就業規則の作成方法を5つのポイントから分かりやすく解説

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
会議画像

会社の法律「就業規則」は整備されていますか?

組織にはルールが必要です。ルールを作るのは誰でしょうか? 従業員ではありません。これは経営者の仕事です。

今回は就業規則の作成方法を分かりやすく解説致します!

 1.(はじめに)ケーススタディ

あなたは社長です。このところ、古株の従業員Aの横暴が目に余ります。

連日、2~3時間は平気で遅刻してきて、ちょっと会社に顔を出したかと思うとすぐに姿が見えなくなります。机には書類が積み上げられたまま。外廻りをしているならまだしも、なんの仕事をしているのか、周りの部下、スタッフは誰も知りません。たまにいたと思うと、新人を怒鳴りつけて泣かせています。

創業期を一緒に頑張った仲間ですし、大目に見てきましたがさすがにあなたも我慢がならなくなりました。ある日、あなたはついにAと喧嘩し、「首だ!」と叫んでしまいました。翌日からAは出社しなくなりましたが、2週間後に弁護士名で内容証明が届き、「解雇無効」とのことで復職請求と「精神的苦痛にかかる損害賠償」請求とが記載されていました。

 2. 就業規則とは

唐突ですが、「日本」という国に関してどんな感想をお持ちでしょうか。安心して住めるいい国だという感想も多いでしょう。ですが、なぜそうなのでしょうか。様々な原因がありますが、法律がきちんと整備され、それに基づいた行政機関が機能しているのはその大きな理由です。

企業も同じです。従業員を公平に統治しようと思えば、まずきちんとしたルールの存在が必要なのです。ルールのないところに秩序は生まれません。世には様々な人がいて、その価値観も多様です。同じ職場で一緒に働く従業員も同様です。

社長の理念だけで、多様な従業員を束ねられているうちはまだいいでしょう。しかし、組織が大きくなってきますと、運営の明確なルールなくして会社は動きません。人間関係も一定のものではあり得ません。

日本の法律が民事・刑事・行政等の多岐にわたっているのと同様、就業規則も、就業に関するあらゆる分野にまたがっています。冒頭のケーススタディは、会社の統治を失った悲劇です。ですが、きちんとした就業規則を作っていれば、どうしたらよいか、そこから正解を読み取れるはずなのです。

従業員には服務規律があり、それを守らなかったときにどのような処分を下されるか、そういったことを、就業規則に書いていなければなりません。

 2−1.作成義務

労働基準法第89条により、「常時10人以上の労働者を使用する」場合、その使用者は就業規則を作成し、行政官庁に届け出ることになっています。行政官庁とは、所轄の労働基準監督署です。

大事なことですが、「作成義務」と「届出義務」と、義務が二つありますのでご注意ください。10人以上の会社の場合、作って届け出て、そこでようやく労働基準法違反の状態でなくなります。また、しばしば世間で誤解をされるのですが、「提出」された就業規則について、労働基準監督署はその内容を「審査」はしません。

提出されたからといって、その内容が行政のお墨付きを得たわけではありません。提出した就業規則の内容に、労働基準法等に触れる実態がある場合、行政官庁がその変更を命じることのできる旨の規程が、労働基準法第92条にあります。

 2−2.作成の費用等

就業規則については、労働基準監督署に行けばモデル就業規則がたくさん置いてあります。Webでも入手できます。それらを参考にして、経営者自身が作れば費用は掛かりません。

社会保険労務士など、専門家に依頼しますと、費用は30万円程度掛かります。顧問契約込みなら、サービスしてもらえるでしょう。会社のことをよく知ってもらわないと、専門家といっても就業規則は作れません。頼むのであれば、顧問契約まで含んでお願いするのがお勧めです。そこまでの関係を求めないのなら、自分で作りましょう。

 3. 就業規則の作成方法を5つのポイントから解説

経営者が自ら就業規則を作る場合のアドバイスです。基本的には、従業員が10人以上いる会社で問題になります。「10人」は企業単位ではなく、事業場単位、すなわち仕事場ごとの単位です。また、正社員・パート・アルバイトを問いません。

ただ、10人いない会社にとって関係ないわけではありません。10人いない会社にルールがないわけではないからです。小さい会社でも、面接のときに話せる「就業条件」が必ずあります。10人未満の会社でも、さらに大きくなったときのことを考えて、就業規則を作っておくメリットはあります。

 3-1.考え方について

就業規則を作る前に、まずは考え方をしっかり確立しておきましょう。「法律で求められているから作る」ものではありますが、だからといってモデル規則をそのまま転用した、会社の思想と実態がまったく描かれない就業規則は役に立ちません。

ありがちな、危険な考え方があります。

  • 就業規則によって、従業員を管理してサボれないようにしよう
  • 就業規則で法の抜け道をルール化しよう

具体的な危険例を挙げますと、「時間外労働は週20時間以上も強制し、時間外の割増賃金は支払わないようにする」などというものがあります。ですが、どう考えたところで世間の常識から大きく離れたものにはできません。法の縛りがあるからです。

「法の縛りがおかしい」と感じる点もあるでしょうが、法改正でどんどん労働者の権利が強くなっていったのにはそれ相応の理由があります。経営者の常識が間違っているのではないかと、まずは考えてみることをお勧めします。

 3-2.就業規則はいつ役に立つ?

