人事担当1年目でも分かりやすい!従業員が退職した際の手続き方法

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従業員が退職する際、人事担当者にはとるべき手続きがたくさんあります。何をどこにどうすればいいのか?いざという時に慌てず処理できるように、ここでは退職手続きの流れを3ステップで説明します。

退職手続きは、退職者にとって大切なものであり、なおかつ会社にとっても適正な手続きが必要なものです。手続き漏れのないように、しっかりと確認しながら進めていきましょう。

 1.従業員が退職する際の手続きを3ステップ分かりやすく

では早速、従業員が退職する際の手続きを3ステップに分けて、1つずつ詳しく説明します。

1−1.<ステップ1>従業員への確認作業と回収するもの

退職する従業員に「確認すべきこと」「依頼すること」「回収するもの」がありますので、それぞれ確認していきましょう。「確認すべき事」は、ステップ2で届け出るべき書類を判断することにも繋がりますので忘れずに行いましょう。

 【退職者に確認すること】

退職者に、退職後の就労予定などについて確認します。すでに就職先が決まっている場合や、まだ未定の場合、59歳以上の場合などで手続きが異なりますので、次にまとめておきます。

  •  就職先が未定などすぐには就職せずに、雇用保険をもらう予定の場合は、離職票の交付手続きを行います。
  • 次の就職先がすでに決定している場合は、手続きは不要です。
  • 退職者が59歳以上の場合は、先の予定に関わらず離職票の交付手続きを行います。

また、健康保険においては、「任意継続制度」を利用するかどうかも確認しておきます。継続する場合には、任意継続の資格取得の手続きを行う必要があります。

手続きは、直接本人が行う必要があるため、会社として手続きをすることは特にありませんが、今後の流れなどを説明しておくためにも念のため確認しておきましょう。

【退職者に依頼すること】

従業員が退職してしまう前に、次の2つの事項について依頼します。

  • 雇用保険被保険者離職証明書へ記名押印
  • 退職届の提出

雇用保険被保険者離職証明書には、従業員本人の記名押印が必要となります。退職者がまだ在職しているうちにお願いしましょう。また、雇用保険の手続きで添付書類の中で退職届も必要なため、口頭で退職を伝えられた場合は、改めて退職届として提出してもらいましょう。

書面で出してもらえば、後に言った言わないトラブルになることを防ぐこともできます。

【退職者から回収するもの】

後のトラブル回避のためにも、次のものを退職日までに必ず回収するようにしましょう。

  • 健康保険被保険者証(本人・扶養家族の分全て)
  • 社員証・名刺
  • 携帯電話やパソコン、制服などの会社から貸与した物

もし退職者から「健康保険被保険者証は当日ぎりぎりまで使いたい」との申し出を受けた場合は、保険証のコピーを渡し、本体は会社で回収するようにしましょう。

また、名刺は本人のものだけでなく、取引先でいただいた名刺も回収します。会社にとって重要な個人情報にあたるため、必ず回収するようにしましょう。

1−2. <ステップ2>従業員の退職に伴い届け出るべき提出物

ステップ1で退職者に確認した情報を元にして、届け出るべき提出物の準備をします。届出の必要な社会保険・雇用保険・住民税について詳しく説明します。

【社会保険】

従業員の退職に伴い届出が必要とされるものは、次の2つです。

・健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届

(本人・扶養家族全員分の健康保険証を忘れずに添付します。)

http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20150407-02.files/kousei81-0.xls

・健康保険被保険者証回収不能・滅失届

(健康保険証の回収ができない場合に届け出ます。)

http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha2/20120803-01.files/kousei81-1.xls

提 出 先:事業所の所在地を管轄する年金事務所

提出期限:退職日の翌日から5日以内

提出方法:郵送、窓口、電子申請

記入上の注意点として、資格喪失届の「資格喪失年月日」は「退職日の翌日」を記入します。

また、退職する従業員が任意継続を希望する場合は、会社としてとるべき手続きはありませんが、退職者にとっては大事なことなので念のため手続きの流れなどを伝えておくといいでしょう。

