社会保険を安くしたい!経営者が合法的に節約出来る方法

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経営者の皆様にとって、従業員の「社会保険料」は大きな負担になっています。破綻を回避するために厚生年金の保険料も大きく上がり、お悩みの方も多いでしょう。

そこで今回は狭義の社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)の保険料を、合法的にできるだけ安くする方法をご紹介します。なお、広義の社会保険の中には「労働保険」(雇用保険と労災保険)もありますが、こちらは従業員の給与に完全連動していますので、節約のハードルは高いです。

 1. そもそも社会保険とは

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狭義の社会保険である「健康保険・介護保険・厚生年金保険」の目的は、それぞれ「医療」「介護」「年金」のためにありますので、イメージしやすいはずです。仮に、保険加入が自由ですと、なくてはならないものだとわかっていても、人間は都合の悪いことを考えない生き物ですので、たちまち制度が崩壊します。

したがって、安くない保険料は、強制的に徴収されます。「加入させるべき人を理由なく入れない」などの手段は決してお勧めできません。調査の結果、遡及して保険料を徴収されるという事例は、世間に数多くあります。

 1−1. 誰もが入らないといけない?

法人か、個人事業でも従業員5人以上の事業の場合は、社会保険の適用事業所となります。そして従業員のほうも、正社員はすべて社会保険の被保険者となります。

パートタイマーを多くすれば社会保険を回避できるのか、といいますと、現在では「正社員の4分の3」以上の労働時間で働くパートタイマーは、被保険者にならなくてはなりません。おおむね、週30時間以上の労働者が目安になるでしょう。

※ 従業員500人以上の会社の場合、さらに被保険者とされる要件が増えます。

合法的に社会保険に加入しなくてよい、労働時間のさらに短いパートタイマーや、学生さんを活用するというのは、社会保険削減のひとつの方法とはなります。

 1−2. 保険料はどれくらい?

以下全て、「保険料率」は、労使で折半したのちのもの(会社負担分)です。「健康保険・介護保険」の保険料については一律ではなく、会社の加入する「健康保険組合」によります。平均の保険料率(2016年)は4.518%です。

小さい会社は業種別の健康保険組合でなく、以前の「政府管掌健康保険」を引き継いだ健康保険組合である「協会けんぽ」に加入しているケースが多いです。こちらの全国平均保険料率は、2016年で「5.0%」です。以下、この数字を用います。

介護保険の料率は、同じく「協会けんぽ」の場合、全国共通で「 0.825%」(2017年)です。介護保険料率の数字は比較的小さく、徴収されるのも40歳以上ですので、以下では省略しますが、節約にあたっての考え方は同一です。

厚生年金保険の料率は、2016年で「9.091%」と、大きな数字です。健康保険と厚生年金保険を併せますと、「14.091%」となります。

従業員に30万円の月額給与を支払いますと、「42,273円」を別途納めなければならないことになります。ただ、狭義の社会保険が労働保険と異なるのは、給与と保険料とが完全連動していないということです。保険料を算出するにあたり、「標準報酬月額」という、月額給与とイコールでないものを設定します。この数字の算出ルールを知っておくと、保険料削減の余地が生じるわけです。

 1−3. 例えば月給30万円従業員の場合は?

ほぼすべての手当(通勤手当も)を含んだ給与総額を元にして、社会保険料は計算されます。この総額が月額30万円の場合は、健康保険の料率の細かい違いのため増減もありますが、上記の通り「42,273円」となります。従業員の側も、額面給与からこれだけ引かれていますが、会社も同じ額を支払わねばなりません。

ただ、この額は毎月の「給与」が30万円だからではなく、「標準報酬月額」が「300,000」であるためです。50の段階(厚生年金保険は31)に分かれた「標準報酬月額」が決定され、それに基づいて保険料が決定されるのです。

標準報酬月額「300,000」となる給与の幅は、「290,000」 以上、「310,000」未満と広くなっています。また、いったん決定された「標準報酬月額」は、残業代の多少などで毎月の給与が変わったからといって、ただちに変動するわけではありません。

この、給与と「標準報酬月額」の「ズレ」を適切に操作してやることによって、社会保険料の節約が可能となります。

2.合法的な社会保険の節約方法とは

前述の通り、社会保険を節約するには「ズレ」を効果的に使うことです。標準報酬月額と、実態の給与がずれていて、標準報酬月額のほうが低い状態ですと、節約ができていることになります。