法律上の義務はともかく、実際に目的がなく就業規則を作ることなどできないという方もいらっしゃるでしょう。従業員に、おかしな「権利」だけ与える結果にならないかという心配も、あって不思議ではありません。

繰り返しになりますが、就業規則は「会社のルール」です。従業員が守るべき義務を記載したものです。経営者が、「守るべきルールに従っていない」、または、「守るべきルールをルールブックに記載していない」というのであれば、従業員の権利を侵害しているとしても当然です。

いっぽう、ルールをきちんと記載している就業規則があるならば、会社におけるこの「法律」を駆使し、冒頭に挙げたケーススタディにも対処できるはずなのです。会社が明確なルールに基づいて、従業員に罰則を与えたり、手続きを踏んで解雇をしたというのであれば、仮に裁判になったとしても恐れる必要はありません。

3-3.賃金規程は作らなくていい?

経営者になる前にお勤めされていた方は、会社にはさまざまな規程があったことを覚えていらっしゃるでしょう。その中に「賃金規程」という名称のものもあったのではないでしょうか。

「賃金規程」は作らなくてよいのでしょうか?

答としては、「『賃金規程』という名称の規程を別途作る必要はない」です。ですが、就業規則に「賃金」の規定は必要です。「賃金規程」という名称の規程も、法律上は「就業規則」の一部です。法律上の「就業規則」の一部を独立させた「賃金規程」についても、労働基準法上は就業規則とみなされます。

3-4.就業規則で何を決める?

就業規則に記載する内容には「絶対的記載事項」と「相対的記載事項」とに分けられます。わかりやすくいえば、「書かなければいけない内容」と「ルールを決めなくてもよいが、決めた場合は書かなければならない内容」です。

前者は「就業時間」「就業日」「休憩」「賃金」「退職」「解雇」などに関する事項です。特に、「解雇」については細かくその理由を書いておく必要が、法律論的にも、実務的にも求められます。

契約というのは本来当事者が対等であるもので、雇用契約についても同様のはずです。ですが、日本においては労働者保護の観点から、解雇の自由度は大幅に制限されています。

ただ、冒頭のケーススタディでもそうなのですが、きちんと理由があり、手続きを踏まえれば解雇もきちんとできるのです。社長の単なる意思表示によるものではなく、客観的に解雇すべき事由があるなら、解雇しなければならないときもあります。記載事項は、モデル規則にはすべて掲載されていて、絶対事項か相対事項かの区分も記されています。なにを書き、なにを書かなくてもよいかは、特に迷うことはないはずです。

気を付けたいのは、制度として確立していないルールについてです。

「制度として決めた」場合は定めなければならない内容として「退職金」「賞与」などがあります。ですが、「退職金や賞与を支払うことがあるかもしれない」という程度にとどまるのであれば、まだ「制度」として確立しているものとはいえません。

「業績がよかったら、賞与をわずかながら支払うことも検討している」程度の決めごとしかないのなら、あえて就業規則に記載する必要はありません。

 3-5.従業員の意見は?

法律上、従業員の意見を聴かなければならないのは、就業規則の「届出」をする場合です。従業員代表の「意見書」を添付することが様式として定められていますが、この「意見書」の内容は就業規則の内容には一切影響しません。あくまでも、就業規則は経営者が作るものです。

もちろん、従業員の意見を聴いたうえで内容を修正することに不都合があるわけではありません。ただし、経営者が定めるという、就業規則の性質自体を忘れないようにしましょう。

4.その他

就業規則が完成しましたら、従業員に公開することも忘れてはいけません。中には、あえて公開しない人もみられますが、そのような就業規則は法律上の要件を満たしているとはいえません。ルールは公開され、認知されてこそのものです。堂々と公開してください。

5. まとめ

いかがですか?モデル規則に触れられていない、就業規則の実像についてご案内しました。

職場のルールを作り、管理するのは経営者の責務です。きちんとした規則を作って組織を運営しましょう。

SNSでもご購読できます。

© Copyright 2017 起業サポートオフィス. All rights reserved.