手続きをする際は「健康保険任意継続被保険者資格取得届」を退職者本人が退職日から20日以内に居住地を管轄する社会保険事務所に届け出る必要があります。期限厳守なので、早めに届け出ることを伝えてあげるといいでしょう。

【雇用保険】

雇用保険で届け出が必要なのは、次の2つです。

・雇用保険被保険者資格喪失届

雇用保険被保険者資格喪失届1

(引用:ハローワーク)

・雇用保険被保険者離職証明書

雇用保険被保険者離職証明書2

雇用保険被保険者離職証明書3

(引用:ハローワーク)

雇用保険被保険者離職証明書は、退職者が離職票を希望する場合に必要な書類です。また、59歳以上の退職者には、本人の交付希望の有無を問わず交付する必要があります。雇用保険被保険者離職証明書の用紙は、3枚複写となっているため、ダウンロードすることができません。

ハローワークに取りに行く必要があります。また、次のような添付書類が必要となりますので忘れずに準備しましょう。

  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 出勤簿
  • 退職届などの退職理由が確認できるもの

記入上の注意点としては、退職者本人による記名押印欄があるため、退職前に記名押印してもらうことを忘れないようにしましょう。

提 出 先:事業所の所在地を管轄するハローワーク

提出期限:退職日の翌日から10日以内

提出方法:郵送、窓口、(喪失届は電子申請可)

【住民税】

退職者が住民税を給与から天引き(特別徴収といいます)していた場合は次の届出が必要になります。

・給与支払報告に係る給与所得異動届

(見本:http://www.city.suginami.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/005/944/nizyukyunenidoutodoke.pdf

提 出 先:退職者が居住する市区町村

提出期限:退職月の翌月10日まで

提出方法:郵送、窓口

手続き上の注意点として、従業員の退職日によって手続き方法が異なりますので、以下にまとめます。

退職日 住民税の徴収方法
1月1日~4月30日 最後の給与または退職金から一括徴収
5月1日~5月31日 通常通り最後の1ヶ月分を徴収
6月1日~12月31日 ①    ②のどちらかを退職者に選択してもらう。

①    最後の給与または退職金から一括徴収

②    普通徴収に変更する(「特別徴収に係る給与所得者異動届」を退職月の翌月10日までに各市区町村に提出する)

1−3.<ステップ3>退職時・退職後に従業員に渡すもの

退職者から在職中に預かっていたものやステップ2で届け出た後に届く書類を退職者に渡します。次の職場ですぐに必要なものであったり、雇用保険を受給するために必要なものなので、早めに渡すよう心がけましょう。

【退職時に渡すもの】

  • 年金手帳(会社で預かっている場合)
  • 雇用保険被保険者証(  〃   )
  • その他入社の際に会社で預かっていたもの

年金手帳や雇用保険被保険者証のほか、在職中会社で預かっていたものは全て返却します。後のトラブルを防ぐためにも、「預かり品リスト」を作成しておくと返却漏れを防ぐことができます。

【退職後に渡すもの】

  • 離職票
  • 健康保険被保険者資格喪失確認通知書
  • 源泉徴収票(退職日から1ヶ月以内)

退職時にはまだ届いておらず渡せない書類なので、郵送で退職者あてに送ることが多いです。特に離職票は、退職者が雇用保険を受給する予定の場合、すぐにでも欲しい書類ですので、会社に届き次第早急に退職者あてに郵送するようにしましょう。

2.会社都合の場合の手続きはどうするの!?

これまで述べてきた手続きは、従業員から退職の申し出を受けた場合の「自主退職」における手続きです。退職には、自主退職のほかにも「会社都合」によるものがあります。ここでは、会社都合による退職時の手続き方法について説明します。

【基本的な手続きは同じ】

会社都合による退職の場合も、手続きの内容はほとんど同じです。退職者から健康保険被保険者証・社員証・名刺・会社からの貸与物を回収し、会社からも従業員から入社時に預かったものを返却します。

