随時改定とは?定時改定との違いを分かりやすく解説!

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標準報酬月額は、前回の定時改定で決定したものが次の定時改定まで適用されることになっています。しかし、その途中で固定的な賃金に大きな変動があった場合は見直しをする必要があり、その手続きを「随時改定」といいます。

ここでは、随時改定と定時改定との違いや実際に随時改定を行う場合の手続きの流れについてご紹介します。また、随時改定を行う際の重要なポイントについて、モデルケースを用いてご説明します。

1.定時改定とは

社会保険の被保険者の標準報酬月額は、入社時(資格取得時)に一度決定されますが、その後昇給や各種手当に変動が生じます。そのため、各被保険者の標準報酬月額を実際の給与に合わせるために、年に一度標準報酬の改定を行う必要があり、これを「定時改定」といいます。

4~6月の給与の平均をとって出された標準報酬月額は、その年の9月から翌年の8月まで適用となり、9月分の保険料(10月の給与から控除)から変更されます。

【対象となる者】

7月1日現在における被保険者が対象になりますが、次に該当する人は定時決定を行いません。

  • 6月1日~7月1日の間に被保険者になった人
  • 7月~9月の間に随時改定を行う人

【支払基礎日数に注意】

給与計算の対象になる日数を支払基礎日数といいますが、これが17日未満の月は計算の対象から除外されます。(報酬額が通常とかけ離れたものになってしまうため。)

支払基礎日数とは、月あたりの出金日数のことをさし、欠勤で給料が差し引かれる場合はその日数は除きます。しかし、有給休暇は支払基礎日数に含まれます。

【手続き方法】

「算定基礎届」に4~6月に支払われた給与や必要事項を記入した上で、7月1日から10日までに社会保険事務所・健康保険組合などへ提出します。

2.随時改定とは

被保険者の標準報酬月額は、入社時や年に一度の定時改定の時に決まりますが、報酬額が昇給・降給などで著しい変動があった場合は、定時改定を待たずに標準報酬月額の改定を行う必要があり、これを随時改定といいます。

【随時改定を行う必要性】

社会保険料額は、「標準報酬月額」によって決まります。報酬が多くなるほど支払う社会保険料も多くなります。

しかし、定時改定後に給与が大きく変更された場合、翌年の定時改定まで標準報酬月額が変わらないと、給与額に見合わない社会保険料を支払うことになります。将来の年金額にも影響を与えかねないため、実際の報酬額と社会保険料との差をなくすために随時改定を行って適切な社会保険料に変更する必要があります。

【随時改定を行う3つの要件】

随時改定を行うのは、次の3つの要件に該当する場合です。

  • 昇給・降給などで「固定的な賃金」に著しい変動があった
  • 報酬が変動した月以降、引き続き3ヶ月間の標準報酬月額が変動前の社会保険等級に比べて、2等級以上の差が生じた
  • 変動した月以降、引き続き3ヶ月間における支払基礎日数が各月とも17日以上あった

 【固定的な賃金とは】

固定的な賃金の具体的な例としては、次のものが該当します。

  • 昇格によって昇給した
  • 降格によって降給した
  • 役職手当や家族手当の額に変更があった
  • 通勤手当の額に変更があった
  • 給与体系が変更された

固定的な賃金は、毎月決まった額のものを指すため、一時的に残業代が増加したというような非固定的賃金の増加の場合は、該当しません。また、結婚祝い金などの恩恵的で単発のものも固定的賃金には該当しません。

 【賃金変更後3ヶ月間の標準報酬月額が以前のものと2等級以上の差がある】

まず、固定的な賃金が変動してからの3ヶ月間の報酬の平均を求めます。求めた平均報酬額が該当する標準報酬月額の等級と賃金変動前の等級とで2等級以上の差が生じているかをチェックします。 従前の等級によっては、固定的な賃金額に大きな変動があっても2等級の差が生じないケースもあります。

標準報酬月額には上限と下限とがあり、従前の等級が上限や下限に近い人の場合は、2等級の差が生じないこともあります。このような場合、例外的に1等級しか変動がなかったとしても、随時改定を行い不合理を解消することになります。

 【3ヶ月間の支払基礎日数がそれぞれ17日以上】

賃金の支払い対象となる日を賃金支払基礎日数といいます。月給制の場合は、たとえ欠勤があったとしても、もともとの暦日数が賃金支払基礎日数になります。

一方、日給・時給の場合は、出勤した日数が賃金支払基礎日数になります。月給制の場合とは異なり、欠勤日数は含まれないので注意が必要です。 報酬変動後3ヶ月間のそれぞれの月で賃金支払基礎日数が17日以上あるかどうかをチェックします。

  2−1. 随時改定モデルケース1

では実際に、具体的な例を挙げて随時改定が行われるケースを見ていきましょう。

◇従業員Aは、10月に昇給して基本給がUPし、標準報酬月額に2等級以上の差が発生した。

(単位:円)

9月 10月 11月 12月 1月 2月
基本給 180,000 195,000 195,000 195,000 195,000 195,000
通勤手当 20,000 20,000 20,000 20,000 20,000 20,000
残業手当 4,000 16,000 12,000 19,000 16,000 15,000
合計 204,000 231,000 227,000 234,000 231,000 230,000
標準報酬月額 200,000 200,000 200,000 200,000 240,000 240,000
保険料 変更なし 新しい保険料
徴収される保険料 今まで通りの保険料 新保険料

