役員報酬の決め方を解説!知っておきたい4つの注意点とは

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あなたが会社を設立した時に一番重要なのは資金繰りです。そして資金繰りという面では「法人税の支払額」が、見込み通りになるように計画的に会社を運営することが大事です。

実は、あなたが会社を設立した時に貰う「役員報酬」をいくらにするかによって、法人税の納税額は大きく変わってきます。会社が取締役などの役員に支払う給与である「役員報酬」は、会社の損益計画や税金にも関わってくるのです。

ここでは、役員報酬の決め方や注意点を見ていきます。

1. 役員報酬とは

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法人税法で役員報酬とは、役員に対する給与のうち、賞与及び退職給与以外のものとされています。また、 役員賞与とは、原則として、臨時的に支給される給与で退職給与以外のものとされています。 これらの給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益も含みます。

例えば、無利息又は通常金利よりも低い金利で行われた貸付けは、通常金利との差引相当分が会社にとっては経済的な利益となるのです。

2. 役員報酬の決め方

役員報酬は社長が勝手に決めることはできません。会社法において、役員報酬は「定款または株主総会の決議によって定める」と定められています。では、実務上はどのような形式で役員報酬の金額を決めていることが多いのでしょうか。役員報酬の金額を決める流れは次のとおりです。

1. 「株主総会」において役員報酬の総額を決める。そして役員ごとの内訳については「取締役会または代表取締役」で決めるよう一任する。

2. 「取締役会」では「株主総会」で決めた総額の範囲内で各取締役の役員報酬の金額を決定する。

尚、それぞれについて議事録を作成し残しておかなければなりません。株式会社の場合は「株主総会」で重要事項を決め、「取締役会」で細部を決めるという流れになります。

2−1. 会社や個人のキャッシュのバランスをみて考える

1. 会社ではなく、できるだけ個人に利益が残るようにしたい:

一人会社で、近いうちに個人名義での高額の買い物が予定していて、ローン審査があるため個人所得を確保しておきたいという場合などは役員報酬を増やすようにします。しかし実際は、個人所得が増えれば増えるほど、社会保険の負担料が大幅に増えるので、あまり得策とは言えません。

2. 会社の税引後利益がなるべく残るようにしたい:

設備投資が必要で金融機関などからの融資を考えている場合は、個人の場合とおなじように会社の財務状況を良くするために、なるべく会社に利益が残るように役員報酬を設定したいという場合、役員報酬は低く抑えられることになります。

3. 会社と個人の区別なく手元にキャッシュが最も多くの残るようにしたい:

経営が安定していて、今の成長ペースを保ちつつキャッシュフローを豊富に保っておきたい場合などです。会社と個人の区別なくキャッシュが最も多くなるように設定するには、個人と法人ではどちらが税金で有利かを検討する場合は、双方の税率を比較します。

会社の利益の金額により税率などが変わってくるため、個人と法人どちらがよいかバランスを見ながら決める必要があります。詳しくは税理士などの専門家に相談して決定します。

2−2. 定期同額給与とは

役員に対する賞与のことです。以前は役員に支払う賞与は損金として認められていませんでしたが、現在は次のような条件で損金にすることができます。

1. あらかじめ所轄の税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出している。

2. 届出書とおりの支給日に記載金額を支払われている。

なお、届出には提出期限が決まっていて、期限は次の日のうちのいずれか早い日です。

1. 株主総会などの決議をした日から4か月以内

2. 会計期間開始の日(事業年度開始の日)から4か月以内

2−3. 役員報酬は変えられる?

役員報酬は定期同額給与でなければ経費(損金)として認められていません。つまり、基本的には、期首の3ヶ月以内をのぞいて、期中に役員報酬額を変更することはできないのです。期末に役員報酬を自由に変更できるようになっていると、会社は、法人税の納税額を意図的に操作できるようになってしまうからです。

3. 知っておきたい4つの注意点

3−1. 注意点①:役員報酬額が少ないほど法人税が多くなる

役員報酬は会社から社長個人に支払うものです。それは別の見方をすると、報酬額を決めるということは、会社と社長のどちらの手元にキャッシュを残すのかを決めることと言えます。どちらの手元に残すかで納税額は大きく変わります。このことは、経営者が会社の経営戦略の一つとして重要視しなければならないことなのです。

3−2.注意点②:会社の損益計画を間違うと予想額の納税が発生する

毎年の役員報酬の金額を変更できるのは原則期首から3か月以内です。したがって、期首の時点で会社の損益計画はある程度、正確に立てられていなければなりません。期首にたてた損益計画よりも売り上げが伸びてしまうとその分利益も上がり、納税額も高くなります。

売り上げが伸びることはうれしいことなのですが、資金繰りからすると懸念になってしまうこともあります。売上と代金の入金が同じタイミングであれば問題ないのですが、実際には、翌月の入金や売掛代金が現金ではなく、手形などでの回収することも多くあります。

すると売上は伸びて納税額も高くなるが手元に資金がないという事態になってしまうのです。一般的に個人事業主のときよりも会社の方が扱う金額が大きくなります。しっかりとした損益計画と資金繰りの計画がより重要となるのです。

3−3. 注意点③:定期同額給与はあとから変更できない

このことを理解していないと、後で痛い目にあうので注意が必要です。
簡単な例で説明すると、報酬の最初の半年は毎月50万円でしたが、資金繰りが悪くなったので残り半年は毎月40万円に変更した場合、定期同額給与は1年間通じて月40万円とみなされます。

最初の半年は定期同額給与40万円にそれ以外の給与10万円がプラスされたとみなされてしまい、(50万円-40万円)×6か月=60万円は損金(経費)にすることができなくなります。つまりその分利益が増えてしまい結果税金が高くなってしまうことになるのです。

3−4. 注意点④:役員報酬を増やすと社会保険料額が上がる

従業員の給料と同じように、役員報酬にも金額に応じた社会保険料は掛かります(社会保険料とは健康保険料と厚生年金保険料の総称)。役員報酬の金額が高くなればなるほど、社会保険料の金額も高くなります。会社では社会保険料は会社と個人で折半のため、両方に影響します。

社会保険料の金額は高く、役員報酬の金額を決める際に考慮しないと資金繰りの悪化につながります。役員報酬の金額を決める際には、法人の法人税、個人の所得税、社会保険料を総合的に判断することが必要です。

4.まとめ

役員報酬は様々な税金と密接に関連しているので、今後の会社のビジョンから、規模を大きくしていきたいのか、資金調達を積極的に行っていきたいのか、節税をメインに行なっていきたいのかによって、その額が変わっていくのです。

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