また、社会保険・雇用保険・住民税における手続きもほとんど同じです。しかし、大きな相違点がありますので注意を要します。

○「会社都合」で退職するため「退職願」は提出の必要なし

退職は会社から従業員に勧めたものなので、退職願を提出してもらう必要はありません。逆に、会社都合においてこれを求めるとトラブルに発展する可能性があります。

○雇用保険被保険者離職証明書の記入で、退職理由を「会社都合」にする

本来会社都合である退職理由を自主退職にしてしまうと、退職者が不利益を被るだけでなく、トラブルに発展することも十分に考えられます。というのも、退職理由が自主退職か会社都合かによって、退職者がもらえる雇用保険の金額に大きな差が出てしまうからです。

会社都合で退職してもらう従業員には、誠意ある態度が必要不可欠なので、退職理由はそのまま会社都合と記載します。

【最後の給与・積立金の返還ルール】

退職者に支払う最後の給与は本来の給与支給日に支払うのが原則ですが、退職者からの請求を受けた場合は、「請求日から7日以内」に支払わなければなりません。また、給与だけでなく、社内積立金などがある場合も同様に、請求があれば請求日から7日以内に返還する必要があります。

【解雇予告手当】

解雇予告手当とは、会社が従業員に対して解雇日の30日以上前に解雇予告をせずに従業員を解雇する場合、労働基準法上支払いが義務付けられている手当をいいます。

従業員を解雇する場合、原則として解雇日の30日前に解雇予告をすることになっていますが、予告なしに解雇する場合は、解雇予告手当を支払わなければなりません。

解雇予告をする日によって、支払額が異なりますので、以下にまとめてみました。

解雇予告日 解雇予告手当の支払額
解雇日の当日に解雇を告げる 平均賃金の30日分
解雇日の1日前~29日前に解雇を告げる 予告期間が30日に足りなかった日数分の平均賃金
解雇日の30日以上前に解雇を告げる 支払い義務なし

3.経営者や人事担当が知っておきたい退職手続きにおける注意点

従業員の退職手続きにつて、経営者や人事担当者が知っておくべき注意点があります。その中でも特に大事な①パート・アルバイトの退職時の手続き②個人情報保管について③会社都合退職のデメリットの3つについて説明します。

【パート・アルバイトでも手続きは必要】

退職手続きが必要なのは、正社員だけではありません。パートやアルバイトでも、雇用保険や社会保険に加入していたり住民税の特別徴収をしている場合は、同様の手続きが必要になります。

正社員だけでなくパート・アルバイトが退職する際も、同じように必要な届出を行い、本人に渡すものは忘れずに渡しましょう。

【退職後の個人情報の保管】

退職者を雇い入れた際に提出された履歴書等の個人情報の保管についてですが、労働基準法では雇入れや退職に関する書類の保管義務期間を「3年間」としています。

しかし、最低保管期間の3年で破棄してしまう場合、何らかの支障をきたすことも考えられます。一方で、個人情報を長期間保管し続けるのは好ましいことではありません。

「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」(厚生労働省)などを参考に、個人情報管理について会社内であらかじめ定めておくことが望ましいです。

【会社都合退職のデメリット】

会社都合退職にした場合、会社にとってデメリットとなることがあります。助成金が支給されなくなったり、従業員が納得していない状態での解雇となると後に賠償金を請求されるようなリスクがあります。

また、会社のイメージがダウンしてしまう可能性もあります。従業員に退職勧告する場合や解雇する場合は、よく話し合い納得した上で退職という形をとるようにすることが大切です。

4.まとめ

従業員が退職する際の手続きは、大きく3ステップに分けて考えましょう。

<ステップ1>退職者から回収するもの

<ステップ2>社会保険・雇用保険・住民税の手続き

<ステップ3>会社から渡すもの

それぞれの手続きは細かい内容や提出期限などがあるため、事前に「退職手続きマニュアル」を作成しておくことをおすすめします。マニュアルがあれば、手続き漏れを無くし提出期限内にしっかりと届け出をすることができます。

また、退職からの回収し忘れや会社からの渡し忘れを防ぐこともできます。届出用紙は、雇用保険被保険者離職証明書以外のものはインターネットでダウンロードができるので、有効活用して手続きを迅速に進めましょう。

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