人事評価改善等助成金って何?支給要件と申請に関する3つの注意点とは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
人事画像

平成29年4月から始まった「人事評価改善等助成金」は最大で130万円の助成金を受給できるということもあり、利用を検討されている事業主の方もいらっしゃるでしょう。

この助成金を受給するためには、「生産性をアップさせる」ことや「離職率を低下させる」などの必要がありますが、具体的にどのようにすればいいのか悩むところではないでしょうか。

そこでここでは、人事評価改善等助成金の支給要件や支給対象事業主にはどのような定めがあるのか、また具体的な改善方法や注意点などについて詳しく説明していきます。

  1.人事評価改善等助成金って何?詳細とまとめてみた

1人事評価改善等助成金

人事評価改善等助成金とは、人事評価制度を整備したり、従業員にとって分かりやすい賃金制度を構築していくことで生産性アップや離職率の低下などに取り組んだ企業に支給されるものです。

具体的にいうと、正規従業員数を増加させ安定した雇用を作り出し、能力のある正規従業員を適性に評価して賃金アップさせるということになります。

【助成金額】

この助成金は、2段階に分けて助成金が支給されることになります。

  • 第1段階 制度整備助成:50万円
    制度の内容を検討し導入した時点で支給されます。
  • 第2段階 目標達成助成:80万円
    導入した制度を実施して目標を達成した時点で支給されます。

制度を整備した段階で50万円、達成で80万円と2段階に分けられているのが特徴です。また、第2段階の方がより多額の助成金を支給することによって、目標達成まで取り組んだ企業をより高く評価するという国の姿勢がうかがえます。

2. 人事評価改善等助成金の支給要件や支給対象事業主とは

人事評価改善等助成金には、「制度整備助成」と「目標達成助成」の2つの助成があります。それぞれの助成金を受給するのに必要な「支給要件」や「支給対象事業主」について説明します。

 2−1.制度整備助成の支給要件

 ①人事評価制度等整備計画を作成する

「人事評価制度整備計画」を作成した上で、事業所の管轄の労働局に提出します。 提出期限は、「人事評価制度実施日の6ヶ月~1ヶ月前の日の前日まで」と決められています。

 ②人事評価制度等整備計画を実施する

人事評価制度を整備して、正規従業員に対して実施します。

 2−2.目標達成助成の支給要件

  •  人事評価等を実施した日の翌日から1年後「生産性要件」を満たしている
    生産性要件とは、助成金の申請を行う直前の会計年度の生産性がその年度の3年前と比べて6%の伸びがあることをいいます。
  •  人事評価制度などを実施した月の前月に正規従業員に支払った給与よりも、制度実施から1年度に支払った給与が2%以上増加している。
  • 人事評価制度を実施した日の翌日から1年間における離職率が、計画書を提出する前の1年間における離職率に比べて低下している。目標となる数値は以下の通りです。
雇用保険被保険者数 1~300人 301人以上
離職率低下目標 現状維持 1%以上低下

2−3. 人事評価改善等助成金の支給対象事業主

「制度整備助成」と「目標達成助成」それぞれの支給対象となる事業主の条件は、次のとおりです。

【制度整備助成の支給対象となる事業主】

  • 雇用保険適用事業所の事業主である
  • 労働局で認可された人事評価制度等整備計画に従って人事評価制度等を整備し実施した
  • これまでに「人事評価改善等助成金」の制度整備助成を受給したことがある場合、最後の支給決定日の翌日から3年間が経過している
  • これまでに「職場定着支援助成金」の制度導入助成を受給したことがある場合、最後の支給決定日の翌日から3年間が経過している
  • これまでに「職場定着支援助成金」の制度整備助成を受給したことがある場合、最後の支給決定日の翌日から5年間が経過している

【目標達成助成の支給対象となる事業主】

  • 人事評価改善等助成金の制度整備助成を支給された事業主である
  • 制度整備助成で実施した人事評価制度等を継続して実施している
  • 「生産性要件(*1)」を満たしている
  • 離職率低下目標数値を達成している
  • 正規雇用従業員の給与が2%以上増加している

(*1)生産性要件とは
助成金申請を行う直前の会計年度での生産性が、3年前と比べて6%以上の伸びがあること

3. 具体的にはどう改善すればいいか

2人事評価改善等助成金

人事評価改善等助成金を受給するためには、必要書類を準備した上で申請することになりますが、「提出する人事評価制度が次の8つの要件を満たしているか」が助成金を受給できるかどうかの大事なポイントとなります。

