両立支援等助成金とは!?申請方法をわかりやすく紹介!

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最近は、仕事を続けながら育児や介護を行っている方が増えています。しかし、仕事と育児・介護を両立していくのは従業員に大変な負担がかかるため、退職せざるを得ない状況に陥ってしまうケースが少なくありません。人材を失ってしまうのは企業にとっても大きな痛手となってしまいます。

そこで活用したいのが「両立支援等助成金」です。

従業員が仕事を続けながら育児や介護を両立していけるような制度の導入や環境作りをすることで助成金が受給できます。もちろん、該当する従業員もこれまでよりも負担が軽く両立していくことができますので、労使双方にメリットのある助成金といえます。

ここでは、両立支援等助成金の5つのコースや申請方法などを詳しく解説していきます。

1.両立支援等助成金とは!?わかりやすく紹介

両立支援等助成金は、仕事と育児・介護とを両立できる職場環境作りのための取り組みを行った企業に支給される助成金です。事業主が従業員のために、仕事と育児・介護を両立して行えるような制度の導入、利用しやすい環境作りの取り組み、対象となる従業員が制度を利用した場合に助成金が支給されます。

2.各コース詳細

両立支援等助成金には、次の5つのコースがあります。

  • 出生時両立支援コース
  • 介護離職防止支援コース
  • 育児休業等支援コース
  • 再雇用者評価処遇コース
  • 女性活躍加速化コース

なお、これらの他に「事業所内保育施設コース」がありますが、平成28年4月から認定申請受け付けが停止されていますので、今回は上記5つのコースについて解説していきます。

では、それぞれのコースについて詳しく見ていきましょう。

2−1. 出生時両立支援コース

男性従業員が育児休業を取得しやすい職場環境作りの取り組みを行い、男性従業員に一定期間の連続した育児休業を取得させた場合に支給されるものです。

【助成金を受給するための要件】

  • 男性従業員が育児休業を取得しやすい職場環境作りのために、次のいずれかの取り組みを行うこと。
  • 男性従業員に対する育児休業制度の利用促進のための資料等の周知
  • 男性従業員の育児休業取得について管理職向けの研修を行う
  • 男性従業員が子供の出生後8週間以内に開始する連続14日以上(中小企業は連続5日以上)の育児休業を取得すること。
  • ただし、過去3年以内に男性従業員が連続14日以上(中小企業は連続5日以上)の育児休業を取得している場合は対象外となり、支給対象は1年度につき1人までとなるため注意が必要。

【助成金支給額】

さて、実際にどの位の金額が支給されるのか気になるところですが、以下のようになっています。

中小企業 中小企業以外
取り組み・育休1人目 57万円(72万円) 28.5万円(36万円)
育休2人目以降 14.25万円(18万円) 14.25万円(18万円)

※( )内は「生産性要件」を満たした場合の金額

生産性要件については厚生労働省が発表している基準をご確認ください。また、中小企業とそれ以外の判断は産業ごとに異なり、「資本または出資の額」「常用労働者数」のいずれかで判断します。

2−2.介護離職防止支援コース

仕事と介護を両立できるような職場環境作りの取り組みをし、介護休業の取得・職場復帰や業務に従事しながら介護を行えるような勤務制限制度の利用を円滑にするための取り組みを行った事業主に支給されるものです。

【助成金を受給するための要件】

  • 仕事と介護を両立できるような職場環境を整備する取り組み
    次の4つの取り組みをすべて行うことが求められます。
  • 社内アンケートを実施し、従業員の仕事と介護の両立に関する実態を把握する
  • 平成29年度改正後の育児介護休業法に基づく介護関係制度の導入により制度設計・見直しをする
  • 従業員に研修を実施したり介護関係制度の周知を行うことで、介護問題をかかえる前に従業員を支援する
  • 相談窓口の設置や周知を行うことで、介護問題を抱えている従業員を支援する
  • 介護休業・介護制度の利用
    介護休業は次の1~5を、介護制度については1~4を実施することが求められます。

