退職願と退職届の違いと効力とは 撤回可能はどっち?

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今勤めている会社を辞めたいと思ったことのない人は、どれほどいるでしょうか。働いている以上、思うようにいかない時、行き詰まる時は誰にも訪れると思います。そんな時、今の勤め先を辞め、新天地を求めようと決意した人が、会社に「退職届」を提出して退職の意思を示します。

業務上の都合によって、退職の仕方を、○○日前に「退職願」を提出することなど、就業規則で決めている会社も有ります。さて、ここに出てきた「退職届」と「退職願」は、どちらも同じものの様に思えますが、何か違いが有るのでしょうか。

1. 退職願と退職届 その違いとは?

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1−1.退職願と退職届の定義とその効力

会社を辞めたい、もしくは辞めようと思った時に、会社に提出する書類が退職願や退職届です。「辞表」と書く人も多いですが、辞表は会社の役員や、公務員が「職を辞する」時に提出するもので、一般のサラリーマンは退職願または退職届を提出します。

会社によって就業規則に、退職の1カ月前に提出することなどの規定があります。その場合は、規定を守って提出するのが、大人の対応です。退職願や退職届は直属の上司に提出します。

退職届が受理されないような場合でも、民法では退職する14日前までに退職の意思表示をすれば良いことになっていますが、遮二無二退職してしまうのは、今後のことも考えると得策とは言えません。

1−2.書き方や注意点

いざ退職を決意して退職願を書こうとする時、常識としてある程度決まった書き方が有ります。ネット上にも沢山のテンプレートが有ります。これを参考にするといいでしょう。

  • 用紙サイズはA4もしくはB5で、縦書きが基本です。
  • 「退職願」または「退職届」と大きめの字で高さの中ほどに書きます。
  • 1行目・・下方に「私事」「私儀」とのみ記入します。
  • 2行目・・氏名を入れて○○ ○○は、(氏名を入れないことも有ります)一身上の都合により
  • 3行目・・平成○年〇月〇日をもって、退職いたしたくお願い申し上げます。
  • 4行目・・1行空ける。
  • 5行目・・下方に「○○部 ○○課」
  • 6行目・・5行目とバランスを取って、氏名、押印
  • 7・8行目・・株式会社○○○○
    代表取締役社長 ○○ ○○殿

全体のバランスを良くするために、2行目・3行目を1行に書いても問題ありません。退職理由は通常「一身上の都合」と書きます。ハローワークで離職票を作成する時に、会社都合の退職なのか、本人都合の退職なのかの判断材料になります。

会社によっては、会社の様式の退職願を提出するようになっている場合もあります。その場合には「退職願」となっているものが多いようです。会社の都合で退職日を変更することができるようにとの布石になっています。

退職の意思が固く、退職日を変更されたくない人は、手書きの「退職届」を作成し提出します。会社様式の文書でなくとも、会社側は退職届の受け取りを拒否はできません。

1−3.その違いは?

「退職願」は、退職したい意思を会社に届け出る書類です。「〇月〇日をもって退職したくお願い申し上げます。」と言う内容になります。従って、業務上の都合がつくまで、後任を採用するまで待ってくれと会社から要求され、希望する〇月〇日に必ずしも退職出来ないこともあります。

「退職届」は、「〇月〇日をもって退職いたします。」と、退職の意思を表す内容になります。会社にとっては都合よく後任が決まっているような場合を除き、少々不都合が生じるときも有ります。

2. 撤回出来るのはどっち?

退職について考えた場合、労使間の雇用契約を終了することになります。その終了方法に、自主退職、合意解約、解雇の3つが有ります。

解雇は会社側の都合ですので退職願も退職届も必要ありません。(ただし、従業員を解雇すると、助成金の支給対象にならないなど会社側に不利益になることも有るので、会社側は退職届を要求することが有ります。その場合に退職届を会社に提出する必要は有りません。)

退職届は自主退職に当たります。退職届を提出した時点で雇用契約の解約の意思表示として効力を発揮します。従って、原則として退職を撤回することはできません。

それに対し退職願は、合意解約の申し込みに当たります。退職願を提出した時点ではまだ雇用契約はどちらともつかない状態です。退職願を会社が受理し、雇用契約の解約を合意了承、提出者に意思表示した時点で、雇用契約終了の効果が発生します。ですので、会社が承諾の意思表示を伝達する前であれば、退職を撤回することができます

3. まとめ

これは労使間のトラブルになった例です。日本の中小企業では、年次有給休暇を消化しにくい傾向に有ります。退職時に、残っている有給休暇を消化できるかどうかの問題でこの退職願と退職届の問題が浮き上がってきました。

会社側は退職時の有給休暇の消化を前例として認めていませんでした。しかし、会社側への不満を募らせていた人達が、労働基準監督署に相談した結果、「退職届」を提出することになりました。

勤続年数に応じた有給休暇数が14日を超えていましたので、退職届を提出したその日から有給消化となり、きちんと消化できる日を退職日としたのです。かなりの強行突破でしたが、就業規則も整備していなかったその会社の不首尾は免れようもありませんでした。

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