どちらがお得?社保と国保の違いを簡単まとめ【起業や転職する方必見】

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勤めている会社を退職し、起業したり転職したりする方にとって大切な手続きの1つに、健康保険があります。会社に勤めていた時は社会保険に加入していても、退職となるとその後どうするかを考えなくてはいけません。

通常、退職後は国民健康保険に加入するか、退職前の社会保険を任意継続するかどちらかを選ぶことになります。しかし、選び方によって負担する保険料に大きな差が出ることも多々あります。

ここでは、社会保険と国民健康保険の違いや、具体的なケースを用いて国民健康保険と任意継続とではどちらがどの位お得なのかを説明します。

 1.まずは社保と国保の違いから

社会保険と国民健康保険の大きな違いは、まず運営母体が違うということが挙げられます。社会保険の運営を行っているのは協会けんぽや各社会保険組合で、国民健康保険の運営を行っているのは市区町村役場になります。

他にも、保険料の算出方法や、「扶養」の取り扱い、加入条件など、様々な点において違いがあります。ではさっそく、それぞれの違いについて詳しくみていきましょう。

 1−1. 保険料の算出方法の違い

社会保険と国民健康保険とでは、保険料の算出方法に違いがあります。

【社会保険】

社会保険の健康保険料は、年齢や現在支給されている給与額を元に算出されます。都道府県ごとに保険料額表が決められており、それを元に算出します。社会保険の健康保険料は、「標準報酬月額×保険料率」で算出されます。

算出された健康保険料のうち、企業が半分負担してくれるので、実際に負担する額は保険料の半分になります。この保険料の「労使折半」が社会保険の特徴といえます。

 【国民健康保険】

国民健康保険の保険料の算出方法は市区町村によって異なるため、一般的な計算方法を説明します。国民健康保険は、加入者の前年の所得や世帯人数などによって算出されます。保険料は、所得割・均等割・平均割の合計で算出され、この金額は市区町村によって異なりますが、54万円が上限になっています。

また、国民健康保険加入者で40歳から64歳までの方は、介護保険料の支払いもあります。計算方法は国民健康保険料と同じく所得割・均等割・平均割の合計額です。

国民健康保険料は、前年の所得を元に算出されるため、企業を退職した後に起業して、安定収入が得られないうちに社会保険から国民健康保険へ切り替えると、保険料の負担が大きくなる可能性があります。

 1−2. 扶養の扱いの違い

社会保険と国民健康保険の大きな違いの1つに、「扶養家族」の扱い方が挙げられます。扶養家族とは、会社員の夫に収入面で支えられている専業主婦やその子供をいい、社会保険においては扶養家族の考え方が適用されていますが、国民健康保険では扶養家族という考え方がありません。

【社会保険】

社会保険の扶養家族に入るのは、被保険者の妻、子供、父母などで、同居していてもしていなくても対象となります。また、収入面でも条件があり、年収が130万円未満であり、かつ被保険者の年収の半分未満である必要があります。

社会保険の場合、扶養家族が何人であっても、被保険者が負担する保険料は変わりません。つまり、被保険者1名分の保険料を負担するだけで、扶養家族の人数分の保険証を交付してもらうことができます。

 【国民健康保険】

一方、国民健康保険では、扶養という考え方がないので、加入する人数分の保険料を納めなければなりません。このため、社会保険に比べて国民健康保険は保険料の負担が大きいと言われています。

国民健康保険料は、前年の年収と世帯人数によって算出されるため、必然的に加入人数が多いほど保険料が高くなります。

 1−3. 加入条件の違い

日本の保険制度においては、国民皆保険制度が導入されていることもあり、国民は必ず社会保険や国民健康保険に加入しなければなりません。しかし、どちらに加入するかを自由に選べるわけではなく、社会保険と国民健康保険では、それぞれ加入条件が定められています。

 【社会保険】

企業に勤めている方が社会保険に加入するためには、次の2つの条件を満たす必要があります。

  • 勤務先が社会保険の適用事業所になっている
  • 勤務先に常時雇用されている

まず、大前提として勤めている企業が社会保険の適用事業所である必要があります。その上で、その企業に常時雇用されている必要がありますが、この「常時雇用」とは具体的に次のように定められています。

正社員であればもちろん常時雇用にあたり、パートや派遣社員などの非正規雇用労働者の場合は、1週間の労働時間と1ヶ月の労働日数が正社員の4分の3以上であれば常時雇用に該当します。

しかし、平成28年10月より、社会保険の適用範囲が拡大され、短時間労働者でも、次の加入条件を満たせば社会保険に加入できるようになりました。

  • 勤務先の従業員数が501人以上
  • 1年以上の雇用が見込まれている
  • 1週間の労働時間数が20時間以上
  • 賃金月額が88,000円以上(年収106万円以上)
  • 学生ではなく、70歳(75歳)未満である

 【国民健康保険】

国民健康保険の加入条件は、次に挙げる2つに該当する以外の人が強制加入となります。

  • ・現在企業に勤めていて、すでに社会保険に加入している人。または、世帯主が社会保険に加入していて、その扶養に入っている家族
  • ・現在生活保護を受けている人

この2つに該当する以外の人は、強制的に国民健康保険へ加入することになります。

 2.起業や転職する方必見!こんな場合はどちらがお得!?

