「会社だけの給与では物足りない」
「副業してもっと自由に使えるお金を増やしたい」
このようなことを思ったことはありませんか?
最近は、本業の他に副業をしている方が増えていますが、「社会保険ってどうなるのかな?」と疑問に思う方が少なくありません。
副業した場合社会保険はどのようになるのか、誰にも相談できずにうやむやにしている方のために、副業で社会保険に加入しなければならない条件や、その際の手続きなどについてご説明していきます。
また、副業で社会保険に加入するとどのくらい社会保険料の負担が増えるのかモデルケースを用いてご説明していきます。
目次
1.本業と副業2箇所から給与をもらう場合、社会保険はどうなるの?
本業の他にも副業をしていて2箇所から給与をもらっている場合、一定の条件を満たしていると副業の方でも社会保険に加入する必要があります。ちなみに、雇用保険では「主たる賃金を受けている方」つまり本業の方だけに加入することになるため、副業の方では加入せず二重加入にはなりません。
では、社会保険が本業と副業で二重加入になるケースについて、社会保険の加入条件や必要な手続き、社会保険料の納付方法などついてご説明していきます。
1−1.社会保険の加入条件をチェック!
社会保険に加入するためには、まず勤務先が「社会保険適用事業所」である必要があります。社会保険適用事業所は、常時5人以上の従業員がいる事業所(農林漁業、一部のサービス業を除く)や、国・地方公共団体は強制加入になっています。
そして、副業をアルバイトやパートなどどのような雇用形態をとっていても、次の条件をすべて満たす場合、社会保険に加入しなければなりません。
<社会保険の加入条件>
- 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上
- 1ヶ月の賃金が88,000円以上
- 雇用期間が1年以上見込まれる
- 従業員が501人以上の企業に勤務している
この条件を見ると、従業員が500人以下の企業であれば社会保険に加入する必要がありませんので、副業するなら小規模な会社がいいということができます。
1−2.加入条件を満たした場合の手続き
副業でも社会保険料に加入しなければならないときに、必要な手続きがあります。
「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」という書類に、主たる会社(本業)を選択して、それぞれの会社からもらう給与額を記載します。
それを主たる会社の管轄の年金事務所に提出しますが、2箇所以上の会社に勤務することになった日の翌日から10日以内という提出期限がありますので注意しましょう。
そこで「健康保険証は2枚になるの?」と疑問に思われる方もいらっしゃると思いますが、健康保険証は1枚です。本業を「主たる会社」に選択した場合、現在持っている健康保険証を継続して利用することができます。
1−3.社会保険料の納付や負担はどうするの?
本業と副業それぞれで社会保険に加入する場合、社会保険の納付をどのように行うのかも疑問です。計算方法としては、本業と副業の会社の給与を合計し、各会社の給与の額に応じて按分し、それぞれの会社の社会保険料を算出します。
例えば、本業の会社で20万円、副業の会社で10万円の給与があるとした場合で考えてみましょう。
まずは、それぞれの会社の給与を合計しますので
20万円+10万円=30万円 となります。
30万円の標準報酬月額を標準報酬月額表から判断します。
ここでは東京都(40歳未満)の場合でみてみると
- 健康保険料:14,865円
- 厚生年金保険料:27,450円 となります。
続いて、各会社での社会保険料を按分して算出します。
- 本業:14,865円×20万/30万
- 副業:14,865円×10万/30万
このようにして、それぞれの会社で負担する社会保険料をもとめます。
2.モデルケースを紹介!社会保険料はどれくらい増える?
ここからは、実際に本業の他に副業をした場合にどのくらい社会保険料の負担が増えるのか、モデルケースを用いてご説明していきます。
ケース1では「本業+パートで副業」、ケース2では「本業+起業して副業」という場合を設定しています。
2−1.ケース1
Aさんは、正社員として本業の会社から月20万の給与を得ていますが、もう少しお金を稼ぎたいと思い副業を始めました。副業はパートで月10万円の給与が支払われていますが、社会保険料はどのようになるのでしょうか?
