会社の健康診断は義務?実施しないとどうなる?診断項目等の詳細まとめ

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経営者の皆さん、従業員に定期的な健康診断を実施していますか?

健康診断は、従業員がたとえ1人であっても受診させなければならないと「労働安全衛生法」で定められています。従業員の健康状態を把握しておくことは会社にとっても重要なことで、もし健康診断を行っていない場合は罰金などが科せられることがあります。

ここでは、会社が従業員に実施すべき健康診断について、その種類や検査項目、費用負担、罰則や結果報告などについてご説明していきます。

 1.健康診断の種類

会社が従業員に対して実施すべき健康診断には、まず「一般健康診断」と「特殊健康診断」があります。ここでは一般健康診断について詳しくご説明していきますが、特殊健康診断についても少し触れておきます。

1-1.特殊健康診断

特殊という名の付くとおり、特定の危険な業務に従事している従業員に対して行われる健康診断です。

具体的な業務内容は次のとおりです。

  • 有害業務に従事する者
  • 有害業務に従事していたもの
  • 歯に悪影響を与える業務に従事する者(歯科医師による)

また、特殊健康診断の例として次のものが挙げられます。

  • 粉じん作業に従事する場合のじん肺検査
  • 有機溶剤中毒予防健康診断
  • 特定化学物質健康診断
  • 高気圧作業健康診断
  • 石綿健康診断

1-2.一般健康診断

一般健康診断には、雇い入れ時健康診断、定期健康診断、特定業務従事者、海外派遣労働者の健康診断、給食労働者の検便の5つがありますので、それぞれについてご説明していきます。

 【雇い入れ時健康診断】

会社は、「常時使用する労働者を雇い入れる際は、医師による健康診断を受けさせなければならない」と労働安全衛生法によって定められています。「常時使用する労働者」とは正社員だけではなく、パートやアルバイトでも次の2つの条件を満たしている場合には健康診断を受けさせなければいけません。

  •  期間の定めのない契約の労働者、または期間の定めのある労働者で1年以上使用されることが予定されているもの、および更新により1年以上使用されている労働者
  •  週の労働時間数がその事業場で同種の業務に従事している通常の労働者の週の所定労働時間数の3/4以上である労働者

 【定期健康診断】

1年以内ごとに1度、会社は従業員に定期健康診断を受けさせることが義務付けられています。定期健康診断の対象者は、雇い入れ時の健康診断の対象者と同じで「常時使用する労働者」となりますので、正社員をはじめ一定の要件を満たすパートやアルバイトも含まれます。

定期健康診断は、協会けんぽからお知らせが送付され、申請書を送って指定の医療機関に指定された日時に従業員が受診しに行くというのが一般的です。

 【特定業務従事者の健康診断】

深夜の業務、有害な環境で働く従業員に対し、配置換え時及び6ヶ月以内ごとに1回、定期的に一般項目について健康診断を行わなければなりません。胸部エックス線検査や喀痰検査など、1年以内ごとに1回の検査で行えば良いものもあります。

 【海外派遣労働者の健康診断】

従業員を6ヶ月以上海外に派遣する場合や、6ヶ月以上派遣した従業員を帰国させる場合に実施される健康診断です。健康診断の項目は定期健診の際の項目だけでなく、医師が必要と認める腹部画像検査や血液中の尿酸量の検査なども行います。

 【給食労働者の検便】

会社に付属する食堂や炊事場で給食の業務に従事する従業員に対して、雇い入れ時や配置換えの時に検便を受けさせる義務があります。

2. 会社の健康診断は義務?

従業員に対して健康診断を実施することは、法律で定められた会社の義務であり、会社は従業員の健康や身体の安全を管理する義務があります。

体調不良の従業員を長時間労働させたり過酷な業務に就かせた結果、事故や病気で労働することができなくなってしまった場合、会社は安全配慮義務を怠ったとして厳しい対応を迫られます。

健康診断を受けさせることは、従業員の健康や安全を守るためだけでなく、会社自身を守っていく上でとても重要なものです。

2−1.費用はどうなる?