もうひとつ、入退社の時期について、「ズレ」を使うべきシーンもあります。こちらから先にご案内します。

2−1.退社の時期を調整する

社会保険は、「月末」に在籍していることによって発生します。5月31日に在籍していますと、「5月分」の社会保険料が発生するのです。ですから、5月末で退職する人について、「5月30日」で辞めてもらいますと、ひと月分の保険料が削減できます。

ただし、5月に入社した人がすぐ辞める場合、いつ退職しても差はありません。

2−2.入社の時期を調整する

逆に入社日についても、月末近くに設定しますと、わずかな日数に対して1か月分の社会保険料が発生しますので損です。特に、29日~31日あたりの入社日は避けて、翌月1日にするのがお勧めです。

2−3.標準報酬月額を低めに設定する

このテーマに基づく保険料削減の方法は、簡単にいいますと次の通りです。

  1. 4月から6月に支払う給与額を減らす
  2. 標準報酬月額のテーブルを細かく見て、上限近くの給与額に設定する

まず1ですが、基本給与を減らすわけにはいきません。できることは、「時間外労働の徹底的抑制」です。4月から6月までの給与の平均をもって、1年間の社会保険料が決定します。ですから、4~6月間の給与に、「時間外労働」の割増賃金がないことで、合法的に社会保険料を低い額にすることができます。

時間外労働が給与に反映されるには、会社のルールにもよりますがだいたい1か月掛かりますので、減らすべき対象の時間外労働は3~5月あたりということになります。年度またぎでお忙しい時期かと思いますが、こらえましょう。

そして、昇給は7月給与から反映されるようにした方がお得です。給が7月以降であっても、1年間社会保険料が変動されないという保証はありません。昇給後の3か月の給与の平均を取った際、これが標準報酬月額のテーブルを2つ上がっていますと、臨時の標準報酬改定(随時改定)が義務付けられています。

ですが、従業員のすべてが随時改定に該当するようなことは考えられませんので、トータルで考えれば十分に効果が見込まれます。

次に2ですが、従業員を昇給させるときは、テーブルの上に給与総額が位置するほうが、コストパフォーマンスが高くなります。標準報酬月額が同じ「300,000」になるように調整しようとしましたら、給与総額(3か月の給与総額の平均額)が、「290,000」円よりは、「309,999」円のほうが高パフォーマンスと言えます。

3.社会保険料削減における注意点

注意点もご案内します。

3−1.従業員は必ずしも得をするわけではない

標準報酬月額を低めに設定して保険料を浮かせる方法については、しばしば大義名分として「経営者だけでなく、従業員も助かる」ということが言われます。ですが、従業員側については必ずしも得とは言い切れません。

短期的には保険料が下がって労働者も助かるのは確かです。特に健康保険料は、高さによるメリットが大きくありません。ですが、将来の厚生年金受給の際には、より多くの年金保険料を納めておいたほうが有利であるわけです。

また、月末の1日前で退職した場合、確かにその月の社会保険料は発生しません。ですが、その月末の1日分についても、従業員には「国民健康保険」「国民年金」など個人で納付すべきものが「1か月」分発生するわけです。配偶者の扶養に入るケースを除いては、従業員にとって、早く退職するメリットは薄いです。

別に違法なことをしているわけではないものの、「従業員のためになる」に言い切ってしまうと、嘘になりかねません。その点のご説明にはお気を付けください。

3−2.正攻法でない手段の落とし穴

3~5月の時間外労働抑制自体はまったく問題のない方法です。ただ、これが難しいときに、策を弄するのはお勧めしません。ありがちな考え方ですが、「3月~5月間にした残業については、すぐ支払わないで7月以降に支払う」などとすることはお勧めしません。

そんなことをすれば、社会的・法律的評価としては、「残業未払い」です。また、違う月に「残業をした」という記録が残ることになり、思わぬ時間外割増が発生したりする(月の時間外労働が60時間を越えますと、越えた分は1.5倍の割り増しとなります)だけでなく、労働基準監督署などに指導を受けることにもなりかねません。正攻法でいきましょう。

4.まとめ

社会保険料につきましては、手間を掛ければ正攻法でも削減できます。

基本を理解していれば、決して難しくはありませんのでぜひチャレンジしてみてください。

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