就業規則の周知義務違反まとめ!罰則はある?効力は?スッキリ解決!

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就業規則を作成し労働基準監督署に届け出をしたらそれで終わりと思っている方はいませんか?

実は、就業規則は作成・届出と同じくらい「従業員への周知」が重要です。就業規則は会社のルールを定めたもので、労使共に守らなければならないものですが、内容が分からないと守りたくてもどのように守ればいいのか分かりません。

さらに、労使間トラブルが発生し労働審判や裁判に発展した際、従業員にきちんと周知していなかった場合は無効とされることがあるため、周知方法については一定の決まりがあります。

そこで、周知する方法や、周知しなかった場合の罰則、就業規則を変更した場合の周知などについてまとめてみました。

 1.就業規則の周知義務とは

就業規則は、会社に勤務する従業員に向けて社内においての規則をまとめ明示したもので、賃金や労働時間、休日など従業員が入社した時から退社する時までに必要な決まりごとが定められています。

就業規則を作成・変更した際は労働基準監督署へ届け出る必要がありますが、それで手続きが終了するわけではありません。届出をした後は、従業員に対して就業規則の内容を周知させるという義務があります。

つまり、従業員が就業規則の内容を必要に応じて確認できるよう、いつでも見ることができる状態にしておく義務があるということです。就業規則の内容を従業員全員に浸透させて、従業員それぞれがルールを守るという意識の高い職場にすることが目標といえます。

就業規則1

1−1.就業規則の周知方法

法律上周知として認められる方法には次の3つがあります。

  • 事業所の見やすい場所へ掲示したり、備え付ける
  • 書面にして従業員に交付する
  • パソコンなどにデジタルデータとして記録し、従業員がいつでも閲覧できるようにする

1つ目の掲示・備え付けは、休憩スペースや更衣室、誰でも使用できるロッカーなどに並べておくことが多いです。

2つ目の従業員への交付については、コピーを渡すことが多いですが、外部への持ち出しも可能となってしまうことから、抵抗を感じる経営者の方もいます。しかし、ルールを書面で交付するとより浸透させることができるので、効果的ではあります。

3つ目のパソコンで閲覧する場合は、やはり外部への持ち出し対策として、あくまでも閲覧だけに留めて印刷に一定の規制をかける会社もあります。ただし、いつでも確認できるようにしておくために、パスワードを設定したり閲覧制限をかけるのはNGです。

また、中小企業においては上の2つの方法が多くとられ、ネットワーク環境が整っている大企業では3つ目の方法が多くとられている傾向にあります。いずれにしても、「周知すること」が目的なので会社の環境や状況に合わせて適切な方法を選びましょう。

1−2.これは周知になりません!ダメなモデルケース

次のようなケースは周知義務を満たしているとはいえませんので注意が必要です。

<ケース1>一部の従業員にのみ周知

例えば、管理職以上の職員にのみ周知している場合や、「就業規則を見せてください」と申し出た従業員だけに周知している場合など、一部の従業員にのみ周知している場合は周知義務を満たしているとはいえません。

<ケース2>経営者の机の中などにしまいこんである場合

有給休暇や割増賃金のことなど、できれば従業員に知られたくないという思いから、就業規則を机の中や鍵付きの戸棚などにしまいこんでしまう経営者もいます。しかし、就業規則には従業員に守ってもらいたい事柄も盛り込まれているため、労使双方のために全ての従業員に周知すべきです。

<ケース3>口頭での説明

就業規則の内容を口頭で説明したのみではいけません。いつでも確認できることが大事ですので、必ず書面で明示しましょう。

2.  就業規則を社員に周知していない!?周知義務違反まとめ

就業規則を従業員に周知していないという場合、気になるのが罰則です。

周知義務違反には何か罰則があるのでしょうか?また、その場合就業規則の効力はどうなるのでしょうか?

過去の判例なども用いてご説明していきます。

2−1.就業規則の周知義務違反には罰則はある?

