トー・ゴー・サン(10・5・3)とか、クロヨン(9・6・4)とか、ご存知でしょうか?税務署による課税所得の捕捉率の不公平さを嘆いた言葉です。嘆いたのは、経費を申告できない、所得を10把握されるサラリーマン諸氏です。
逆の立場から見ると、独立して個人事業主になれば、経費を上手に計上して節税できる・・・。そういえば領収書を集めるのに熱心な人もいますね。
でも、税務署は税金を徴収するプロですから、何でもかんでも経費で計上するのは逆効果です。認められる経費と、認められない経費を把握しておきましょう。
目次
1.個人事業主の経費とは
サラリーマンには給与所得控除が有って、それがサラリーマンとして給与を経るための経費と考えられています。個人事業主やフリーランサーにはそのような所得控除が無い分、売上を上げるために掛かった経費はすべて計上できます。では個人事業主やフリーランサーは、領収書さえ整えておけば、何でも経費として計上できるでしょうか?
家族との飲食費や、家族旅行の宿泊費、友人と飲んだコーヒー代を会議費として計上したりしている例はよく耳にします。でも、これはアウトです。
個人事業主が経費として計上できるのは、売上を獲得するために支出した分です。
ご存知のように確定申告は、その年の1月1日から12月31日までの収入と支出を確定して、申告しますので、まだ支払いはしていないけど12月分の経費の請求書が来ているようなものは、その年の分として計上できます。
まとめて言いますと、売上獲得のために支出したもので、その年中に発生したものが、その年の経費として計上できるものです。
1−1.経費一覧がこちら
よく使われる勘定科目を上げてみましょう。常識を働かせれば、科目を分けるのはそんなに難しいことでは有りません。
①旅費交通費
仕事上で移動に使われる交通費です。航空機や電車やバス、タクシーなどの料金です。車を使った場合の駐車料金も旅費交通費に入ります。
②消耗品費
10万円未満の備品、パソコン周辺機器、使用可能期間が1年未満の物品などです。
③事務用品費
事務作業で使用する文房具類、コピー用紙などですが、使用頻度が少ない時は、消耗品費にまとめても大丈夫です。
④地代・家賃
賃貸家賃(自宅を事務所としている場合は事業部分と生活部分を按分します。)、月極駐車場代などです。事業用に事務所や倉庫を賃貸している時は全額認められます。
⑤賃借料
機材や家具のレンタル料、販売スペースのレンタル料などです。OA機器など、リース契約をしても金額の大きいものや、リース期間が長い場合はリース資産で計上、同額をリース債務とするなど、計上方法が違ってきます。
⑥水道光熱費
電気・ガス・水道代などです。これもフリーランサーなど自宅を事業所として使っている人は、生活部分とに分けて按分する必要が有ります。
⑦通信費
インターネットや電話、携帯電話、切手代などです。
⑧荷造運賃
商品を発送するために必要な段ボールや、運送会社へ支払う運賃などです。
⑨租税公課
法人税や法人住民税以外の、各種税金です。収入印紙、消費税、固定資産税、自動車税など各種税金と、車庫証明手数料、印鑑証明発行手数料などの公的な書類の発行手数料になります。
その他に、広告宣伝費、新聞図書費、接待交際費、会議費、修繕費、雑費などが有ります。
1−2. 車や住宅ローンはどうなる?
自宅で仕事をしているようなフリーランサーが、計上するときに一番悩むのは、自宅の家賃や電気代、車についての経費をどうしたらいいのか?ということではないでしょうか。
ここで「家事按分」と言う言葉が出てきます。仕事で使う床面積は全体の何%なのか、電気を使用するのは、車を使用するのは、距離や時間的に何%位なのか、一度計算をしてみてください。概算で構いません。合理的な割合を経費として計上できます。
ただし、自宅が持ち家の場合の住宅ローンの元本は必要経費にはなりません。その代りに家屋の減価償却費や、住宅ローンの金利、火災保険料や固定資産税は「按分」して必要経費に計上できます。同じように車についても、自動車ローンの返済中でしたら利息部分を経費として計上します。元本部分はこれも固定資産に計上し、減価償却の対象とします。
2. 意外!これも経費に出来るの!?
