非常勤役員の社会保険加入条件とは 気になる保険料の節約術!

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会社の経費の中でも、社会保険料の負担に悩む方は少なくありません。「会社が負担する社会保険料を少しでも抑えたい!」そう考える経営者の方のために、社会保険料の節約術をご紹介します。

やることはただ一つだけ!

親族の常勤役員を非常勤役員に変更するだけです。では、どのような方法なのか、さっそく見てみましょう。

 1.非常勤役員とは

会社役員画像

常勤役員と非常勤役員の違いについて、詳しく分からない方も少なくありません。それもそのはずで、実際に明確な違いが定義されているわけではありません。一般的には次に挙げるような実際の状況を元にして、常勤役員か非常勤役員かを決めています。

  • 経営に関わっている度合
  • 役員としての業務執行権を保持しているか
  • 役員会議への出席の有無
  • 報酬額

これからご説明する社会保険に関しても、非常勤役員の定義はあいまいで、統一された基準がありません。年金事務所によって判断基準が異なるばかりでなく、担当者によっても判断が分かれることもあります。

よって、非常勤役員に該当するかどうかは、上に揚げた4つの実情を年金事務所に直接説明して確認をとることが望ましいです。

 2.非常勤役員の社会保険料を削減することは可能!?

会社の経費を削減するために、社長自身の節税や社会保険料対策だけでは、限界があると言わざるを得ません。実際、社会保険料の負担は大きく、手取り収入への影響も計り知れません。そこで、手取り収入を増やすために提案させていただきたいのが、「常勤役員となっている親族を非常勤役員に変更する」という方法です。

例えば、会社設立後、ご夫婦で共に役員になって経営されているということはよくあるケースです。この場合、妻を非常勤役員に変更するだけで会社が負担する社会保険料額を軽減させることができます。もちろん、ご夫婦の場合に限らず、常勤役員であった人を非常勤役員に変更するだけで、社会保険料の負担を軽減することができます。

では、なぜ非常勤役員にすることで社会保険料の負担を軽減することができるのか、その理由をご説明します。「常勤役員」の場合、報酬の金額に関係なく(多くても少なくても)社会保険の被保険者に該当してしまいます。たとえ相談役・顧問・監査役などの月々の報酬額が高くない方でも常勤役員であれば、社会保険の被保険者に該当します。

つまり、常勤役員である以上、社会保険料を会社が負担しなければならないため、費用を削減するためには、非常勤役員に変更する必要があるということです。常勤役員から非常勤役員に変更して、次に挙げる条件をクリアすれば、被保険者から外すことができます。

  • 1日の出社時間を正社員の3/4未満にする
  • 1ヶ月あたりの出社を正社員の3/4未満にする

この勤務時間・日数にすると、非常勤役員として扱うことができます。その際、どんなに高額な役員報酬を得ることになったとしても、上の2つの条件を満たしていれば、被保険者にはなりません。

つまり、非常勤役員であるかどうかは、報酬の額によって決まるわけではなく、1日あたりの出社時間数や1ヶ月の出社日数によって決まるといえます。

 3.常勤役員から非常勤役員への手続きは?

常勤役員から非常勤役員への変更手続きに必要なものはどのようなものがあるのでしょうか?

【非常勤役員になることについての登記の必要があるか】

常勤役員から非常勤役員への手続きで、まず考えるのは「登記の必要があるか」ということです。会社法において、一般的な株式会社の役員とは、「代表取締役」「取締役」「監査役」の3つになります。これらの役職に就く人に変更があったときは、登記をする必要があります。

一方、会社によっては「会長」「専務」「常務」という肩書が設けられていますが、これらは会社法に基づいたものではありません。定款や社内規則などで会社によって任意に定められているものなので、登記は必要とされていません。