就業規則は会社側が一方的に作成するものであるため、労働者を保護するために作成・変更の際には一定の法的手続きが定められており、違反した場合は罰則が科されます。

就業規則には「作成義務違反」や「届出義務違反」などがありますが、「周知義務違反」の場合は、会社は労働基準監督署から是正勧告や指導などの行政処分を受けることになり、それでも違反を繰り返すようであれば「30万円以下の罰金」が科されることもあります(労基法120条)。

せっかく就業規則を作成しても、周知義務を果たしていないと罰則を受ける可能性がありますので、いずれかの方法でしっかりと周知することが大切です。

2−2.周知されていない場合の就業規則の効力は!?

就業規則の作成においては「従業員側の意見聴取」「届出」「周知」の手続きが必要になりますが、これらの手続きを行わなかった場合、就業規則の効力はどうなってしまうのでしょうか?

労働法第7条では、就業規則を周知することは必要とされているものの、意見聴取や届出については触れられていません。

つまり、従業員側の意見聴取をしていない場合や労働基準監督署への届出を行っていない場合には無効にはなりませんが、従業員への周知をしていない場合は無効になる、と解釈されています。

2−2−1.判例を使って解説

では具体的に、就業規則が周知されていると認められなかった判例を2件ご紹介します。

【中部カラー事件(平成19年10月30日)】

退職金の変更に伴って就業規則の変更を行ったため、朝礼で変更について説明を行い、退職金の計算式が示されました。従業員に向けてきちんと説明している上、計算式も示したので周知義務を満たしているようにも見えますが、実は「周知がなされていないため、就業規則の変更は認めない」という判決が出ました。

理由としては、口頭による説明のみだと変更内容を正確に理解することができず、退職金の計算式についても、一度書面を示しただけで理解することは大変難しいためです。このように、口頭での説明や書面を少し見せただけでは従業員に対して周知義務を果たしているとは認めらないことが分かります。

従業員が正確に理解できるような形で公表する必要があります。

【フジ興産事件(平成15年10月10日)】

「上司に対して反抗的な態度をとった」として懲戒解雇された従業員A。実は、その懲戒解雇は直前に施行された新就業規則の懲戒条項に基づくもので、労働基準監督署に届けられたのが当該解雇の直前であり、従業員に周知されていませんでした。

そこで従業員Aは「周知されていない就業規則による解雇は無効だ」として解雇決定に関わった取締役など3名に損害賠償を請求しました。最高裁は、懲戒処分を行うには就業規則を従業員に周知させていることが必要であるとし、この点を認定しなかった大阪高裁の判断は違法として破棄差し戻しをしました。

つまり、会社が従業員を懲戒解雇する場合は就業規則に懲戒の種類と事由を定めておく必要があり、さらに就業規則が法的効力を持つためには、従業員への周知が不可欠であるということになります。

3. 就業規則を変更した際、周知はいる?

就業規則2

会社を経営していく上で就業規則を変更する必要が出てくることがあります。変更した際も、新規作成した時と同じように従業員側の意見聴取をし労働基準監督署に届けた後、従業員に周知する義務があります。

変更した就業規則を周知する方法は、従業員の見やすい場所に掲示・備え付けたり、書面にして交付したり、パソコンでいつでも閲覧できるようにする方法などをとります。そして、変更についての周知義務を怠ると労働基準監督署の是正勧告や指導を受けることになり、それでも改善されない場合は罰金30万円が科されることもあります。

変更した場合も、従業員がいつでも見られるような周知方法をとることが必要です。

4.就業規則の周知に関する注意点

就業規則を作成・変更した際は必ず従業員に周知することが必要です。すでに触れましたが、周知義務を満たしていない就業規則は無効になってしまいます。

周知する方法は前出の3つの方法などから自社に合ったものを選び、従業員が適宜内容を確認できるような状況にしておくことが求められます。

5.まとめ

就業規則を従業員に周知することは、就業規則に効力を持たせるために必要不可欠なことですが、有給休暇の取得があまり進められていない会社や、残業・休日労働が慢性化している会社などでは、従業員に周知しづらいかもしれません。

しかし、就業規則には有給休暇や時間外労働についての項目だけでなく、会社が従業員に周知させたい服務規程や解雇規定なども記載されます。従業員の権利を守りつつ会社が求めていることも明らかにすることができるものですので労使共にいつでも確認できる状況を作ることが求められます。

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