就業規則を設けなかった場合の8つのデメリットが話題

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
就業規則デメリット画像

就業規則は、会社を適性に経営していくために大切なものです。とはいえ「大切なもの」とは分かっていても何がどう大切なのかいまいちよく分からない方もいらっしゃるでしょう。

しかし、もし就業規則がなければどのようなデメリットがあるのか、経営者として会社を経営していく上では知っておきたいところです。ここでは、就業規則を設けなかった場合に考えられる8つのデメリットや就業規則を作成し届ける際に注意すべき点についてご説明します。

1.就業規則とは

「就業規則」は、労働についての基本的な条件や会社で守るべきルールが記載されているものです。使用者と労働者で共通のルールを認識することができるので、無用な労務トラブルを防止できたり、労働者が安心して業務を行うことができるため、結果的に会社としての生産性を向上させることにつながります。

また一方で「雇用契約書」というものがありますが、こちらは会社と労働者個人ごとの個別契約となります。就業規則と雇用契約書は共に大事なものですが、就業規則は雇用契約書の内容を補完する役割があり、雇用契約書の代わりとしても用いられることもある重要なものです。

なお、就業規則は規則類の総称で、会社によっては就業規則の他に賃金規定・退職金規定・育児休業規定などが別に設けられている場合もあります。

【作成義務のある会社】

労働基準法により、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は就業規則を作成し労働基準監督署に届け出る義務があります。パートやアルバイト用の就業規則が必要であれば別途作成しなければなりません。

また、常時使用する労働者が10人未満であっても、就業規則を作成してはいけないということはなく、むしろ労働者に安心感を与え労務トラブルを防止するためにも、就業規則は作成することが望ましいといえます。

2.就業規則を設けなかった場合のデメリット

イメージ1

すでにご説明しましたように、就業規則を設けると労務トラブルの防止に役立ったり労働者が安心感をもって仕事をできるようなったりするため、会社にとって大きなメリットがあります。

しかし、もし就業規則を設けなかったら、会社に対してどのような不利益・デメリットがあるのでしょうか?

そこで、就業規則を設けなかった場合のデメリットを考えるという側面から、就業規則が会社にとってどれほど重要なのかを考えてみましょう。

 2−1.労働基準法に違反してしまう

労働基準法では「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し労働基準監督署に届け出る」と定められています。この10人以上とは正社員だけでなくパートやアルバイトも含み、合計で10人以上の労働者がいる場合は作成・届出が義務付けられています。

もし10人以上の労働者がいるにもかかわらず就業規則がないということになると、法律違反になってしまいます。 さらに、労働基準監督署では定期的に調査を行っており、就業規則の作成・届出がきちんとなされているかチェックしています。

もし就業規則が作成されていないと、会社に対して是正勧告が行われたり、30万円以下の罰金が科せられることがあります。また、労働者が10人未満であれば就業規則の作成・届出義務はありませんが、これから会社を発展させていくうえでも大事なものですので、労働者数に関わらず作成することが望ましいといえます。

 2−2.会社が自由に有給休暇を与えられない

労働者は勤務開始日から半年がたてば有給休暇が与えられることが多く、勤続年数が長い人で最大で20日の有給休暇が与えられることになります。有給休暇は労働者の都合に合わせて消化することになりますが、全ての労働者が自由に有給休暇を取得してしまうと業務を効率的に進めることが難しくなります。

しかし、そのような場合を想定して、就業規則に「有給休暇の計画的付与」について規定しておけば、有給休暇の5日を除いた日数について会社が計画的に有給休暇を消化させることができます。

会社の生産性を低下させないためにも、有給休暇の計画的付与について就業規則にしっかりと明記しておきましょう。

 2−3.欠勤に対して対応ができない

労働者が欠勤を続けているまたは繰り返しているようなとき、会社としては労働者に対して何らかの対処をする必要があります。 賃金の面からみると、労働者が欠勤を繰り返しているような場合、会社は減給などの処分をすることができます。

しかし、もし就業規則が作成されていなく賃金に関する規定が定められていない場合は、処分の根拠となるものがないので減給することができず、欠勤を繰り返している労働者にも賃金を払わざるを得ない状況になります。

また、体調不良や精神的な不安定さから長期にわたって欠勤している労働者がいる場合、就業規則が作成されていないと休業や退職についての定めがないことになり、労働者と会社で退職をめぐりトラブルになる可能性があります。

 2−4.退職申出日から退職日までが短くなってしまう

一般的に正社員の場合は、退職の申し出は遅くても退職希望日の1ヶ月前にするという認識がありますが、実は法律上は退職の申し出をしてから2週間後には退職をすることができるとされています。

しかし、実際は引き継ぎを行う必要もあり、やはり退職日まで1ヶ月はほしいところです。そこで、就業規則に「退職の申し出は遅くても退職希望日の1ヶ月前までに」ということを盛り込んでおけば、会社ルールとして成り立たせることができます。