<介護休業>

  • 対象者と上司等が面談をし、「介護支援プラン」を作成する。
    介護支援プランは、厚生労働省HPの「介護支援プラン策定マニュアル」を参考にするといいでしょう。
  • 介護支援プランに沿って、介護休業開始日の前日までに業務の引き継ぎなどを行う。
  • 対象者が介護休業を1ヶ月以上(分割で取得する場合は合計30日以上)取得し、原則的に現職に復帰すること。
  • 介護休業終了後から1ヶ月以内に、上司等とフォロー面談を行う。
  • 介護休業終了後、対象者を雇用保険の被保険者として1ヶ月以上継続して雇用する。

<介護制度>

  • 対象者の制度利用開始前日までに、上司等と面談し介護支援プランを作成する。
  • 介護支援プランをもとに、対象者が制度利用中の業務体制を検討する。
  • 対象者が次の4つの勤務制度のいずれかを3ヶ月以上(分割して利用する場合は合計90日以上)利用する。
    ・所定外労働の制限制度 ・時差出勤制度 ・深夜業の制限制度
    ・短時間勤務制度
  • 制度利用期間終了後1カ月以内に、上司等とフォロー面談を行う。

【助成金支給額】

支給される助成金額は次のとおりです。

中小企業 中小企業以外
介護休業の利用 57万円(72万円) 38万円(48万円)
介護制度の利用 28.5万円(36万円) 19万円(24万円)

2−3.育児休業等支援コース

  • 育児休業取得時・職場復帰時
    「育児復帰支援プラン」を作成の上、プランにしたがって従業員に育児休業を取得・職場復帰させた中小企業の事業主に支給されるものです。なお、育児復帰支援プランは、厚生労働省の「育児復帰支援プラン策定マニュアル」を参考にするといいでしょう。

【助成金を受給するための要件】

<育児休業取得時>

次の4つの取り組みすべて行うことが必要とされます。

  • 上司等と面談をし、対象者の休業までの業務の整理や引き継ぎのスケジュール、復職後の勤務等について話し合い記録する。
  • 育休復帰支援プランを作成する。
  • 育休復帰支援プランをもとに、育児休業(産前産後休業に続いて育児休業を取得する場合は産前休業)開始日までに業務の引き継ぎを行う。
  • 3ヶ月以上の育児休業を取得する(産後休業を取得する場合は産後休業を含めて3ヶ月以上)。

育児休業を取得する前に、「育休復帰支援プランによって、従業員の円滑な育児休業の取得、職場復帰を支援する措置を実施する」旨を明文化し、全従業員へ周知する必要があります。

<職場復帰時>

対象者について、次の3つの取り組みを行うことが必要とされます。

  • 育休復帰支援プランに沿って、対象者の休業中に職場の情報・資料の提供を実施する。
  • 対象者が職場に復帰する前と後に上司等と面談し、面談結果を記録する。
  • 原則として対象者を原職復帰させ、さらに3ヶ月継続して雇用する。

【助成金支給額】

育児休業取得時 28.5万円(36万円)
職場復帰時 28.5万円(36万円)
対象者の職場支援の取り組みをした場合 19万円(24万円)

ただし、支給は1企業につき2人までとなります。

  • 代替要員を確保した時
    育児休業を取得する従業員の代替要員を確保し、休業取得者を原職に復帰させた中小企業事業主にさらに支給されるものです。

【助成金を受給するための要件】

次の3つの取り組みを行う必要があります。

  • 育児休業を取得した従業員が職場復帰する前に、「育児休業が終了した従業員を原職に復帰させる」旨を就業規則に規定する。
  • 対象となる従業員が育児休業を3ヶ月以上取得した上で、事業主がその間の代替要員を確保する。
  • 対象となる従業員が原職に復帰し、さらに6ヶ月以上継続して就業する。

【助成金支給額】

支給される助成金額は次のとおりです。

支給対象労働者1人あたり 47.5万円(60万円)
支給対象労働者が有期契約労働者の場合 9.5万円(12万円)加算

支給対象期間は5年間で、支給人数は1年度あたり10人までとなります。ただし、1人目の対象となる労働者が原職に復帰してから6ヶ月を経過するまでに、次世代法に基づく「くるみん認定」を受けられれば、平成37年3月31日まで50人までが対象となります。

2−4.再雇用者評価処遇コース

妊娠・出産・育児や介護を理由に退職した従業員が、状況が変化し就業が可能になった際に復職でき、適切に評価され、配置・処遇される再雇用制度を導入し、再就職を希望する者を採用した事業主に支給されるものです。

