労働契約法の5年ルールとは?派遣社員も対象?分かりやすく解説

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契約社員画像

労働法の改正により、有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合には、労働者からの申し込みにより無期労働契約へ転換されるという「5年ルール」がまもなく適用されようとしています。

それに伴い経営者は雇用管理の見直しなどの必要に迫られていることでしょう。 ここでは、無期転換の概要について分かりやすくまとめるとともに、モデルケースを用いて具体的にご説明していきます。

また、無期転換をするにあたって、会社側・労働者側にそれぞれどのようなリスクやメリットがあるのかについても併せてご説明していきます。 5年ルール適用までに残された時間はわずかなので、ここでしっかりと内容を理解しておきましょう。

 1.労働契約法の5年ルール 無期転換とは

労働契約法の5年ルールとは、同じ企業との間に2013年4月1日以降に締結された有期労働契約が5年を超えて繰り返し更新された場合に、労働者側からの申し込みがあれば期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるというルールです。

ここでいう有期契約労働者には、パート、アルバイト、契約社員、派遣社員などが該当します。 また、企業によって、準社員、嘱託、非常勤、臨時社員などと呼ばれている雇用形態の労働者も同様に該当します。

では、無期転換への条件にはどのようなものがあるのか、派遣社員も対象になるのか、無期転換後は必ず正社員になるのかなど、具体的な内容についてご説明していきます。

1−1.有期労働契約から無期転換への条件とは

無期転換ができる条件として次の3つがあります。

  •  通算して5年の契約期間がある
  • 有期労働契約の更新を2回以上行っている
  • 有期契約労働者が契約期間内に無期転換の申し込みをする

無期契約への転換は、有期契約労働者が会社に申込むことによって成立します。 有期契約労働者が会社に対して無期転換を申込んだ場合、会社は断ることができませんので、経営者として注意が必要です。

ここで大事なのが無期転換の申込時期ですが、申込権発生時期は、契約期間によって異なりますので具体的に図を用いてご説明します。

労働契約法の5年ルール1

<参照:厚生労働省「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」>

上図の上段は契約期間が1年の有期労働者の場合で、5回目の更新をした後の1年間に無期転換への申込権が発生することになります。 また、下段は契約期間が3年の有期労働者の場合で、1回目の更新をした後の3年間に無期転換への申込権が発生することになります。

なお、「クーリング」といって有期契約労働者が退職や長期休暇などで無契約期間が一定期間以上あった場合は、通算期間には算入されない場合があります。

1−2.派遣社員も対象?

派遣社員の雇用元は派遣会社となるので、無期転換の申し込みは派遣元会社に対して行うことになります。 派遣社員には常用型派遣と登録型派遣がありますが、どちらも2013年4月1日以降に契約した労働期間が通算で5年を超えた場合に申込権が発生します。

なお、単に派遣会社に登録しているだけの場合は雇用契約が結ばれているわけではないので、原則として派遣先に派遣されている期間のみをカウントすることになります。

1−3.無期労働契約は正社員?

無期転換でよく勘違いされることの1つに「5年後には正社員にしなければならない」というものがあります。しかし、無期転換はあくまでも期限の定めのない労働契約になるということで、必ず正社員にしなければならないというものではありません。

契約期間以外の雇用条件に変更はなく、あくまでも「雇用の安定」を労働者に確保させることが目的となります。例えば週4日1日6時間勤務のパートが、無期転換後も同じ労働日数・労働時間で勤務し続けることもあります。

無期転換後どのような労働形態になるのかは、会社によって異なります。そのような中で、無期転換労働者を「多様な正社員」という雇用形態で雇うことが注目されています。

多様な正社員は、配置転換や転勤、職務内容や勤務時間などが従来の正社員に比べて限定されることになり「限定正社員」などともよばれることもありますが、企業の状況に応じて様々なバリエーションがあります。

限定正社員は、勤務条件が限定される分、賃金が従来の正社員に比べて抑えられる傾向があります。

2.ちょっとよくわかりません!具体的モデルケースで解説

無期雇用について、理解するのが難しいという方は少なくありません。

しかし、有期雇用労働者から、いつ無期転換の申し込みを受けることになるのかはしっかりと理解しておく必要がありますので、具体的なモデルケースを用いて無期転換申込を受けるタイミングについて確認していきましょう。