個人的な支出なのか、業務上の支出なのかの判断をどの様にするかで、経費として認められるものが有ります。
意外な例としては、冠婚葬祭の支出が有ります。この場合領収書は無いのが普通ですので、市販の出金伝票等に内訳を細かく書いて、業務上の必要性を招待状等で確認できるように書類を揃えておきましょう。常識の範囲内の金額でしたら認められます。
またフリーランサーのライターの人が、記事を書くために評判のレストランで食事をした時などは、取材費として経費を認められます。
サラリーマンの戦闘服でもあるスーツは残念ながら認められませんが、作業着は経費に入れることが出来ます。
3. 某個人事業主の計上シミュレーション
個人事業主の経費は家計と混同しやすいので、税務署も目を光らせます。この支出が確かに事業に関連した支出であるということを、いつでも説明できるようにしておきましょう。
税務署も書類がきちんとしているかどうかや、説明がきちんとできるか等も税務調査の時に見ています。
税務署に不信感を抱かせない経費の計上方法を見てみましょう。以下は実際のウェブデザイナーさんの計上経費です。
参考にしてください。
3−1.フリーランスウェブデザイナーの場合
私はフリーランスでウェブデザイナーをしています。独立して2年、まだ人は雇っていません。取引先には整骨院が多いです。どこも同業者との差別化を図ろうとしていて、需要が有ります。
私が計上している主な経費を上げてみます。
・家賃・水道光熱費・電話代・・自宅兼事務所なので、按分して計上しています。
・車両費・・・これは自家用車を時々使いますが、本当に時々なので、経費は上げていません。ガソリン代は走った区間と距離を記録しておいて、その分だけ上げています。
・交通費・・・サラリーマン時代の旅費出張精算書をまねて、自分用の精算書を作りました。この方が自分も分かりやすくて助かります。
・PC及びインターネット関連・・・パソコンや周辺機器は経費で上げました。自宅用とは別に独立時に購入したので、問題ありませんでした。
・交際費・・・お客様と商談するときのコーヒー代などは自分が持ちます。領収書に相手名と人数、どんな内容の話をしたかもざっとメモしておきます。実はこれも、後で記憶を呼び戻すのに便利な時が有ります。
・消耗品・・・これが難しいですね。どこまで認めてもらえるのか、悪いことをしている訳でもないのに、ついびくびくしてしまいます。(パトカーが後ろを走っている時に似ています。)レシートや領収書をちゃんと分けてもらうように気を付けています。
・OA機器・・・今はネット上にリーズナブルなシステムが有ります。私くらいの事業規模なら十分間に合います。
4.計上の際の注意点
人を雇うようになったら、従業員の給与は経費計上できますが、個人事業主の給与は経費計上できません。同じように健康診断料なども、従業員の分だけが経費として認めてもらえます。
仕事で急いでいて、つい速度違反で捕まってしまったような時、罰金は自己負担です。サラリーマン時代もそうでしたよね。でも、レッカーで移動されてしまったら、レッカー代は経費にできます。ちょっと面白いですね。
生命保険料や医療費は、生命保険料控除や医療費控除を利用します。経費計上はできません。
5.まとめ
個人事業主の所得税は、確定申告で決まります。収入から経費を引いたものから、基礎控除や扶養控除、社会保険料や生命保険料控除などを引いて所得を確定します。
基礎控除などは自分でどうにかできる数字ではないので、ポイントは経費の計上具合になります。そこで上手に経費を計上することが大事になってきます。税務調査で説明のあやふやな領収書が沢山出てくれば、より深く突っ込まれるのは自明の理です。きちんと説明のつく領収書を、もれなく揃えておけば、税務署は怖いところではなくなります。