具体的な改善方法は、この8つのポイントに則った方法をとることが大事です。

  • 労働組合または労働者の過半数を代表する者との合意がある
    人事評価改善等助成金の受給のために人事評価制度を取り入れる場合は、役員などが勝手に決定してはいけません。必ず、労働組合または労働者の過半数を代表する者との合意を得なければなりません。
  • 人事評価の基準や対象となる労働者が明確であり、その旨を労働者に開示している
    例えば「○○部の従業員において、△△ができれば××円給与を上げます。」といったように、対象となる労働者や評価の基準を明確にします。
  • 評価は年に1度以上行う
    せっかく人事評価制度を設けたので、定期的に評価を行うようにします。少なくても年に1度、理想を言えば年に2回以上行えると、労働者は「自分の努力を見てくれている」と実感できるのでモチベーションがアップします。
    賞与を年に2回支給している企業であれば、その支給月に合わせて評価を行うのもいいでしょう。
  • 人事評価制度に基づいた評定と、賃金の額や変動の幅・割合との関係が明確に定められている
    等級別に求められるスキルの一覧表を作成し、「これができれば9級に昇格して賃金が○○円になる」「次はこれができれば8級に昇格し賃金が△△円になる」といったように、一目で分かる「給与テーブル」を作成します。
  • 賃金表を定めている
    賃金表は④の「給与テーブル」と似ていますが、基本的には「給与形態(月給・時給)、対象人数、等級、世帯形成、標準年数、昇給レンジ、役職」などが記載されている表をいいます。
  • ②・③について労働者に開示している
    人事評価制度の評価の対象となる労働者や評価基準について、また年に1回以上の評価が行われることについて労働者に開示します。
  • 人事評価制度を実施した前月とその1年後の同月を比較して、賃金の額が2%以上増加する見込みがある
    この項目につきましては、次の「モデルケース」で具体的な数字で説明します。
  • 人事評価制度を実施した前月とその1年後の同月を比較して、賃金の総額を2%増加させることについて、①の労働組合などと合意がある
    人事評価制度を取り入れることについて労働組合などの合意を得るだけでなく、2%以上の給与アップの見込みについても報告して合意を得ることが必要です。

3−1.モデルケース1

人事評価改善等助成金を受給するためには、実行する人事評価制度が8つの要件を満たしている必要があります。その中の⑦の「人事評価制度を実施した前月とその1年後の同月を比較して、賃金の額が2%以上増加する見込みがある」という項目について具体的な数字を用いて説明します。

従業員Aの初任給が20万円と仮定すると、2017年7月に20万円の給与は、翌年の2018年7月には2%以上アップしている必要があります。20万円×2%=4,000円になります。従業員Aが同じ職場で同じ業務を行った場合、初任給20万円は1年後に最低でも204,000円になっている必要があります。

*金額に含まれるのは基本給や諸手当で、時間外手当や休日手当は除きます。

この例のように、新入社員の初任給の月給ベースで月4,000円アップという結果を見ると、それ程の負担増には感じられないかもしれません。

しかしこれが、例えば年収600万円の従業員の場合、2%の給与上昇で年間12万円のプラスになります。これが10人で120万円、20人で240万円・・・となると、助成金を受給してもその額をすぐに消化してしまうことになります。

企業の規模が大きくなる程、給与にかかる経費も大きくなります。

よって、この人事評価改善等助成金は、もちろん助成金を受給することを目的としてもいいのですが、企業の将来を見据えたしっかりとした人事評価制度を構築することを真の目的とすることが大切です。

4. 人事評価改善等助成金の申請に関する3つの注意点

人事評価改善等助成金の申請を行う際には注意すべき点が3つあります。

4−1. 他の助成金を受けている場合は原則受給できない

助成金の支給対象となる制度導入に対し、他の助成金等を受給している場合は、原則として人事評価改善等助成金を受給することができません。他の助成金等の支給申請をしている場合は、どちらかを選ぶことになります。

4−2. 不正受給は厳禁

不正な行為によって助成金を受給し場合、または受給しようとした場合、助成金は不支給になるか支給が取り消されることになります。

すでに受給してしまっている場合は、助成金の全部または一部を返還しなければなりません。その際、年5%の利息が加算されます。

4−3.関係書類は5年間保管

人事評価改善等助成金の申請には多くの書類を提出する必要がありますが、他にも訓練等が実施されているかの確認や、賃金や経費の支払いなどについて原本を確認することが求められることがあります。

また、助成金を受給した事業主は国の会計検査の対象となることもありますので、求められた際は協力的な態度で臨むことが大事です。関係書類は5年間大切に保管しておきましょう。

5.まとめ

人事評価改善等助成金に取り組むと、事業主にとっては130万円の助成金が支給されるだけでなく、企業の生産性もアップし離職率も低下するなど数々のメリットがあります。

一方、従業員にとっても能力が適正に評価されればモチベーションがアップする上に、給与も2%以上上昇するなどのメリットがあります。

しかし、賃金アップ分を助成金で全てまかなえるというわけではありませんので、助成金を受給することだけを目的とせずに、企業の将来を見据えた取り組みを続けていくことが大切だといえます。

SNSでもご購読できます。

© Copyright 2017 起業サポートオフィス. All rights reserved.