従業員に健康診断を受けさせるのは会社の義務ではありますが、気になるのは費用を会社と従業員のどちらが負担するのかです。行政の通達では、「事業者に健康診断の実施を義務付けている以上、健康診断の費用は当然事業者が負担すべきもの」と解釈されています。

よって、健康診断の費用は会社側が負担することになり、この費用には医療機関へ移動する際の交通費も含まれます。また、健康診断を受けている間の賃金について支払うべきかどうか迷うところですが、健康診断の種類によって異なるとされています。

雇い入れ時の健康診断や定期健康診断は、業務に関連して行われるものではないので賃金を支払う必要はありませんが、特定健康診断などの場合は業務に深く関係しているため、賃金を支払う必要があります。

2−2.派遣の場合は派遣元?派遣先?

健康診断を受けさせる従業員は「常時使用する労働者」ですが、派遣社員の場合はどうなるのでしょうか?

派遣社員に健康診断を受けさせる義務があるのは派遣元である派遣会社です。派遣社員と雇用関係を結んでいる派遣会社は、安全衛生・健康確保のために、一定の基準を満たしている派遣社員に健康診断を実施しなければなりません。

ただし、派遣会社によって健康診断を受けさせる社員の基準を設定しており、例えば「1年以上継続して就業した派遣社員」、「就業初年は6ヶ月以上、週30時間以上従事した派遣社員」などと定めされています。

3. 健康診断を実施しない場合、会社に罰則は?

会社には従業員に健康診断を受けさせる義務があり、もし実施されていない場合は、法律違反として労働基準監督署から勧告や指導が入ることがあり、さらに50万円以下の罰金という刑事罰が科せられることもあります。

一方で、従業員が「業務が忙しく健康診断を受けるひまがない。」「検査が怖いから受けたくない。」などといった理由から健康診断を拒否するケースもあります。従業員が健康診断を未受診のまま放置しておいた結果、その従業員に健康上の被害が生じた場合、会社は「安全配慮義務違反の責任」を負ってしまう可能性があります。

そのようなことにならないように、健康診断を拒否する従業員に対して、次のような方法を検討してみましょう。

  • 労働者が受診しやすい病院にする
  • 受診時間について有給休暇の取得を勧める
  • 業務配分を調整する

また、従業員には医師を選ぶことが認められているので、自分のかかりつけ医院で健康診断を受診した結果を会社に提出させることも可能です。

4.各診断の項目まとめ

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健康診断で行われる項目には具体的にどのようなものがあるのかまとめてみました。

  • 往歴や業務歴の調査
  • 自覚症状および他覚症状の有無
  • 身長、体重、腹囲、視力、聴力
  • 胸部エックス線
  • 血圧測定
  • 貧血検査
  • 肝機能検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 尿検査
  • 心電図検査

雇い入れ時健康診断、定期健康診断、特定業務従事者の健康診断(ただし6ヶ月ごとに1回)はいずれも同様の検査項目になります。

海外派遣労働者の健康診断の場合は、定期健康診断の項目にプラスして、次の5つのうち医師が必要と認めるものを追加して検査します。

  • 腹部画像検査
  • 血中尿酸量検査
  • B型肝炎ウィルス抗体検査
  • ABO式・RH式血液型検査(派遣前のみ)
  • 糞便塗抹検査(帰国時のみ)

5.健康診断の報告等

従業員に健康診断を受診させるという義務を果たせばそれで終了というわけではありません。常時50人以上の従業員を使用している会社は、健康診断の結果を労働基準監督署へ報告するという義務があります。

また、健康診断の結果は「健康診断個人票」を作成し、5年間保存しておくことも義務付けられています。そして重要なことは、健康診断の結果から従業員の健康状態を把握し、業務に反映させていくことです。

従業員の体調不良を把握していたにも関わらず、業務内容の変更や配置換えなどを行わない場合、安全配慮義務違反の責任を負う可能性もあります。

6.まとめ

会社は従業員に健康診断を受けさせる義務があることが労働安全衛生法に定められています。また、会社には従業員の健康や安全面に対して責任があることから、費用は会社が負担して行われるべきとされています。

従業員の健康管理をすることは会社にとってもメリットのあることで、人材の配置などにうまく活用することができます。健康診断は費用のかかることではありますが、従業員の健康管理は未来への投資とも捉えることができ、これからの会社の発展のために欠かせないものとなるでしょう。

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