*支払基礎日数の条件は満たしているものとする

10月から12月の給与平均額

=(231,000円+227,000円+234,000円)÷3

=230,666(円未満切り捨て)

230,666円は、標準報酬月額240,000円に該当し、健康保険が19級・厚生年金が16級になります。変更前の標準報酬月額200,000円は、健康保険が17級・厚生年金が14級なので、「2等級以上の差」が生じています。

変更前 変更後
標準報酬月額 200,000円 240,000円
健康保険 17級 19級
厚生年金 14級 16級
               ↑ 2等級以上の差  ↑

4ヶ月目にあたる1月から新等級(標準報酬月額240,000円)に改定されますが、給与への反映は翌月になりますので、新保険料は2月の給与から控除されることになります。

 2−2. 随時改定モデルケース2

もう1つ、具体的な例を挙げてご説明します。

◇現在、標準報酬月額300,000円の従業員Bが会社の近くに引っ越したため、9月から通勤手当が減額になった。

(単位:円)

8月 9月 10月 11月
給与 305,000 240,000 250,000 260,000

*支払基礎日数の条件は満たしているものとする

9月から11月の給与平均額

=(240,000円+250,000円+260,000円)÷3

=250,000円

250,000円は、標準報酬月額260,000円に該当します。

変更前 変更後
標準報酬月額 300,000円 260,000円
健康保険 22級 20級
厚生年金 19級 17級
               ↑ 2等級以上の差  ↑

変更前と後で、2等級以上の差が生じているため、随時改定を行う必要があります。4ヶ月目にあたる12月に新等級(標準月額報酬260,000円)に改定され、翌年1月からの給与に反映され給与から控除されることになります。

 3.手続き方法

随時改定を行った際の、手続きの流れや手順についてご説明します。

 3−1随時改定の流れ

固定的な賃金が変動すると、早くて4か月目に改定されることになります。例えば、8月に昇給し、8月・9月・10月全てにおいて随時改定の条件を満たした場合、10月の給与を支払った後、新しい標準報酬月額を算出して随時改定の手続きをすると、11月から標準報酬月額が改定されることになります。

しかし、新保険料が反映されるのは翌月になるため、新保険料の給与からの控除は12月からになります。手続きが遅れてしまったとしても特に罰則などは決められていませんが、遅れた分だけ新しい保険料が適用されるのが遅くなってしまいます。

被保険者に不利益が生じてしまう可能性もあるほか、手続きに必要とされる書類が増えてしまうこともあります。また、随時改定を行うのが、毎年7月に行う定時改定と重なってしまうケースもありますが、その場合は随時改定のみを行い定時改定は行いません。

 3−2随時改定の手続きの手順

随時改定を行う要件(①固定的な賃金の変動②標準報酬月額が2等級以上変更③支払基礎日数)がすべて満たされたら、「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」を年金事務所や健康保険組合に届けます。(インターネットを介した電子申請もできます。)

この手続きを通称「月変(げっぺん)」と呼びます。

定期改定の書類は毎年必要書類が会社に送られてきますが、随時改定の書類(月額変更届)は年金事務所や健康保険組合に取りに行くか、日本年金機構のHPからダウンロードして用意します。

添付書類は原則として不要ですが、改定月の初日から起算して60日以上届け出が遅れた場合や、標準報酬月額が大幅に下がる(5等級以上下がる)場合は、次の添付書類が必要です。

 ○被保険者が役員以外

  • 賃金台帳の写し
  • 出勤簿の写し

(いずれも、固定的な賃金の変動があった月から改定月の前月分まで)

○被保険者が役員

次の1~4のいずれか1つおよび所得税源泉徴収簿又は賃金台帳の写し

  • 株主総会又は取締役会の議事録
  • 代表取締役等による報酬決定通知書
  • 役員間の報酬協議書
  • 債権放棄を証する書類

このように、届け出が遅れると添付する書類が必要になるため、速やかに提出することが大切です。

3−3新しい社会保険料額を確定する

提出した書類は審査され、不備がなければ「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」が送られてきます。決定された新しい標準報酬月額を保険料額表で確認し、新しい社会保険料額を決定します。

その標準報酬月額は、次の定時改定や随時改定まで適用されることになります。

4.  まとめ

定期改定後に給与が大きく変更された場合、随時改定を行います。実際の報酬に見合わない社会保険料を支払い続けることは、当該従業員の将来の年金額にも影響を与えるため、適切な社会保険料に変更する必要があります。

定時改定は毎年7月と決まっていて、会社に必要書類が送られてくることから忘れてしまうことはありませんが、随時改定は不定期に起こるため、従業員の給与の変動に注意を向け続ける必要があります。

届け出もれがないように、固定的な賃金の変動があった従業員をピックアップして、変動月から3ヶ月間後の給与支払い後に随時改定の要件を満たしているかを確認することを忘れずに行うことが大事です。

給与計算の担当者が、該当する従業員を一覧表で管理しておくと、より確実に届け出もれを防ぐことができるでしょう。

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