そして、「常勤」や「非常勤」ということも登記の必要がないとされており、変更した場合ももちろん登記をする必要がありません。

【臨時株主総会の開催は必要か?】

役員の肩書変更となれば、臨時株主総会を開催する必要があるのかどうかについても、悩まれるかもしれません。答えを先に申し上げますと、株主総会の開催は必要ありません。

常勤や非常勤かについては登記事項ではない上に、株主総会で決議をとる必要がある事項でもありません。次に開催される取締役会で報告するという形で十分です。

【実際に取るべき手続きは、「社会保険資格喪失届」を提出すること】

実際に必要となる手続きは、社会保険事務所に「社会保険資格喪失届」を提出することです。提出期限は、資格喪失日から5日以内に提出しなければなりません。これが受理されると、社会保険の資格を喪失したことになり、社会保険料を負担する必要がなくなります。

  4.モデルケースを使って社会保険料比較

では、実際にモデルケースを使って、社会保険料がどの位安くなるのか見ていきましょう。

仮に、夫を社長とし、妻を常勤役員とします。社会保険料の負担を少なくするために、妻を非常勤役員に変更します。非常勤役員になれば、社会保険の資格を喪失することになり、これ以降は「国民健康保険」や「国民年金」に加入することになります。

しかしこのままでは、また新たに国民健康保険料や国民年金を支払うことになり、保険料を削減することができません。そこで、夫の被扶養者になるために、妻の非常勤役員としての報酬を130万円未満にします。(60歳以上の場合は180万円未満になりますので、注意が必要です。)

これで妻は健康保険上では「被扶養者」となり、国民年金では「第3号被保険者」になるため、保険料の負担が大幅に削減されます。ここで気を付けておきたいのが、「扶養」についての基準が社会保険面と税金面とで異なるということです。

【社会保険面での扶養の基準】

社会保険上での扶養となる条件として、次のような収入基準が設けられています。

◇60歳未満の場合

  • 月額:108,000円以下
  • 年収:130万円未満
  • 被保険者の収入の1/2未満であること

◇60歳以上の場合

  • 月額:150,000円以下
  • 年収:180万円未満
  • 被保険者の収入の1/2未満であること

【税金面での扶養の基準】

給与収入が103万円以下であれば扶養に入ることができます。以上のことを踏まえて、妻を常勤役員から非常勤役員に変更し、年収を103万円以下に設定すれば、社会保険料と税金のどちらも支払わずにすむことになります。では、次に具体的な数字を用いてどの位の節約が可能になるのか計算していきます。

夫・妻共に40歳以上で、子供はいないという条件で計算します。

役職名 役員報酬(月額)
社長 60万円
常勤役員 20万円

ここから、妻を非常勤役員にして、月額の役員報酬を8.5万円に減額します。

そして、その減額した分を社長の役員報酬にプラスします。

役職名 役員報酬(月額)
社長 71.5万円
非常勤役員 8.5万円

これらの条件の変更前と後で、負担する社会保険料額を算出します。

変更前 変更後
夫の社会保険料(年額) 2,079,240円 2,309,612円
妻の社会保険料(年額) 704,832円 0円
2人分の社会保険料合計額(年額) 2,784,072円 2,309,612円
節約可能額 474,460円

この通り、年間で474,460円の節約が可能となります。

夫の収入が増えれば所得税や住民税も高くなりますが、妻に税金がかからなくなりますので、大きな削減効果が期待できます。常勤役員から非常勤役員への変更をするだけで、手取り額を増やすことができます。

今回の例では、妻のみを非常勤役員へ変えた場合をご紹介しましたが、親などの他の親族が常勤役員になっている場合でも、同じような方法で削減することができます。その際、60歳以上の場合は扶養になる条件が異なりますので、注意が必要です。

 5. まとめ

常勤役員と非常勤役員との違いは、はっきりと定義されているわけではないため、判断が難しいとされています。一般的には、経営に関わっている度合や業務執行権の有無などで総合的に判断されています。常勤役員は、報酬額に関係なく、社会保険の被保険者に該当してしまいます。

一方、非常勤役員は被保険者には該当せず、社会保険料を納める必要がありません。そこで、会社の経費削減のために、親族で常勤役員になっている人を非常勤役員に変えて、社会保険料を節約する方法が有効とされています。

モデルケースでもご紹介した通り、大きな削減効果が期待できます。この方法を用いて、上手に削減対策をとっていきましょう。

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