簡易課税と原則課税の違いと分かりやすい判断基準とは

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毎日の買い物をするときに、お店によって価格の表示が外税だったり内税だったりで、価格の比較に困ることが良く有ります。個人の支出なら、困る、不便だ、くらいで済みますが、事業となると、きちんと把握して納税をしないといけません。

その税金の計算方法に簡易課税と原則課税の二通りの方法が有ります。どちらを選んだ方がやりやすいのか、節税になるのか、検討してみましょう。

1. 消費税に関して

消費税は、特定の物品やサービスに課税する個別間接税ではなく、消費全般に広く公平に負担を求める間接税です。消費税は生産や流通など、それぞれの段階で販売価格に上乗せされてかかりますが、最終的に税を負担するのは消費者です。

消費税の歴史を簡単に振り返ってみましょう。消費税は平成元年に導入され、最初の消費税率は3%でした。(ここだけの話ですが、税金は広く薄く徴収する方が重税感が薄れ、徴収しやすくなります。)導入当初はそれなりに反発もありましたが、次第に消費税の存在に慣れたころ、平成9年には地方消費税率を1%追加し、社会福祉の原資にするとの謳い文句でさらに1%を足し、消費税率は5%に上がりました。平成26年にさらに8%に増税され、「薄く徴収」はどこかに行ってしまいました。

今後更に10%に増税する時期(平成31年10月1日)をめぐって、議論が行われています。

2. 原則課税と簡易課税の違い

2−1. 原則課税とは

原則課税は、本則課税とも呼ばれます。いうなれば正式な消費税の計算方法です。売り上げ金額と共に「預かった」消費税額(預り消費税)から、仕入れ金額と共に「支払った」消費税額(仮払い消費税)を差し引いて計算する方法です。課税売上高が5億円を超えるかどうか、課税売上割合が95%以上であるかどうかで計算方法が変わってきます。

課税売上高が5億円以下で、課税売上割合が95%以上の時は、預り消費税から仮払い消費税を全額控除して求めます。

課税売上高が5億円を超えているか、課税売上割合が95%未満の時は、課税売上高に対応する仕入れ部分の消費税額を控除する形になります。これについての算出方法は、個別対応方式と、一括比例配分方式が有ります。

2−2. 簡易課税とは

中小事業者の事務負担を軽減するために、簡易課税制度が用意されています。簡易課税を適用できる中小事業者とは、課税基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出していることが条件になります。

課税基準期間とは、簡単に言えば2年前の会計年度になります。今年を課税期間とすると、前々年の課税売上高が5,000万円を超えていたかどうかが問われます。決算期を決めている事業者でしたら、2期前の決算期の売上です。

この簡易課税制度は、仕入れ控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合にするというものです。この一定割合のことをみなし仕入れ率と言います。事業の内容を6種類に分け、それぞれのみなし仕入れ率が決まっています。平成27年4月1日以降に開始する課税期間から改正が行われています。

  • 第一種事業(卸売業) 90%
  • 第二種事業(小売業) 80%
  • 第三種事業(製造業等) 70%
  • 第四種事業(その他の事業) 60%
    改正前は金融業・保険業が入っていました。
  • 第五種事業(サービス業等) 50%
    改正後は金融業・保険業が入りました。
    改正前は不動産業が入っていました。
  • 第六種事業(不動産業) 40%
    新たに設けられました。

3.簡易課税か原則課税か選択する判断基準

3−1.算出方法を比較

簡単に算出方法を比較してみましょう。

原則課税方式 (売上高×8%)-(仕入れ高×8%)=納税額

簡易課税方式 (売上高×8%)-(売上高×8%×みなし仕入率)

簡易課税を選択できる場合にどちらが節税になるかは、この計算式で概算を出してみると判断が付きやすいでしょう。また、設備投資などで高額の支払いが発生した時に、原則課税か簡易課税かで取り扱いが変わってきます。今後の事業計画も判断の基準となってきます。

3−2.仕入率との差異で比較

売上高が1,000万円の小売業とした場合で比較してみましょう。仕入れ金額を700万円とします。原則課税の場合、売上に係る預り消費税は、80万円です。仕入に係る仮払い消費税は56万円です。差し引き24万円が納税額になります。

簡易課税を届け出ている場合、みなし仕入れ率は80%ですので、1,000万円の80%の800万円が仕入れ金額とみなされ、800万円×8%の64万円が仕入れにかかる消費税とみなされます。売上高に対する消費税との差額は80万円-64万円となり、16万円が納税額になります。

この場合は、簡易課税を選択した方が、8万円節税できたことになります。仕入原価率にもよりますので、みなし仕入れ率との差異を考慮するといいでしょう。

3−3.特例にも注目

事業を続けていくと、機械の購入や店舗改装などの設備投資が必要になってくるときが有ります。そんな時はどうでしょうか。

設備投資に1,000万円かかったとして見てみましょう。売り上げが1,000万円上がり、仕入れに800万円、設備投資に1,000万円としてみます。売上に係る預り消費税は、80万円、仕入に係る仮払い消費税は56万円になります。設備投資の1,000万円に対しても80万円の消費税を支払っています。単純に計算して、56万円の還付が受けられることになります。

ただし、この消費税の還付は原則課税の事業者だけが対象となります。みなし仕入れとの二重の節税を防ぐために、平成28年4月1日以降の取引について「高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除等の特例」ができました。

4.簡易課税、原則課税の注意点

原則課税を選んだ方が節税になるのか、簡易課税を選んだ方が節税になるのかは、シミュレーションをして判断した方が良いでしょう。

簡易課税制度の適用を受けるには、その課税期間の前々年の課税売上が5,000万円以下であることが必要です。その上で、簡易課税制度の適用を受ける旨の「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出しておきます。この届出を行った事業者は、原則として2年間は原則課税に戻すことができません。大口の設備投資の予定がある時は、注意してください。

更に「高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除等の特例」により、高額特定資産等の仕入れを行った場合は、3年を経過するまで、簡易課税に戻すことはできません。

5.まとめ

最後に今年の1月1日から12月31日を課税期間の例として、納税義務の免除についての説明をしておきます。

この事業者免税点制度とは、今年の課税基準期間である2年前の課税売上金額が、1,000万円以下の事業者は今年の消費税について、納税義務が免除される制度です。しかし、今年の6月30日までの売上が1,000万円を超えた場合は、今年から課税業者となります。

また今年設立の事業者に対しては、基準期間が無いので、資本金で判断します。資本金が1,000万円未満の新設法人は、設立1期目と2期目に対して免税事業者となります。納税を免れるために売り上げを調整する人はまずいないとは思いますが、知っていることが節税につながることも有ります。

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