就業規則がないと法律での2週間が適用されてしまうため、十分な引き継ぎや人材の補充などが間に合わない可能性があります。

 2−5.問題行動のある労働者に対応できない

職務がきわめて怠慢であったり、労働環境に悪影響を及ぼす言動をとる労働者に対しては、会社は懲戒処分をとらざるを得ないこともあります。懲戒処分には減給や懲戒解雇などがありますが、これらの処分は就業規則に明記しておかなければ処分を下すことができません。

どのようなケースでどのような処分が下るのかを具体的に就業規則に列挙し、その項目に該当したものでなければ適正な処分として認められません。もし就業規則を作成していないまま懲戒解雇などを行ってしまうと、根拠となるものがないため不当解雇として裁判に発展する可能性があります。

 2−6.助成金が利用できない

助成金は返済する必要がないまとまった資金を受給できるので、経営者にとっては大変魅力的なものです。しかし、助成金を利用する場合は必ずといっていい程就業規則が必要になります。

助成金は労働者にとって有利になる新しい制度を導入する場合に支給されるものが多く、その新しい制度を導入した際は就業規則に記載する必要が出てきます。よって、助成金を利用する際には就業規則が必須となり、作成していないとなれば助成金を活用することができなくなってしまいます。

助成金を利用して効率よく会社を発展させていくためにも、就業規則は必要になります。

 2−7.労働者が不安になってしまう

就業規則は会社のルールを定めたものですが、ルールがないと不利になるのは会社だけではありません。労働者にとっても、労働の対価としてもらう給与についてしっかりと定められていないと不安になります。

労働基準法では、労働者と会社は対等な立場と定められていますが、実際はどうしても会社の方が強く労働者は弱い立場と感じてしまいがちです。しかし、給与に関して自分の権利が明確に就業規則に定められていれば、余計な不安を感じることなく業務に専念することができます。

 2−8.労働裁判になった際不利になる

会社と労働者の間でトラブルになると裁判に発展することがあります。就業規則を作成してあれば、会社と労働者のルールを明確に示すことができますが、もし作成していない場合は第三者に対して会社の規範を示すことができないため、裁判でかなり不利になります。

例えば労働者の懲戒解雇は就業規則に定められていて初めて実行することができます。根拠となるルールがない処分はトラブルのもとにしかなりません。就業規則は、労働者と会社双方を守るためにとても大切なものといえます。

3.就業規則の作成、届け出における注意点

イメージ2

就業規則を作成し届け出る際には注意すべきことがあります。

【就業規則は事業所単位で作成・届出】

就業規則は、原則として事業所ごとに作成し、それぞれの所轄の労働基準監督署に届け出ます。ただし、一定の要件を満たせば本社で一括して届け出ることも可能です。

【労働者代表の意見書は「反対意見」でも可】

就業規則を届け出る際には労働者代表の意見書を添付する必要がありますが、就業規則の内容に対し反対意見が多数出ている場合でも、就業規則が法律に違反していな限りは原則的に受理されます。

【規定の適用範囲を明確にする】

就業規則は正社員を対象としたものとし、パートには附則として「パートタイマー就業規則」を設ける場合、本則の就業規則の方で「パートについては別途定める」という適用除外の文言を盛り込む必要があります。

もし盛り込まなかった場合、いくら附則で規定を定めても、本則がパートにも適用されることになるので注意が必要です。

【就業規則の内容を自社の実態に合わせる】

最近は、インターネットで就業規則の雛形を簡単に探すことができますし、労働基準監督署でも簡単なモデル就業規則を無料で手に入れることができます。

しかし、これらの雛形は最低限必要とされる事項については記載されていますが、会社のルールをきちんと定めるためには、自社の実態に合わせた内容を盛り込むことが大切です。内容が不十分な就業規則では、労働者と会社がトラブルになった際、何の役にも立たないという可能性があります。

【専門家の力を借りる】

就業規則は会社のルールであり、いざという時に会社をトラブルから守るための基盤となるものでなければなりません。そのような大切な就業規則を自社のみで作成することが難しい場合は、労働法などに詳しい弁護士や社会保険労務士などの専門家の力を借りるのも1つの方法です。

法律に関する知識のみならず、これまでの豊富な経験やノウハウは、自社の実情に合ったベストな就業規則を作成するために非常に有効です。

4.まとめ

就業規則を設けない場合は、問題行動のある労働者に適正に対応することができなかったり、仮に労働者とのトラブルが裁判に発展した場合に会社が不利になってしまうなど、会社にとって大きなデメリットがたくさんあることが分かりました。

また、会社にとって大変利用価値のある助成金は、就業規則が作成されていないと利用することができません。さらに、労働者側から見ても就業規則に給与や有給休暇などについてきちんと明記されていないと不安な気持ちになり、会社全体の生産性にも大きく影響してきます。

就業規則は、労働者にとっても会社にとっても大切なものです。自社に合った内容を盛り込んだ不備の無いものを作成し、労働者と会社でその内容を共有して有効活用していくことが大切です。

SNSでもご購読できます。

© Copyright 2017 起業サポートオフィス. All rights reserved.