企業に勤めていた方が退職し、社会保険から国民健康保険に切り替わると、扶養家族の取り扱い上、保険料が大きく跳ね上がってしまうことがあります。

そこで検討したいのが、国民健康保険に加入せず、「任意継続」をするという選択肢です。任意継続とは、企業に勤めていた間に加入していた社会保険に、退職した後も最大で2年間その社会保険を継続できるという制度です。

では、具体的なモデルケースを使って、国民健康保険に加入する場合と任意継続する場合とではどちらがお得なのか、確認していきましょう。

 2−1.社会保険加入者だったが個人事業を行う場合

<ケース1>

  • 東京都文京区在住
  • 父親(35歳)会社員時代は年収380万円(月収25万円、賞与80万円)
  • 母親(30歳)パートで年収100万円
  • 子供(7歳)
  • 子供(1歳)

【これまで負担していた健康保険料】

退職前は月収25万円だったので、これを東京都の標準報酬月額表にあてはめると、1ヶ月の健康保険料は11,892円となるため、年間では142,704円になります。これに、賞与分の健康保険料39,640円をプラスすると、年間に負担していた健康保険料は182,344円だったことが分かります。

 【国民健康保険に加入する場合】

家族4人分の国民健康保険は、年額348,684円(月額29,057円)になります。よって、社会保険から国民健康保険に切り替えることにより、166,340円も増加してしまうことになります。

 【任意継続する場合】

退職後、国民健康保険に加入せず任意継続する場合に負担する健康保険料は、1ヶ月の保険料が23,784円なので、年間で285,408円になります。退職後、任意継続することによって、保険料が103,064円増加することになります。

【結論】

退職後、国民健康保険に加入する場合の年間保険料は348,684円であるのに対し、任意継続する場合は285,408円となるので、任意継続したほうが63,276円保険料を安くすることができます。

やはり、国民健康保険に加入すると加入人数が多くなる分、保険料の負担が大きくなるようです。

 2−2. 社会保険加入者だったが転職する場合

<ケース2>

  • 東京都文京区在住
  • 夫(30歳)会社員時代は年収380万円(月収25万円、賞与80万円)
  • 妻(25歳)パートで年収100万円

退職後、すでに転職先が決まっており、次の企業での社会保険に加入することができれば、その企業での手続きに則ることになります。

しかし、転職先が社会保険適用事業所でなかったり、退職後転職先が決まっていないという場合には、ケース1と同様に、国民健康保険か任意継続の手続きをする必要があります。

 【これまで負担していた健康保険料】

ケース1と年収が同じなので、負担していた健康保険料は、年間182,344円でした。

 【国民健康保険に加入する場合】

夫婦2人分の国民健康保険料は、年額265,884円(月額22,157円)になります。社会保険から国民健康保険に切り替えることにより、保険料が83,540円増加することになります。

 【任意継続する場合】

一方、任意継続する場合は、やはりケース1と同様に、年額285,408円となります。退職前と比べて保険料が103,064円も増加することになります。

【結論】

ケース2の場合は、退職後、任意継続せずに国民健康保険に切り替える方が、健康保険料を19,524円安くすることができます。

「国民健康保険料は高い」と思われがちですが、このケースの場合加入人数が2人だけなので、それほど高額な保険料とはならず、任意継続よりも安く抑えることができたといえます。

  3.まとめ

社会保険と国民健康保険とでは、保険料の算出方法や、「扶養」の取り扱い、加入条件などに大きな違いがあります。ざっくりいうと、企業に勤めている方は社会保険で、社会保険に加入していない方が国民健康保険に加入することになります。

企業を退職して起業したり転職したりする際は、加入していた社会保険から国民健康保険に切り替えたり任意継続したりと、手続きが必要になります。国民健康保険を選ぶか任意継続を選ぶのかは、負担する保険料を見積もって、よりお得な保険料の方を選ぶようにしましょう。

ただ、任意継続を選ぶ場合は、最大でも2年間しか適用できないことと、退職後20日以内に手続きをする必要がある点に注意しましょう。

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