法人税は「申告納税方式」が採用されており、これは当該法人が自ら申告書を作成・提出して納税する方式です。法人の規模や経営状況、税制の内容によって適用される法人税の計算内容は異なります。経営者は納税額を算出する前に、まずは自社がどの条件に当てはまるのか確認した上で納めなければならない税金を自らが計算する必要があるのです。つまり、納める税額を算出するのも法人自身ということなのです。
また、現在の税法には、中小企業の法人税率を軽減する特例があります。これは、リーマンショックの影響で景気が悪くなり、中小企業の経営に大きな打撃があることを考慮して設けられた措置で継続中です。納税による会社の負担を減らすためにも、このような特例措置も含めて法人税の計算方法は理解しておきたいところです。
目次
1.法人税とは
法人税とは、株式会社や協同組合などの法人が事業年度ごとに得た所得にかかる税金です。個人が利益を得たら所得税を税務署に申告・納税しますが、同じように法人の場合は法人税を税務署に申告・納税します。法人税は、課税所得に、一定の税率を乗じて計算されます。そして法人税の税率は、累進課税の所得税と違い、比例税率(固定税率)ですが、法人の種類や資本、所得金額によって各種の優遇措置がとられています。
1−1.法人税の税率
法人税は、税法に従って求められた所得に税率をかけて算出されます。また、法人税とは別に法人事業税と法人住民税も所得に対して一緒に課税されています。
つまり、
- 法人税:『 所得 × 30% 』
- 法人事業税:『 所得 ×6% 』
- 法人住民税:『 法人税 ×3% 』
となりっています。
3つ(法人税、法人事業税、法人住民税)を合計すると、『30+9.6+(30×0.173)=44.79%』になります。ただし、法人事業税には、損金算入が認められてるので、その分だけ所得が小さくなります。そのことまで考慮した税率を実効税率と言います。
凡そ企業の儲けの約40%は税金として納めることになると覚えておくと良いでしょう。
1−2.中小法人の場合
中小法人とは資本金1億円以下の法人です。中小法人には以下の特例が認めらています。
- 所得金額年800万円以下に対する軽減税率
- 留保金課税の適用除外
- 交際費等の損金不算入額の定額控除限度額(800万円)
- 貸倒引当金の一括評価計算上の法定繰入率の適用
- 欠損金の繰戻還付の適用
中小企業はこの特例の恩恵を受け、所得800万円までは税率が15%に軽減されています。
2.実際に法人税を計算シミュレーション
2−1.ケース1:資本金が2000万円、課税対象所得が600万円の場合
この法人の場合は、資本金1億円以下かつ年間所得800万円以下の2つの条件を満たしています。したがって法人税は次のように計算されます。
課税所得600万円×軽減税率15%=法人税90万円
2−2.ケース2:資本金が8000万円、課税対象所得が2000万円の場合
この法人の場合は、資本金1億円以下の条件を満たしていますが、年間所得が800万円超であるため所得金額の条件を満たしていません。しかし、この場合の法人税は(2000万円×25.5%)とはなりません。
資本金1億円以下の条件を満たしている法人の税額計算は、800万円以下の部分と800万円超の部分で税率が異なるので、分けて計算されるのです。所得金額2,000万円のうち、800万円までは15%、残りの1,200万円については25.5%の税率が適用されます。
- 800万円×15%=120万円
- 1200万円×25.5%=306万円
したがって、法人税額は120万+306万=426万円となります。
3.繰越欠損金を使って節税対策
税効果会計や税務会計では、収益を益金、費用を損金と呼びます。欠損金とは、財務会計上の赤字のことです。税法上は赤字ではなく欠損金と呼ばれます。
つまり、欠損金とは費用が不足している状態になります。つまりは、赤字であるということなのですが。この欠損金を繰り越した状態のものを繰越欠損金と呼びます。正しくは欠損金の繰越控除といいます。そして、赤字を繰り越すことによって控除として取扱うことができるのです。
1年目 | 2年目 | |
---|---|---|
税引前当期純利益 | ▲50 | 200 |
繰越欠損金 | ▲50 | |
課税所得 | 0 | 150 |
法人税(実効税率40%) | 60 |
繰越欠損金を利用した場合、初年度に50の赤字を出したとしても、翌年度に繰り越すことができるため、2年目の黒字200から前年度赤字50を差し引いた150に対して課税されることになり、60の法人税を納めることになります。つまり、本来であれば200×40%=80の法人税を納めるべきところですが、繰越欠損金を利用することで60に抑えることができるのです。
4.法人税についてこれだけはおさえておく!
実際の法人税の計算は税理士が行いますが、経営者としては最低限でも基本的な法人税の計算式は理解しておきましょう。
「法人税の額=法人所得(益金-損金)×税率(実効税率)」
「益金」は会社に入ってくるお金・財産です、「損金」というのは会社から出ていくお金・財産等です。会社に入ってきたお金・財産から、会社から出ていくお金・財産を差し引けば、それがその年度の「もうけ」となります。そしてこれが「法人所得」なのです。
そして、この「法人所得」に税率をかけたものが、その年度の法人税の額になるということです。そして、中小法人の場合はさらに特例措置があり、正しく税金を計算することで節税にもつながるのです。
5.まとめ
法人税の計算式は単純ですが、中小企業の場合は軽減税率の適用がありますので注意する必要があります。昨今の政府の税制調査会では中小企業の法人税への軽減税率などの優遇措置の廃止も検討されています。特例とされている優遇措置がいつまで適用されるものなのか、必ず確認することが必要です。
一方で政府は今後も税率の引き下げを目指す方針を示しています。納税による会社の負担を減らす策を講じるために、税制に関する情報は押さえておきましょう。