年末調整を楽しみにしているサラリーマン諸氏は多いのではないでしょうか。いつもよりちょっぴりでも、給料の手取りが増えるのはうれしいものです。(残念ながら、逆に減ってしまう人もいますが。)この年末調整、毎年のことなのに書類の書き方がイマイチ分からなくて、人事の人にも聞きにくいなあ。と思っている人が多いのではないでしょうか。
書類の中で使われている言葉が堅苦しいですが、面倒がらずにひとつひとつ片付けて行けば思ったよりも簡単に出来ます。
目次
1.年末調整とは・・
所得税は、その年の1月1日から12月31日までの課税所得金額に税率を掛けて算出します。1年が経過して初めて所得税額は決まるのです。ですから、サラリーマンが毎月のお給料から引かれている所得税は、実は概算で引かれています。
扶養家族が何人いて、今月の給料がこの位の人は、大体この位所得税を徴収しておきましょう。という税額表(月額表)が有ります。1年のうちには扶養家族に変動(異動)がある人もいますし、収入が大幅に増えた人も、その逆の人もいます。月額表に基づいて概算で源泉徴収した所得税を、1年の終わりに精算するのが年末調整です。
2. 扶養控除等(異動)申告書・・・一般に「マル扶」の用紙と言われます。
2−1.記載方法の流れ
毎年10月の半ば過ぎに会社から貰う「扶養控除等(異動)申告書」は、翌年の分です。今年扶養家族に異動があった人は、その都度会社に報告することになっています。しかしなかなか徹底しないことも有り、給与計算の担当者は、翌年分の「扶養控除等(異動)申告書」を参考に、今年異動があった人には、確認をします。「扶養控除等(異動)申告書」にある家族の状況によって扶養控除を行います。
「扶養控除等(異動)申告書」は住民税の扶養状況の申告書も兼ねていますので、下の方に16歳未満の扶養親族を記入する欄が有ります。
①上部にあなたの氏名、個人番号、住所などを記入する欄が有ります。平成28年からマイナンバー(個人番号)の記入が義務化されています。もれなく記入しましょう。会社によっては、あらかじめ氏名などを印字したものを渡されることも有ります。
②中央部の一番大きい欄が家族について記入する欄です。Aの控除対象配偶者欄への記入間違いが多いようです。奥様が働いている人は、奥様の年収に気を付けてください。
③Bの控除対象扶養親族は、16歳以上の扶養親族を記入します。16歳未満の扶養親族は、一番下の住民税に関する事項欄に記入します。
④Cの欄は、あなたについての状況を書く欄です。②、③、④についての詳しい説明は、裏面右側にあります。迷った時は裏面右側を読んでください。
⑤Dは親御さんや子供さんが複数いて、所得税を節税するために、夫婦で一人ずつを扶養しているようなときに使用します。
2−2.注意点など
「扶養控除等(異動)申告書」には自分の住所氏名などのほか、家族の状況について記入してゆきます。扶養家族のいない独身者もこの用紙を提出することで、税額表の「甲欄」から導き出された所得税額が適用されます。この用紙を提出していない人は、年末調整を受けることができません。
ダブルワークなどで2カ所以上から給与を貰っている人はどちらか一方にしか提出することができません。会社から用紙を貰ったから提出しなくてはいけない、と思っている人が多いようです。平成28年から適用されるマイナンバー制度は、この辺の所もきっちり管理されます。
3.保険料控除申告兼給与所得者の配偶者特別控除申告書・・・「マル保」の用紙です。
3−1.記載方法の流れ
9月中旬以降から各保険会社から、保険料控除証明書が送られて来ます。記載内容を確認して、大事に保管しておいて下さい。
会社から用紙が配布されたら順次記入し、必要書類を添付して提出します。会社によっては去年提出した扶養控除(異動)申告書も添付され、今年の異動内容を赤字で書き加えるように要求するところも有ります。
3−2.注意点など
生命保険料控除申告書でよくある記入間違いは、証明額を記入してしまう間違いです。各保険会社から送られてくる控除証明書にも「この金額を記入してください。」と明記しています。大きい方の金額と覚えておくと間違わなくていいでしょう。
控除額の計算式も難しくは有りませんので、自分で計算してみてください。会社の担当者の人も必ず検算はしますから、ここはひとつチャレンジしてみてください。(給与計算ソフトでしたら、自動的に計算します。)
3−3. 給与所得者の配偶者特別控除
保険料控除申告書の右側3分の1ほどが配偶者特別控除申告書になっています。配偶者特別控除の対象となる人は、配偶者の給与収入が103万円を超え、141万円未満の場合です。収入金額が多くなる程、配偶者特別控除額がだんだん減額していきます。
ただし、あなたの合計所得が1,000万円(給与収入の場合、1,231万円)を超えている場合や、配偶者が青色事業専従者である場合は、配偶者特別控除は適用できません。
3−4. 社会保険料控除
社会保険料控除は途中入社の人や、配偶者の国民年金保険料を支払っているような場合に記入します。途中入社の人は、入社前に勤めていた会社の源泉徴収票があれば、それに記載されています。任意継続保険料など自分で支払った社会保険料がある人は、その金額を記入します。その年中に実際に支払った金額が所得控除の対象になります。給与から天引きされている金額は記入しません。
3−5. 小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済は、独立行政法人中小企業基盤機構と結んだ共済契約の掛金です。個人事業主であるなど、一定の条件を満たす人が加入できる共済制度で、経営者の退職金制度のようなものです。一般の社員はまず該当しません。
その他に、確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金又は個人型年金加入者掛金、地方公共団体が実施する心身障害者扶養共済制度の掛金がこれに当たります。全額所得控除の対象になります。
3−6. 生命保険料控除
生命保険料は「一般の生命保険料」と「介護医療保険料」、「個人年金保険料」の3つに区分されています。そのうち「一般の生命保険料」と「個人年金保険料」には、契約日によって旧制度と新制度に分かれています。平成24年1月1日以降に契約したものが新制度になります。
下から3分の1位のところにある計算式Ⅰ、計算式Ⅱを参照してください。それぞれに計算式と上限があり、旧制度分と新制度分を合計した金額にもさらに上限が設けられています。9月末位から各保険会社から送られてくる「保険料控除証明書」にきちんと区分が記入されていますので、それに従って記入します。
3−7. 地震保険料控除
地震保険料控除は、居住用家屋や生活用動産にかけた地震保険料と、旧長期損害保険料について所得控除が行われます。地震保険料にも旧長期損害保険料にも計算式と上限が設けられています。
4.マイナンバーの記載方法
年末調整の用紙は2枚ありますが、マイナンバーは扶養控除等(異動)申告書にのみ記入するようになっています。もうすでに会社では社員のマイナンバーは把握しているはずですが、記入欄には正しい番号を記入します。源泉徴収票にもこのマイナンバーは記載され、税と社会保障の公平・公正を保つために利用されます。
5.まとめ
年末調整はサラリーマンにとっての確定申告です。節税のためにも生命保険料などの申告漏れが無いようにしましょう。生命保険等の保険料控除額には上限が有りますので、共働きの方などは控除額証明書を夫婦で上手に振り分けて、賢く節税しましょう。
なお、医療費控除や住宅ローン控除の対象になる人は、確定申告をするとさらに所得税が軽減され、節税につながります。