2−1.モデルケース1

まず、2012年4月1日から1年契約で雇い入れているパートAの場合についてみていきましょう。

≪有期労働契約≫
2012年4月~2013年3月・・・①

≪更新≫
2013年4月~2014年3月 ←有期契約期間5年のカウント開始

≪更新≫
2014年4月~2015年3月

≪更新≫
2015年4月~2016年3月

≪更新≫
2016年4月~2017年3月

≪更新≫
2017年4月~2018年3月

≪更新≫
2018年4月~2019年3月 ←無期契約申込権発生

≪無期労働契約≫
2019年4月~

無期転換の申し込みに算入される有期契約期間は、2013年4月1日以降に開始された契約からになるため①はカウントされず、2013年4月の更新から通算期間のカウントがスタートします。契約開始日が2013年4月1日前の契約はどんなに長くても通算期間には入りませんので注意が必要です。

そして、パートAが、2018年4月から2019年3月の間に無期契約への申し込みをした場合、会社は断ることはできず2019年4月から無期契約へと変更されます。

2−2.モデルケース2

次に、通算期間中に1年間の長期休業をしたパートBの場合について見ていきましょう。

≪有期労働契約≫
2013年4月~2014年3月

≪更新≫
2014年4月~2015年3月

≪長期休業≫
2015年4月~2016年3月

≪契約・更新≫
2017年4月~2018年3月 ←有期契約期間カウント開始

≪更新≫
2018年4月~2019年3月

≪更新≫
2019年4月~2020年3月

≪更新≫
2020年4月~2021年3月

≪更新≫
2021年4月~2022年3月

≪更新≫
2022年4月~2023年3月 ←無期契約申込権発生

≪無期労働契約≫
2023年4月~

パートBは、有期雇用契約の通算期間中に1年間の長期休業(無契約期間)があります。通算契約期間が1年以上ある場合に無契約期間が6ヶ月以上あるときは、その期間より前の有期労働契約は通算期間に算入されません。

したがって、有期契約期間のカウントが始まるのは2013年4月ではなく、長期休業後の2017年4月からとなります。ただし、産休や育休で仕事から離れることになった場合は、労働契約は続いていますので、無契約期間とはならずに通算期間に算入されます。

ちなみに、無契約期間が6ヶ月未満の場合は、その前の有期労働契約期間も通算期間に算入されることになりますので注意が必要です。

3.会社側、労働者側のリスクやメリット

無期転換をすると会社側、労働者側にそれぞれにとってどのようなリスクやメリットがあるのかまとめてみました。

会社側

まずは、会社側のリスクとメリットについて見ていきましょう。

【リスク】

  • 正社員化を図る場合、人件費などのランニングコストが増大する。
  • 経営状況が悪化した場合などに、雇い止めなどの調整ができなくなる。
  • 就業規則などの整備が必要になる。

【メリット】

  • 会社の実務に精通している能力の高い労働者や、意欲溢れる労働者を安定的に確保しやすくなる。
  • 長期的な視点で社員育成を実施することができるようになる。
  • 助成金を活用することができる。

無期転換は、会社側にとって能力の高い労働者が確保できたり助成金が活用できるなどのメリットがある一方で、人件費などの負担増や就業規則の整備の必要性があるなどのリスクが考えられます。

労働者側

次に、労働者側にはどのようなリスクとメリットがあるのか見ていきましょう。

【リスク】

  • 雇用主からすると、無期雇用にすることで同じ条件で雇用し続けることができるので、わざわざ正社員にする必要がなくなり、結果として労働者は正社員への道が遠ざかることになる。
  • 無期雇用によって正社員になれることもあるが、基本的には契約期間が有期から無期になるだけなので、それ以外の待遇に変更があるわけではない。
  • 「準社員」などの肩書がついた場合でも待遇がよくなるとは限らず、残業が増えるだけというケースもある。
  • 「限定正社員」になった場合、従来の正社員に比べて賃金が低い傾向がある。

【メリット】

  • 雇用が無期になるため契約を更新する必要がなく、安定的かつ向上心を持って働くことができる。
  • 基本的にこれまでの業務内容と変わらないので、正社員のように責任重大な仕事をすることがない。
  • 長期的なキャリア形成を図ることが可能となる。

労働者側には、「安定した雇用」という大きなメリットがある一方で、正社員への道が遠のいたり待遇面での期待ができなかったりというリスクが考えられます。

4.まとめ

労働契約法の5年ルール2

2018年4月から本格的に無期転換への申し込みが発生することが見込まれ、経営者には様々な対応策を講じることが求められます。

  • 無期転換を円滑に導入するために労使双方が納得のできる制度を構築する
  • 無期転換労働者の業務や責任の範囲を設定する
  • 就業規則などの既存の書類の整備をする

これらの対策には時間を要するため、早期の対応が求められます。無期転換の内容をしっかりと理解し、来るべき2018年4月に向けて備えておきましょう。

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