小規模企業共済とは?メリットデメリットを分かりやすく解説

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起業した場合、自分が経営者という立場になります。当然サラリーマンとは違い、退職金はありませんし、受け取れる年金額もサラリーマンより少なくなってしまいます。

先々の老後の不安要素は大きくなるものです。

その不安を多少なりとも解消してくれて自分自身の老後資金を準備する手段として「小規模企業共済制度」という制度があるのです。

1. 小規模企業共済とは?

小規模企業共済制度は、個人事業を止めたときや、会社等の役員を退職したとき、個人事業の廃業などにより共同経営者を退任したときなどの生活資金等をあらかじめ積み立てておくための共済制度です。いわば経営者の退職金共済制度といえるものです。

小規模企業共済法に基づき、独立行政法人の中小企業基盤整備機構が運営しており、平成27年3月末で在籍件数は約160万件と多くの利用実績があるなど、安心して使える制度となのです。

2. 小規模企業共済のメリット

2−1.最大120%相当額が戻ってくる

将来において共済金が戻ってくるときは、掛金納付期間に応じ最大で120%相当額が戻ってくることが最大の魅力です。ただし、納付期間が加入後約20年経たずに解約すると掛金の全額が返ってきませんので注意してください。

2−2.掛け金分が節税になる

小規模企業共済の掛け金は、全額が経費(個人事業主の場合は所得控除)となるため、掛けた分だけ節税が可能となります。つまり貯金のつもりで積立てると、その分だけ税金が安くなるわけです。

2−3.退職金代わりで税負担が軽くなる

小規模企業共済は、積立時は節税になりますが、解約時には税金を払うことになります。しかし、受け取る共済金(解約手当金)は、個人事業主であれば「退職所得」になるので、「事業所得」などに比べて税負担が大幅に軽くなるのです。

退職所得が事業所得などに比べて税負担が軽くなる理由は次のとおりです。

課税対象となる所得金額の計算方法は、

  • 「事業所得」の場合:収益-費用=所得
  • 「退職所得」の場合:(退職金-控除額)×1/2=所得

となります。

退職所得の場合は、「控除額」や「×1/2」があるため、課税対象となる所得が大幅に小さくなり、税負担が軽くなります。小規模企業共済の共済金は退職所得になるので、事業所得の一部を掛金で積立てて共済金を退職所得として受け取る方が節税となりお得になるわけです。

2−4.無理のない額を積立できる

小規模企業共済の掛け金は月1,000円~70,000円の間で自由に設定することが可能(500円刻み)であるため、無理のない範囲で積み立てることができます。起業間もない創業期でお金がない時期でも毎月一定額の積立を続けやすくなっているのです。

2−5.資金繰りに困ったときの資金調達の手段になる

小規模企業共済には「契約者貸付制度」が存在するため、積み立てている金額の範囲内で共済から資金を借りることもできます。もし万が一、ビジネスの資金がショートの危機に直面した場合には活用することができるのです。例えば、月5万円を5年間積み立てていれば、5万円×12か月×5年=300万円 まで借入可能となるのです。

3. 小規模企業共済のデメリット

3−1. 元本割れのリスク

何と言っても「元本割れのリスクがある」のが最大のデメリットです。運営団体である「独立行政法人中小企業基盤整備機構」のホームページでも、掛金納付月数が240ヵ月(20年)未満の場合は元本割れとなることが明記されています。共済に加入したが数年で(任意)解約してしまった場合などは「節税効果 < 元本割れの金額」となってしまうので慎重な検討が必要です。

3−2. 共済金受け取り時に課税される

メリットの項目で述べた通り積立時には節税になりますが、戻ってきた共済金は課税されます。つまり小規模企業共済は「課税を先送りにできる制度」です。このことはしっかりと認識しておく必要があります。将来、共済金(解約手当金)を受け取った際には、受け取った年に課税されることになります。つまり、受け取った年に一気に税負担が増すことになります。ただし、その共済金受け取り時の税負担は軽減されることとなるため、トータルで考えるとメリットの方が大きいと言えます。

4. 小規模企業共済への加入方法

小規模企業共済の名の通り、小規模な個人事業主や法人の役員等が加入することができます。その加入要件は次の通りです。

・小規模企業共済制度の加入要件

  1. 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社の役員
  2. 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社の役員
  3. 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員や常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
  4. 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
  5. 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
  6. 上記1、2に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

(独立行政法人中小企業基盤整備機構のHPより引用)

5.加入の注意点や解約の流れ

加入にあたってのポイントは、事業規模が大きくなる前に加入を検討すべきということです。業種にもよりますが、従業員数が一定数以上を超えると「小規模企業」ではないと見なされて、制度を利用できなくなってしまうからです。つまり、要件を満たしている時に一度加入しておけば続けることは可能ですが、事業規模が加入要件を超えてしまうと、加入することはできなくなってしまうのです。

このような理由から、制度に興味がある起業家はなるべくは創業したらすぐに(会社が大きくなる前に)加入を検討しておくべきだと考えます。

次に小規模企業共済の契約を解約した場合についてですが、解約手当金を受け取るには、『共済金等請求書』に必要事項を記入し、中小機構へ送付する必要があります。また、繰り返しになりますが、任意解約をした場合、受け取れる解約手当金が掛金残高を下回る可能性があるので、その点も注意が必要です。

6.まとめ

小規模企業共済は、創業期の起業家や中小企業の経営者には大きなメリットがある制度です。しかしそのデメリットや注意点を踏まえた慎重な検討が必要な面もあります。中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)のサイト内では、小規模企業共済金に加入したときのシミュレーションを行うことができます。「毎月の掛け金」「掛ける年数」「現在の所得」を入力するだけで、様々な数値を計算してくれる便利なツールとなっていますので、ぜひ利用してみてください。

http://www.smrj.go.jp/skyosai/simulation/005462.html#

実際に加入を検討する場合は、資金繰り・税金等をトータルに考えていく事が大事です。やはり税理士に相談してアドバイスをもらうと良いでしょう。

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