- 東京都(Aさん、30歳)
- 給与:本業20万円(社会保険加入)、副業10万円(月20日以上勤務)
Aさんは、本業の会社では社会保険に加入しているため、今後も社会保険料を負担していくことになります。一方、副業では月20日以上勤務し10万円の給与を得ています。
先にも触れましたが、社会保険の加入条件として「従業員が501人以上の企業に勤務している」ということがありますので、Aさんが従業員500人以下の会社で副業している場合には、社会保険料を負担する必要はありません。
しかし、従業員が501人以上の会社で副業をしている場合は社会保険料に加入する必要がありますので、ここではこのケースについて社会保険料の計算をしていきます。
①給与20万円のみの場合
東京都の標準報酬月額表より
- 健康保険料 :9,900円
- 厚生年金保険料:18,300円
②給与20万円+10万円の場合
給与の合計:20万円+10万円=30万円
標準報酬月額表より
- 健康保険料 :14,850円
- 厚生年金保険料:27,450円
③保険料が増加した分は?
- 健康保険料 :14,850円-9,900円=4,950円
- 厚生年金保険料:27,450円-18,300円=9,150円
健康保険料・厚生年金保険料合わせて月々14,100円ずつ保険料の負担が増加し、年間では169,200円の負担増となります。
2−2.ケース2
Bさんは、正社員で勤務しており給与は月収30万円を支給されています。しかし、将来的に起業したいと考えており、この度副業で起業しました。起業して経営が軌道にのるまではいままでの会社で勤務し続ける予定です。
起業し、Bさんは「会社役員」となりましたが、社会保険の加入についてはどのように扱えばいいのでしょうか。
- 東京都 Bさん(男性、35歳)
- 給与:本業30万円(社会保険加入)、副業10万円
まず、本業の方では社会保険に加入していたので、これからも保険料を負担することに変わりはありません。問題は副業で起業した分ですが、Bさんは会社役員になり10万円の報酬を得ています。
実は、会社役員には社会保険に加入する義務があり、勤務時間や日数に関わらず社会保険に加入しなければなりません。ただし、例外的に次の場合は社会保険への加入は対象外となります。
- 非常勤役員である
- 常勤役員でも役員報酬が0円である
Bさんは、会社役員であり役員報酬を得ているので、社会保険に加入しなければなりません。では、実際に社会保険料がどのくらい増えるのか計算していきましょう
①給与30万円のみの場合
東京都の標準報酬月額表より
- 健康保険料 :14,865円
- 厚生年金保険料:27,450円
②給与30万円+報酬10万円の場合
給与(報酬)合計:30万円+10万円=40万円
40万円の標準報酬月額は
- 健康保険 :20,295円
- 厚生年金保険料:37,515円
③保険料が増加した分は?
役員報酬がプラスされた分、社会保険料がどの位ふえたのか計算します。
- 健康保険料 :20,295円-14,865円=5,430円
- 厚生年金保険料:37,515円-27,450円=10,065円
健康保険料・厚生年金保険料合わせて月々15,495円増加するので、年間で185,940円負担増となります。
3.副業は会社にバレる?バレない方法はある?
副業している方にとって一番心配なのは「会社にバレたらどうしよう?」ということではないでしょうか?
多くの会社では副業を禁止しているところが多いため、バレたら何らかのペナルティがあるのかもしれないと心配になってしまいます。副業して20万円以上の所得(収入-必要経費)がある場合には確定申告をしなければなりませんが、この確定申告によって会社に副業していることがバレてしまいます。
副業の確定申告をすると、給与以外の収入に対する住民税の課税金額が本業の会社に通知されてしまいます。会社からの給与以上の住民税額が通知されてくると、経理担当者などが「何かおかしい・・・」と気づいてしまい、副業がバレてしまうことがあります。
しかし、実は会社にバレない確定申告方法がありますのでご説明します。
副業の過程申告の際、確定申告書の2枚目の「住民税・事業税に関する事項」という欄に住民税の徴収方法の選択という項目があり、給与からの天引きにするか自分で納付するかを選ぶことができます。
ここで、「自分で納付する」にチェックをすれば、本業の会社には副業の収入に対する住民税の通知が届かないようになります。ただし、その場合は自分で住民税を市区町村役場に支払いにいくことを忘れないように気を付けましょう。それでも念には念を入れたいという場合は、直接市区町村役場に事前に相談してもいいでしょう。
4.まとめ
副業でも社会保険に加入しなければならない条件や手続き、会社にバレない方法などをご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?
多くの会社では副業を禁止しているところが多いため、それにもかかわらず副業を続けるのであれば、慎重に行うことが大切です。確定申告の仕方に気を付けるのはもちろんのこと、副業していることを会社の誰にも話さないことも大事です。
そして本業をおろそかにしないこと、それが最も大切なことです。