通常の「出勤簿」との整合性等も確認していきます。訓練日誌には講習を受けていたのに、出勤簿では仕事をしていたとか、会社を休んでいたとかの確認をしていくのです。国からの税金を利用するわけですから審査官も厳しく内容を精査していくわけです。

また過去には不正受給があった事例もありますので、その事件に照らし合わせて細かくみていくのです。「正社員化コース」においても不正受給が発生しているようです。

正社員として採用した社員を助成金欲しさに社員と共謀して虚偽の申請書を提出するのです。架空の契約社員から正社員に雇用形態を変更したような場合、社員からの直筆の署名等が必要になってきます。

審査官は曖昧な労働条件について、厳しくチェックしていきますので不正操作をすぐにばれてしまいます。社員も共謀罪の共犯となってしまいますので、上司や社長の命令といえども決して協力しないように心を鬼にしてください。

5.  まとめ

キャリアアップ助成金は、計画書に必要な申請書類、そして過程の添付書類等が年々厳しくなってきています。審査を厳しくしないといけない事由が過去にあったからにほか有りません。

もし事業所で有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者等に対してのキャリアアップをする計画があるのであれば、真面目に計画書を提出して正々堂々と助成金を受給しましょう。

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