【助成金を受給するための要件】

次の2つの両方を満たすことが必要とされます。

  • 妊娠・出産・育児や介護を理由に退職した従業員について、退職する前の勤務を評価し、処遇の決定に反映させることを明記した再雇用制度を導入する。
  • 上記制度に基づいて、退職後1年以上が経過している従業員を再雇用し、無期雇用者として一定期間継続して雇用する。

(元々有期契約労働者であったものを無期雇用に切り替えて再雇用し、一定期間継続雇用する場合も対象)

【助成金支給額】

助成金の支給額は次のとおりです。

中小企業 中小企業以外
再雇用1人目 38万円(48万円) 28.5万円(36万円)
再雇用2~5人目 28.5万円(36万円) 19万円(24万円)

助成金の支払いは、雇用を継続して6ヶ月後と1年後の2回に分けて半額ずつ支給されます。

2−5.女性活躍加速化コース

女性活躍推進法に基づいて、女性従業員の活躍に関する「数値目標」、数値目標の達成に向けた取り組みを盛り込んだ「行動計画」を策定し、目標達成した事業主に支給されるものです。

【助成金を受給するための要件】

  • 女性従業員の活躍状況を把握し、自社の女性従業員の活躍に向けた課題を分析する。
  • 自社の課題解決に向けた数値目標と取組目標を盛り込んだ行動計画を策定・公表し、さらに自社の女性従業員活躍状況も公表する。
  • 行動計画期間内に取り組み目標を達成する。

◎「加速化Aコース」を申請する

  • 取組目標達成時から3年以内に数値目標を達成して、達成状況を公開する。

◎「加速化Nコース」を申請する

【助成金支給額】

助成金支給額は次のとおりです。

中小企業 中小企業以外
加速化Aコース 28.5万円(36万円)
加速化Nコース 28.5万円(36万円)
女性管理職比率が基準値以上に上昇 47.5万円(60万円) 28.5万円(36万円)

助成金が受給できるのは1企業あたり1回限りです。また、この助成金では産業にかかわらず常用労働者が300人以下の企業が中小企業となります。

3. 両立支援等助成金の申請方法

ではここからは、両立支援等助成金の申請方法について解説していきます。両立支援等助成金には5つのコースがありますので、ここでは「出生時両立支援コース」を例にとって申請方法を詳しく見ていきます。

3−1. STEP1:職場の環境作りと育児休業の取得

男性従業員が育児休業を取得しやすい職場環境作りに取り組みます。対象となる男性従業員に、連続した14日以上(中小企業の場合は5日以上)の育児休業を取得させる。ただし、対象となる従業員の子の出生後8週間以内に開始する必要があります。

3−2.STEP2:就業規則等の整備

育児・介護休業法第2条第1号に規定されている育児休業の制度及び育児のための短時間勤務制度について、労働協約または就業規則に規定する。

3−3. STEP3:一般事業主行動計画の届出

「一般事業主行動計画(*)」を作成し、都道府県労働局長に届け出ます。また、この一般事業主行動計画を公表し、従業員に周知させることが必要です。

(*)一般事業主行動計画とは、次世代法に基づき、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備等に取り組むにあたって、(1)計画期間(2)目標(3)目標達成のための対策及びその実施時期を定めるもの。従業員が101人以上の企業には、当該計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられています。

詳しくはこちら→厚生労働省「一般事業主行動計画の策定・届出等について」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/jisedai/

3−4. STEP4:助成金申請書等の提出

STEP1~3の取り組みに基づいて、助成金支給申請書や添付書類等を労働局に提出します。なお、申請書の内容については、実地調査や事情聴取などが行われることがありますので留意しておきましょう。

3−5. STEP5:助成金の振込

「支給決定通知書」が到着してから1~2ヶ月程(混み合っている場合は4ヶ月程)で自社の口座に助成金が入金されます。

4.まとめ

両立支援等助成金について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。

育児・介護と仕事を両立していく問題は、これからもさらに関心が高まことが考えられますので、会社のためだけでなく従業員のためにも、助成金をうまく利用して従業員が安心して働き続けられる職場作りに取り組む1つのきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

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