中小企業の経営者の皆様はよく、「節税対策」の「テクニック」「ノウハウ」などに関心があると思います。でも、それらは法律に違反していたりしていませんか?「節税」という言葉の意味を正しく理解しないと、税金を余計に払うはめになったり、最悪の場合、刑罰が課されたりもします。
中小企業向けの節税対策を7つについて、分かりやすく説明していきます。
目次
1. 中小零細企業の節税対策
1−1. 未払費用を年度内に計上
未払費用とは年度内に費用自体は発生しているが支払いが済んでいないものを指します。
具体的には、従業員の給料、事務所の家賃、水道光熱費など継続的に支払う費用は、サービスを受けた後で支払うことが一般的です。例えば、従業員の給料を月末締めで翌月20日払いとしている場合、年度の末月の給料は、翌年度になってから支払われることになります。
つまり、給料という費用自体は年度内に発生していますが、支払いは済んでいません。このようなものが、「未払費用」です。この未払費用は、年度内に支払いが済んでいなくても、その年度の損金に算入することが可能です。中小企業の場合、この未払費用の金額を年度内に計上するということが徹底されていない場合がよく見受けられ、その結果、本来損金に算入すべきものがされず、無駄に税金を支払っている可能性が考えられます。
未払費用の計上をきちんとすることで、節税対策になる可能性があるのです。
1−2. 不要な資産は「除却損」
不要な固定資産は廃棄すべきです。まず、会社の資産をチェックしてみましょう。固定資産台帳に記載されている固定資産については要チェックです。
不要な固定資産は持っているだけで無駄なだけではなく、実は固定資産税が容赦なくかかってきます。このような資産は廃棄すれば、その資産の帳簿価額を「除却損」として損金に計上することができ、その後は固定資産税を支払わなくてよくなります。
1−3. 不要となった棚卸資産は「評価損」
棚卸資産も、売れ残ったまま見向きもされなくなってしまい、今後売れる見込みが全くないもの(「陳腐化」「劣化」と言われたりします)は持っていてものは意味がないし、保管する費用やスペースが明らかに無駄です。このような資産については、「評価損」として損金に算入します。
1−4.不良債権は「貸倒損失」
回収が不能になった売掛金、貸付金等の不良債権を整理することも重要です。支払い不能の状態が一定期間継続した場合等、要件を充たせば、その額を「貸倒損失」として損金に算入できるのです。
1−5.出張手当の制度を整える
営業等のため宿泊を伴う出張が多い会社の場合は「出張旅費規定」を作成し、出張手当の制度を整えることが節税につながります。「出張旅費規程」に基づいて出張の費用を出張手当として支給した場合、会社の業務上必要な費用なので、全額が損金に算入されます。
また、消費税との関係では、事業活動それ自体のための費用=「課税仕入」とされ、課税対象となりません。従業員側も実費ではなく決まった額が出張旅費規程に則って支給されるため、節約すれば実質的に手取り額が増えます。しかも、その分は給与所得として扱われないため、所得税がかかりません。
1−6.役員に対する「賞与」は「事前確定届出給与」
役員に対する給与は、従業員と同じように毎月一定額を支給するのであれば、損金に算入できます(「定期同額給与」)役員に「賞与」を支給する場合も同様にします。個本的には役員への賞与は、従業員への賞与と異なり、基本的に損金への算入が認められていません。その年度の利益を少なく見せるために利用されるおそれが大きいためです。
役員への「賞与」を損金に算入するためには、その金額と支給日を予め税務署に届け出た上で、届出どおりの日に、届出どおりの金額を支給しなければなりません。これが「事前確定届出給与」です。
届出ができる期間は、株主総会で支給の条件を決議してから1ヶ月以内です。しかも、会計年度が始まってから4ヶ月以内に届け出なければなりません。
1−7.減価償却資産は中古品を購入
建物、機械、船、自動車、工具、器具等といった減価償却資産については、その種類ごとに、減価償却費を損金に算入できる年数が法令で決められています。そして、各年度ごとに減価償却費として計上できる金額は、この法定耐用年数を前提として計算されます。
ただし、減価償却資産を中古で購入した場合には、新品と比べると、利用できる期間が限られています。そのため、耐用年数は法定耐用年数よりも短いものとして扱われます。そして、この短い耐用年数を前提として、減価償却費が計算されることになります。
結果として、新品と中古品とでは、同じ金額で購入しても、中古品の方が短い耐用年数で減価償却費が計算されて、1年度に減価償却費に計上できる額が大きくなるわけです。つまり、新品よりも少しばかり型落ちの中古品を購入した方が得をするということです。
2.まとめ
以上、中小企業向けの節税対策について、かいつまんで説明してきました。会社にとって最も大事なことは、資金を無駄遣いせず、利益を出して経営を安定させ、従業員の生活を守ることです。
節税対策は法令の範囲内で、できるだけキャッシュフローを減らすことなく、正しい節税対策をこころがけるようにしていきましょう。