社会に出てサラリーマン生活を経験して自信を付けた時、独立を考える人が居るのは自然な成り行きでしょう。そんな独立を考えている人が知りたいのは、会社設立の方法でしょうか。株式会社については大体のイメージが掴めているかと思います。
最近増えてきた合同会社はどんな形態で、株式会社とはどんな違いがあるのかを知ったうえで、方針を決めても遅くはないように思います。自分の考える起業に適しているのは、果たして株式会社でしょうか、合同会社でしょうか。
目次
1. 株式会社 合同会社の定義
合同会社は2005年(平成17年)に成立した会社法により、新しく設けられた会社形態です。(施行は2006年5月1日からです。)設立が比較的容易なのと、法人も社員となれるところから、企業間での共同事業や産学連携などにも多く採用されています。近年では認知度も高まり、年々その数を増やしています。今後は個人事業でも設立件数の増加が見込まれる会社形態です。
合同会社はアメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルとして作られたので、日本版LLCとも呼ばれています。
2.株式会社と合同会社の7つの違い
2−1.有限責任社員
株式会社も合同会社も出資者は全員「有限責任社員」です。出資した範囲以上の責任を問われることはありません。
合同会社が株式会社と大きく違う所は、株式会社は出資者と経営者は分かれていますが、合同会社は出資者と経営者が同一人であるところです。出資者は1人でも設立できますし、法人も出資者=社員になれます。企業間の共同事業や、産学連携などに参入しやすい会社形態となっています。
合同会社の出資者は全員「社員」であり取締役です。(この場合の「社員」は通常考える「社員=従業員」とは意味合いが違います。後述します。)このため事業に対する意思決定が早くでき、機動性に富んだ経営が出来ます。
2−2.株式の存在
会社形態の名前の通り、株式会社には株式が存在します。株式の公開は任意ですが、合同会社には株式は存在しません。合同会社では資本金の出資者を「社員」と言いますが、先ほど述べましたように、一般の社員=従業員ではなく、株式会社の株主と同じような意味合いです。
合同会社は資本金の出資者=「社員」ですが、出資者(「社員」)が全員業務にあたる必要は無く、定款で業務を執行する社員を決めることができます。
2−3.代表者の呼び名
では、社長の呼び方はどうなるでしょうか。株式会社では皆さんよくご存じの通り、「代表取締役 社長」や、「取締役 社長」などの呼び方が一般的です。名刺にもそのように印刷しています。
しかし合同会社の代表者は、「代表社員」となります。社内で社長と呼ぶのは問題ありませんが、名刺には「代表社員」と印刷することになります。名称の上で少々重みにかけると感じる人もいるかもしれません。
2−4.任期
役員の任期に関しても、株式会社と合同会社に違いが有ります。
株式会社の取り締まりの任期は、株式の譲渡制限がある場合は最大で10年、株式の譲渡制限が無い場合は、2年になっています。余談ですが、この株式の譲渡制限をしない時は、2年ごとに役員変更登録を行わないとならなくなり、登録免許税や司法書士に対する報酬の支払いが発生します。
一方、合同会社の社員(出資者)に任期は有りません。業務執行社員が退社した場合には、2週間以内に変更の登記をしなくてはいけませんが、それ以外の社員の場合は、変更登記の手続きは必要ありません。
2−5.決算の公表有無
株式会社には決算の広告義務が有り、定款の定めに従って決算内容を公表します。しかし合同会社には決算公表の義務がなく、監査機関の設置や、各社員の議決権、利益の分配についても自由度が高く設定されています。
決算の公表の義務が無いためか、一般の認知度が低いためか、社会的信用度は株式会社の方が高いようです。
2−6.総会
取締役や監査役の選任や解任、組織・運営・管理などに関する重要事項を決定する時、株式会社では株主総会を開きます。通常決算日から3カ月以内に開かれる定時株主総会と、臨時に開かれる株主総会が有ります。
合同会社の場合の重要事項決定機関は、社員(出資者)総会になります。決定事項の内容によっては定款を変更し、法務局に届け出ることになります。その際に決定事項が記載された「社員の同意書」を添付します。
2−7.設立時の費用
合同会社設立のメリットは、設立時の費用が抑えられることにあります。合同会社では定款認定料が不要なことに加え、登録免許税が60,000円ですので、何もかも自分で手続きをすれば、60,000円で会社設立の届け出が出来ます。株式会社設立の場合は、定款認定料が52,000円、登録免許税が150,000円で、計252,000円かかります。
起業時の経費を安く抑えたい時は、検討してみる価値がありそうです。
3.合同会社に向いている業種とモデルケース
会社設立時に合同会社を選択することが多い業種は、介護サービス業、建設業、コンサルタント業、飲食業、美容・エステ業、不動産賃貸業などです。会社運営の自由さで合同会社を選ぶ場合もありますし、介護サービス業、建設業などは許認可の関係で法人格が必要なため、設立費用の安い合同会社を選ぶ場合もあります。
不動産賃貸業においては、主に相続税対策のために不動産所有型の法人として、合同会社を設立することが有ります。飲食業で料理人の育成や、生産者との結びつきを進めて、「食と農をつなぐ、地方を元気にする、日本が豊かになる」ことを目的とした仲間が集まり、活動の拠点として合同会社を設立している例も有ります。
4.まとめ
合同会社は出資者=経営者ですから、出資者たちが話し合って自由に事業の方向を決めることが出来ます。逆に考えると、「船頭多くして舟山に登る」ようなことになりかねませんので、少人数での運営が向いているようです。
さらに合同会社では、出資額にこだわることなく、技術やノウハウ、アイデアを、話し合いの上で適正に評価できますので、社員一人一人に満足度の高い働き方を提供出来るメリットもあります。合同会社は設立費用も安く済みますので、小さく生んで大きく育てる、ではありませんが、事業が拡大した時に株式会社へ移行することも視野に入れてみるのもいいでしょう。