雇用保険の加入条件と手続きを具体的に解説

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サラリーマンが会社を辞めようと思う時、生活の不安を抱えて職探しをしなくて良いように、失業保険が用意されています。一般に「失業保険」と呼ばれていますが、正式名称は雇用保険の「失業給付」です。

生活の不安から慌てて意に沿わない就職をし、転職を繰り返すことが無いようにとの思いから、この「失業給付」が作られています。サラリーマンの味方とでもいうべき雇用保険ですが、加入するのにはどんな条件をクリアすればいいのでしょうか?

1. 雇用保険とは

1−1.加入条件

まず最初に、会社が雇用保険の適用事業所にならないといけません。会社は、従業員を一人でも雇うと所轄の労働基準監督署やハローワークに「労働保険関係成立届」「雇用保険適用事業所設置届」を提出し、適用事業所となります。その上で従業員の「被保険者資格取得届」を提出します。

従業員で雇用保険の加入条件は、以下のようになります。

  1. 31日以上引き続き雇用されることが見込まれるものであること。
    具体的には、

    • 期間の定めがなく雇用される場合
    • 雇用期間が31日以上である場合
    • 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示が無い場合
    • 雇用契約に更新規定はないが、同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合
  2. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
    となっています。

1−2. 65歳以上は

平成29年1月1日から、65歳以上の労働者に対する雇用保険の取り扱いが変わりました。

今までは継続して雇用されていなければ、新しく就職した会社で雇用保険に入ることができませんでした。平成29年1月1日からは適用範囲が拡大されて、65歳以上の人が新しく就職した場合も、雇用保険の被保険者となることができます。(呼び名は、高年齢被保険者となります。)状況によって手続きは次のようになります。

  • 平成28年12月31日の時点で高年齢継続被保険者であった人が、それ以降も継続して雇用されている場合は、自動的に被保険者区分が変更されますので、届け出の必要は有りません。
  • 平成28年12月31日の時点で65歳以上の労働者を雇用していて、それ以降も引き続き雇用している場合は、平成29年1月1日から高年齢被保険者となりますので、平成29年3月31日までに、ハローワークに届け出が必要になります。
  • 平成29年1月1日以降に新しく65歳以上の人を雇用した場合は、雇用した日から高年齢被保険者となりますので、雇用した月の翌月10日までにハローワークへ届け出ます。

1−3.役員の扱い

役員は雇用されている労働者ではありませんので、雇用保険には入れません。雇用保険は労働保険の中の雇用保険と言う位置づけですので、雇用保険に限定して説明します。

代表取締役、取締役、監査役は原則として雇用保険の被保険者になれません。しかし、使用人兼務役員と言って、取締役部長とか取締役工場長など、労働者としての身分を有している人は、役員報酬部分と労働者としての賃金割合によって、被保険者となれる場合があります。この場合は、就業規則の適用が一般の労働者と同様にされていることが必要です。

1−4.パート・アルバイト・学生

パートやアルバイトは雇用保険に入れないと思っている人が多いようです。加入条件の項目をもう一度見てください。雇用保険に加入出来ないのは、31日以上の雇用が見込めない人、週の労働時間が20時間未満の人です。31日以上引き続き雇用される場合や、週に20時間以上働く人は雇用保険の被保険者になれます。

臨時のパートやアルバイトの場合で、最初31日以上の雇用が見込まれなかった人が、31日を超えて雇用された場合には、31日以上の雇用が見込まれた日から、雇用保険の対象者になります。

学生のアルバイトの場合は、夜間学生で上記の条件を満たしていれば、雇用保険の被保険者になれますが、昼間学生は対象外です。そもそも学業を中心とした生活をすれば、週20時間以上の労働に就くことは難しいはずです。

2. 雇用保険の手続き方法

2−1.申請方法

初めての就職の場合は、会社がハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出し、雇用保険に加入することになります。

記入に際しては、個人番号(マイナンバー)、被保険者番号(初めての就職の人はこの時に付与されます。「被保険者番号」は一生同じ番号を使います。)、事業所番号が必要になります。氏名、性別、生年月日、賃金、資格取得日、職種、週の所定労働時間、契約期間の定めなど必要事項を記入します。

今は書面をハローワークに持参しなくても、電子申請が用意されていますので、電子申請を利用すると手続きが効率化できます。

2−2. 期限などの注意点

「雇用保険被保険者資格取得届」は、資格取得年月日の属する翌月10日までに提出することになっています。賃金台帳や、労働者名簿、出勤簿(タイムカード)などの提示を求められる場合があります。届け出にマイナンバーを取り扱いますので、事業者は個人情報の取扱い及び利用上の注意を確認・同意する必要があります。

3. 初めて雇用した際の手順

事業主が初めて労働者を雇い入れることになった場合は、事業所を管轄するハローワークに、「雇用保険適用事業所設置届」「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。

届け出に際しては、法人番号(個人事業の場合は不要)、事業所の名称、所在地、電話番号、設置年月日、を記載します。この届出時に事業所番号が付与されます。事業所番号も廃業しない限り、同じ番号で労働保険が管理されていきます。

届け出は事業所を設置した日の翌日から起算して10日以内に行うこととなっています。営業許可証や、登記事項証明書など、記載事項を確認できる書類の提示を求められます。

4. まとめ

雇用保険は「失業給付」だけではありませんし、労働者だけのものでもありません。事業主にも求人の受理、人材の紹介、各種助成金が用意されています。とかく古い考えの経営者は、労働基準法の遵守や保険料負担を嫌って「社会保険」を敬遠しがちです。

しかし、社会保険の適用事業所であることで社会的信用も上がり、より良い人材を確保することも可能になります。相互扶助の観点から社会保険を見直してみると、違った見解が見えてくることも有ります。

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